第76話 旭は男達を粛清する

ーーーー前書きーーーー

色々考えてたら長くなってしまいました……。

今回は残酷なシーンがありますので、苦手な方は注意してください。

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「…………なにこれ」


 俺は男達の襲撃のことも忘れて呆然としていた。

 視線の先には俺が昨日【クリエイト】した家。

 しかし、その家は……現在虹色に輝く城に覆われている。

 それだけじゃない。

 なぜか襲撃してきた男達の後方にも家の周りを囲むかのように、虹色に輝く巨大な壁が出現している。

 状況から鑑みるに……ソフィアが俺の到着前に結界系の魔法を使用したんだとは思うんだが……。

 だって【魔力分身】で3人に増えてるし。

 そんなソフィアは俺に呑気に手を振りながらも、早く攻撃魔法を仕掛けるように脳内に話しかけてきている。


「……しょうがない。あの魔法については……後でソフィアに問い詰めるとしよう。今は……この男達をどうにかしないとな」


 俺はそう言って男達の方を眺めた。


「お……おい!なんだ……なんなんだ!!あの男はッ!!」


「ど、どうして空中に浮かんでいるんだ!?空を飛ぶ魔法なんて……聞いたことがないぞ!?」


「こ、攻撃だ……!!!全員、あの男を集中して攻撃しろ!!恐らくアイツが女神様の言っていた響谷旭とかいうやつだ!!」


「くそっ!魔法が吸収される!おい!誰か弓矢もってこい!」


「あんな高いところに届くわけねぇだろ、ボケ!!」


 男達は俺の方を見て色々と叫んでいる。

 魔法使い達からの攻撃も飛んでくるが……【魔法吸収】を重ねた【聖域】を展開済みなので痛くもかゆくもない。

 というか……やっぱり女神にけしかけられたのね……。

 俺は親玉と思われる男を見つけたので、【時間遅延】を使って背後に回り込んだ。


「なぁ……おい。1つ聞きたいことがあるんだが……」


「……なッ!?い、いつの間に後ろに来やがった!!お、お前ら、攻撃を一旦中止しろ!!俺に当たっちまうだろうが!」


 男はそう言って俺を攻撃していた男達に攻撃をやめるよう叫んだ。

 ……ただ単に自分が攻撃されたくないだけだと思うが。

 俺はそんなやりとりを無視して、話を続ける。


「お前はさっき女神様とか言っていたな?あの女神に何を吹き込まれた?」


「……チッ!なんでそんなことをお前なんかに言わなきゃならねぇんだよ!!これから殺されるっていうのによぉ!?」


 ふむ……俺に話すつもりはないと。

 他人の女を犯そうとしてるくせに女神が不利になるようなことは言わないとか……矛盾してるな。

 よし、殺そう。

 どうせあの女を犯せば一生遊んで暮らせる金を渡すとか言われたんだろう。


「……そうか。話ができれば殺さないという選択肢もあったんだが……交渉は決裂だな」


「……なんだと!?……って、奴はどこにいった!!!?」


 親玉らしき人物は俺の言葉に後ろを向いたが……俺はもう空中に戻っている。

 これに反応できないくせに殺すとか……前にも似たような光景を見た気がするなぁ。


 俺はそんな男達を見下ろしながら……ソフィアに内心で指示を出した。


(ソフィア、先ほどの魔法はまだ使えるか?)


([……一応使うことは可能ですが……何に使うのですか?])


(試したい魔法があってさ。家の周りにいる男達とそうじゃない男達を分断させたい)


([……!なるほど、把握しました。結界については私にお任せを])


 俺の言葉だけで全てを理解できるソフィアはさすがだと思う。

 そんなソフィアは俺に返事をして魔法の準備を始めた。

 といっても、分身が集まって空中に手をかざしただけだが。


[……【聖断】!!]


