第72話 旭はマイホームを建築する

 ブレイズの店を出た俺達は、購入した土地にやってきた。

 どうせならマイホームを建ててしまおうという魂胆だ。


「うっわ〜……!パパ、ここひっろいねぇ……!!」


 お昼寝から起きたレーナがかわいらしい口を開けて感嘆している。

 声を出してはいないが、リーアも驚いているようだ。

 だがまぁ……レーナとリーアが驚く気持ちもわかる。

 俺が購入した土地は……屋敷1つは建築できるんじゃないかと言うほどの広さだったのだから。

 周りに家がないのも広く見える一因かもしれない。

 それはいいんだが……。


「……ソフィア。これ、本当に俺の【クリエイト】でどうにかなるのか?」


[旭の魔力を【クリエイト】に全部使用すれば問題ありませんよ。最悪、中身はその都度【クリエイト】するだけでも大丈夫ですし]


 ソフィアは俺の頭を撫でながらそう補足してくれた。

 それにしても……俺の魔力を全部か……。

 俺の魔力は45万で……【魔力消費軽減】も使用するから実質90万か……。

 90万もの魔力があれば屋敷をまるごと創造できるとか……【クリエイト】がおかしいのか、俺がおかしいのか……。


[あ、言い忘れていました。【魔力消費軽減】を使うのであれば中身も十分創造できますよ。【狂愛】などの各種バフも併用すれば、魔力が枯渇すると言うこともないでしょう]


 まさかの45万だけで屋敷が創造できるのか。

 訓練の時は出来なかったが……色んなスキルを獲得したから出来るようになったのかもしれない。


「じゃあ、さっさと【クリエイト】で建造するとしようか。ソフィアは【概念固定】と【腐敗防止】の方を頼む。俺はスキルの準備を始めるから」


[Yes,My Master。その2つの魔法に関してはお任せを。……旭。現在の能力でも問題ありませんが、100%の能力を使いたいので、許可をいただけますか?デメリットは……なんとかして抑えてみせますので]


 ソフィアが100%の能力を使いたがるなんて珍しいな……。

 色々制限がかかるとかいっていた気もするが……それでも俺の役に立ちたいのだという気持ちが伝わってきた。

 俺はそんなソフィアを抱きしめて語りかける。


「100%の力を使うことは許可する……が、無理はするなよ?今のソフィアは固有スキル【叡智のサポート】である前に俺にとって大切な存在なんだから」


[……旭……。そう言って頂けるだけでもやる気が出てくるというものです。……My master からの抱擁を確認。上限解放の際にかかる制限が一時的に解除されました。……旭、これで私の方は大丈夫です。旭と同じ力を発揮できます]


 ソフィアはそう言ってはにかんだ笑顔を浮かべた。

 ……俺が抱きしめるだけで制限を解除できるのか。

 これはいいことを聞いた。

 今後はソフィアに何かを頼む時は抱きしめることにしよう。


「パパ!【クリエイト】をするのはちょっと待って!!」


 ソフィアの準備ができたのを確認して、【クリエイト】を実効しようとしたらレーナが俺に抱きついてきた。

 リーアも恥ずかしそうに服をくいくいと引っ張っている。

 ……何か言いたいことでもあるのかな?

 後……ルミア?

 何故お前もそんな真っ赤な顔をしているんだ。


「レーナにリーア……。一体どうしたんだ?家に関しての要望があるのか?」


「そうじゃないんだけど……。パパがバフをかけて【クリエイト】を行うって聞いたから応援しようと思って」


「家の建築はお兄ちゃんとソフィアさん頼りだからね……。私達にもなにかできることはないかなって考えて、それなら応援しようってことになったの」


 レーナとリーアは上目遣いでそんなことを言い出した。

 確かにこの3人に応援されたら……やる気がいつも以上に出ると思う。

 でも、どうやって応援するのだろう?


「……レーナさん、リーアさん。ほ、本当にやるのですか……?」


「「当然でしょ!!!」」


 ルミアだけはまだ恥ずかしいのか、珍しく尻込みしている。

 ……え?そんなに応援が恥ずかしいのか?