「な!?また壁だと!?俺達を分断させてどうするつもりだ!」


 なるほど……。

 あの魔法は【聖断】というのか。

 名前からして神霊魔法級の結界なのだろう。

 虹色に光り輝いているのは……理由がよくわからないが。


 俺は仲間が分断されて取り乱している親玉らしき人物に声をかける。


「最終通告だ。女神から何を言われてここに来た?その理由を話せば……殺さないという選択肢を与えてやるが」


「うるせぇッ!!さっきから俺らをおちょくりやがって!お前みたいな甘ちゃんに何ができる!?俺から話すことは何もねぇぞ!」


 ふむ……意見は変わらないと……。

 じゃあ、しょうがないなぁ。

 敵対する者には等しく死を。

 まぁ、話したところで俺の女達に手を出そうとしたんだから許すことはないんだが。


「残念だ……。じゃあ、潔く死ね。◯ラ◯ザム」


 俺は【紅き鎧】を発動させる。

 身体が真っ赤に光り、能力が強化される。

 え?発動させる名前が違うって?

 内心でちゃんと【紅き鎧】と念じているから問題はないのだよ。


「じゃあ、まずは……俺の家の周りにいる奴らからにしようか。……【大地流砂縛】」


「……なんだ?……身体が地面に埋まっていく!?……くっ、抜け出せねぇッ!!」


「……止まった?首だけ地上に出ている……?あいつは何をしたいんだ……?」


「というか……この状況やばくないか?逃げようにも逃げられないってことは……あいつにやられ放題じゃねぇか!!」


 地面から首だけ出した男達は口々に叫んでいる。

 俺が発動した【大地流砂縛】は地面に身体を拘束する魔法だ。

 まぁ、全身を埋めることもできるんだが……今は敢えてしていない。

 これから起こることをしっかり目に焼き付けてもらわないといけないからな。


「さてさて、親玉らしき男よ。お前の仲間が抵抗虚しくただ虐殺される様子をそこでじっくり鑑賞してもらおうか」


「……まさか!?お、おい!お前ら逃げろ!!」


「いや、逃げるって言っても逃げる場所がねぇよ!!」


 男は壁の周りにいる連中にそう叫ぶが……時はすでに遅し。

 前後を【聖断】の壁で塞がれている男達に逃げ場はない。

 俺は片手を空中に掲げた。


「さぁ……誰に喧嘩を売ったのか……その身で思い知らせてやる。……【狂愛】と【嫉妬】、【憤怒】……【魔法威力向上】も使用しておこうか。……【魔王の洗礼】」


 俺の言葉とともに1柱の巨大な光が現れる。

 男達はその光の柱を呆然と眺めるばかりだ。

 動いていないのだから当然といえば当然だが。


「【時間遅延】発動。……いくぞ?と言っても……聞こえていないだろうけどな」


 俺は【時間遅延】発動させて、ゆっくりと空中に掲げた手を時計回りに動かした。

 ぐーるぐーるぐーると三回くらい手を回転させる。

 それと同時に光の柱が俺の手の動きに合わせて円を描いて動いていく。

 今の状態ではただ光の柱が男達を通過していくだけにみえる。

 ……しかし、この魔法の真の恐ろしさは【時間遅延】を解除した瞬間に訪れる。


「……【時間遅延】解除。さてさて、俺が考えた魔法の威力はいかほどなものか」


「……何を言っていやがr「ギャアァァァァァッ!!!」……なんだッ!?」


 男の声を遮って聞こえてきたのは……【聖断】の壁に挟まれた男達の悲鳴。

 俺が【時間遅延】を解除したことにより、【魔王の洗礼】が本来の姿を見せた。

 巨大な光の柱は男達に逃げる隙を与えず蹂躙していき、男達の体を蒸発させていく。

 ……うん、この光景はレーナ達に見せるべきではなかったのかもしれないな。

 やっていることが完全に魔王だもの。


 巨大な光が消えて、男達の悲鳴が聞こえなくなった。

 光の柱が消えた後に残ったのは……柱の範囲外にあった身体の部位だけだった。

 おっと、生首だけ残っているやつがあるな。

 さすがにレーナ達に見せるわけにもいかないので、焼却処分しておこう。


 悲痛な叫び声が聞こえなくなったことに気がついた男達。

 恐る恐ると言った様子で悲鳴が聞こえた方角に視線を向けると……。


「う……オェェェェェェ……!!」


「こ、こんなことが……。あいつは化けもんかよ……!!」


「ひ、ひでぇ……見てらんねぇよ……!」


 あまりの悲惨な光景に嘔吐する者、誰の女に手を出したのか理解して戦慄する者、泣きながら仲間のことを叫ぶ者……。

 反応はそれぞれで違ったが……誰もが恐怖していた。


 そんな男達の反応を見た俺は、上から見下しつつ冷徹に言い放つ。

 殺意のオーラを出すのも忘れずに。


「あぁ、言い忘れていた。俺の女達を狙ったことは万死に値する。……顕現せよ【冥府の神】」


『ご主人……。こ、今度はなんの用事だ……?』


 俺はハーデスを召喚する。

 ハーデスはソフィアを見て身体をビクッと震わせた。

 ……どうやらソフィアがトラウマになっているようだ。

 まぁ、あれは自業自得だし……フォローはしないけど。


「ハーデス。お前を呼んだ理由は……まぁ御察しの通りだ。今生き埋めになっている男達だけでいいから、魂の束縛を頼む」


『ご主人……生き埋めになっている男共だけでもざっと100は超えているんだが……。わ、分かった分かった!ちゃんと仕事はするからそんな鬼のような表情を浮かべないでくれ!」


 ハーデスは最初愚痴っていたが、涙目になって俺を説得してきた。

 ……?

 鬼のような表情を浮かべているつもりはなかったのだが……男達に向けていた殺気を勘違いしたのか?

 まぁ、仕事をしてくれる分には問題ないので放置しておこう。


「……待たせたな。処刑の時間だ。俺の女に手を出そうとしたことを後悔しながら死ぬがいい」


「ま、待ってくれ!情報ならいくらでも話す!だから、命だけはッ!!」


「……いまさら遅すぎるんだよ。せめて女神への信仰に敬意を評して……この大地に還してやろう。……【世界に捧げる鎮魂歌レクイエム】」


「や……やめろぉぉ!死にたくなぁぁぁぁいぃぃぃ……!」


 親分らしき男の声が響き渡る。

 でもさ、そのセリフはどうにかならなかったのか?

 あるネタを思い出して笑ってしまうじゃないか。


「「…………」」


 他の男達はというと……もう諦めているらしく、騒ぐこともなく悟ったような表情を浮かべていた。

 ……あの男達は地獄に拘束するのは勘弁してやるか。

 俺は内心でハーデスに指示を出しておく。

 ……人間には生まれ変わらせないけど。


 魔法が発動し、男達の身体は光に包まれていく。

 この魔法は人の命を大地に還元するものだ。

 対象となる人物の寿命を全て大地の養分として還元する。

 ……この魔法は封印だな。

 あまりにも危険すぎる。


 男達の姿が完全に消えたのを確認した俺は、レーナ達の方に飛んでいった。


「……大丈夫だったか?身体とか触られていないか?」


「……ぐすっ。うん……うん!大丈夫!パパが張ってくれた【聖域】もあったし……!ソフィアお姉ちゃんがポークビッツを見せてきた男を去勢して倒してくれたし……!」


「……お兄ちゃんの結界がなかったら正直危なかったかも。あ、ゼウスも頑張っていたから後で褒めてあげてね?囮になってくれたおかげで時間稼ぎができたから」


 レーナとリーアは俺に全力で抱きついてきて、戦闘に関しての報告をしてくれた。

 それにしても……女の子がポークビッツとか去勢とか言っちゃいけないよ?

 思わず内股になりそうになったじゃないか。

 そんなモノを見せつけてきた男を去勢したソフィアは偉いと思うけど。


「……ゼウス。俺とソフィアが戻るまでの間、よく3人を守ってくれた。……ありがとう」


 俺は未だ巨人状態のゼウスに深々と頭を下げる。

 今回のゼウスの働きはリーアから聞いた部分しか分からないが、ゼウスがいなかったらもっと酷いことになっていたかもしれない。

 感謝してもしきれないくらいだ。


『あ、主!そんなに頭を下げないでくだされ!主の大切な人は我にとっても大切なお方!身を呈して守るのは主に仕えてる身として当然のことですぞ!?』


 頭を下げている俺を見たゼウスは、慌てて170cmほどまで身体を縮めて俺の顔を上げようと説得し始めた。


 それでも頭を下げ続けている俺にルミアが近づいてきて、胸に俺の頭を押し付けた。

 柔らかい感触が頭部に伝わってくる。


「旭さん。ゼウスもこう言っている事ですし……そろそろ顔を上げてください。今は……全員無事だったことを素直に喜びましょう?」


「……そうだな。3人が無事でよかった……!もし3人があの男達に犯されていたらと思うと……俺は……俺は……ッッ!!」


「ふふっ……。弱気になっている旭さんは本当にかわいいですね……。大丈夫ですよ〜。私達はちゃんと無事でここにいますからね〜」


 ルミアは赤子をあやすように俺を優しく抱きしめて頭を撫でている。

 ……そういえば誰かに甘えるなんてここ数年なかったな……。


「あー!ルミアお姉さん、ずるい!わたしもパパをナデナデするのーっ!」


「ルミアさん、独り占めは流石に良くないと思うよ?私達もお兄ちゃんを甘やかしたい!」


「ふふふ……。じゃあ、3人で旭さんを存分に甘やかしましょうか」


 俺がルミアの胸の温もりを感じていると、我慢できなくなったレーナとリーアが俺に抱きついて頭を撫ではじめた。

 ……俺は守りきれたんだな。

 これからもこの天使達を守っていかなければ。

 例え非道な行いをしなければならないのだとしても……!


[いい雰囲気のところ申し訳ありませんが……あれはどうするのですか?]


 ソフィアの言葉にハッとした俺は、まだ甘えていたい欲をどうにか抑えて周りを見た。


 ーーーーーゴゴゴゴゴゴ。


【世界に捧げる鎮魂歌】を使った範囲から魔力が溢れてきている。

 生贄にした男達の数が多かったから、本来の許容を超えてしまったらしい。


「そうだなぁ……。じゃあ……こうしようか」


 俺はそう言って再び空中に飛び上がった。

 空から見るとどれだけの魔力が溢れているのかがよくわかる。

 早く対策しないと……大変なことになりそうだ。


「さーてと……上手くいってくれよ……?【永遠不滅たる桜】」


 俺は深呼吸をして……魔法を発動した。

 魔法の発動と同時に地面からズズズ……という音が響き渡る。

 俺は1度地上に降りた。


「さぁ、これから面白いものをお見せしよう。【魔力分身×4】……さぁ、空に行こうか」


 俺は4人をお姫様抱っこして再び空中に飛び上がる。


「「「[…………桜が……生えてきた!?]」」」


 空中に飛び上がると同時に、地面から大量の桜が出現した。

 その桜は満開の花びらを咲かせている。


 俺が男達に【世界に捧げる鎮魂歌】を使用したのはこの魔法を使うためだ。

 某ゲームの枯れない桜を再現しようと思って、魔法を創造した。

 ……問題があるとしたら掃除が手間なことだが……そこは魔法でどうにかすればいい。


 俺は家の周りに出現した桜を見ながらそんなことを考えた。

 ……それにしても、女神はやってはいけないことをしてしまった。

 この落とし前をどうつけるかを考えなくてはならない。


 目をキラキラさせながら桜を見るレーナ達をみつつ……復讐の炎を燃やすのだった。


ーーーー後書きーーーー

今回、旭が創造した魔法。

【大地流砂縛】

→対象を地面に埋める。どこまで埋めるかは調整は可能。


【魔王の洗礼】

→発動者の手の動きに合わせて光の柱が動きます。【終焉の極光】を自在に動かせる……イメージ。蒸発させるので威力は今までの中でえげつないです。旭怖い。


【世界に捧げる鎮魂歌】

→人間の命を世界の養分にしてしまう魔法。旭は封印することを決めた。


【永遠不滅たる桜】

→某エロゲの枯れない桜を再現したくて創造した魔法。

人間を養分として発動するため、【世界に捧げる鎮魂歌】とセットで使う。

多分、この魔法も封印される。


……今回は新規魔法を追加しすぎたせいで、ページが多くなってしまいました。

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