 それとも……恥ずかしくなるような応援なのだろうか?


「じゃあ……パパ。着替えるから待っててね!……【聖光の塔】!!」


 レーナは冬◯ミに行った際にハイエンジェルが使っていた魔法を使った。

 ……いつの間に使えるようになったんだ?

 あの魔法に攻撃性能はないから、着替えるためのカーテン代わりとして使用したのだと思うんだが……。


 レーナ達3人が【聖光の塔】に包まれたから10分後。

 どんな家にするかをソフィアと話していたら、光の塔の中からレーナ達の声が聞こえてきた。


「……パパ、おまたせ!!準備ができたよ!!」


「れ、レーナさん。やっぱり私は元の服に着替えてもいいですか?こんな格好……は、恥ずかしすぎます……!」


「ルミアさん、今更恥ずかしがっていてもしょうがないよ。お兄ちゃんにはそれよりも恥ずかしいところを見られているんだから」


「そ、そうは言っても……!裸を見られるのとこの格好を見られるのは恥ずかしさの次元が違うというか……!」


 ……なんかルミアが異様なまでに恥ずかしがっているんですが。

 どんな格好をさせられているんだ……?


「……もう!ルミアお姉さん、往生際が悪いよ!!【聖光の塔】解除!!」


「ちょ……ま、待ってくだs」


 業を煮やしたレーナが【聖光の塔】を解除した。

 ルミアの声が涙声になっているが……。

 光の塔から現れた3人の姿は……。


「ち、チアガール姿……だと……!?」


 3人の姿はチアガールだった。

 両手にはちゃんとポンポン(正式名称は知らない)も完備されている。

 ミニスカートといい……防御の薄そうな上着といい……二次元から飛び出してきたかのようだ。

 ……いつの間に服を買っていたんだろうと思ったが、細かいことはどうでもいい。

 チアの姿になった3人は非常に愛らしい。

 俺が3人の姿に見惚れていると、レーナがゴホンと咳払いをした。


「……では、応援を開始したいと思います。フレー!フレー!パーパッ!!」


「頑張れ!頑張れ!お兄ーちゃんッ!!」


「が、頑張れ……頑張れ……ソフィアさん……!」


「「「わーーーーーー!!!」」」


[まさか私も応援してもらえるとは……これは頑張らないといけませんね。……って、旭?どうしましたか?]


 ……なにこれ。

 なにこの破壊力。

 ロリエルフ2名と猫耳娘のチアガールって……こんなにも尊いものだったのか……?

 これが【クリエイト】を行う前だったら……秒で襲っているところだ……。

 ……よし、早めに【クリエイト】を終わらせて……このコスプレでの情事に励もう。

 その時はソフィアにも着てもらうとするかな。

 いつもより盛り上がること間違いなしだ。


[……旭の基礎能力の一時的な向上を確認。……応援されることで潜在能力を引き上げましたか。この状態が切れる前に……やってしまうとしましょう]


 俺はソフィアの言葉に頷き、意識を集中させる。

 レーナ達はまだ俺とソフィアの応援をしている。

 ルミアは真っ赤な表情で涙を浮かべて応援していた。

 ……非常にそそるからもっと見ていたいのだが……。

 ……いや、今は目の前のことに集中しよう。


「……各種バフ魔法及びバフスキルの適用を開始」


[……My Masterのスキル使用に関する同調を開始します]


 俺は【狂愛】などのスキルを順次発動させていく。

 ソフィアも俺と同じタイミングでスキルを発動させているようだ。

 そして発動している最中にもどういう外見の家にするかのイメージは欠かさない。

 最後に【紅き鎧】を発動させて、ト◯ン◯ム状態になった俺は最後のワードを唱える。


「俺達[ROY]の新しいマイホームをここに!!【クリエイト:豪邸】!!」


[【クリエイト】発動を確認。【概念固定】と【腐敗防止】を同時に展開……!]


 俺とソフィアが魔法を発動した瞬間、なにもない土地に立派な豪邸が出現した。

 …………大きすぎないか?

 大きさだけなら国会議事堂くらいはあるんじゃないだろうか?

 いや、一応屋敷なんだけど。


「……パパ。こんなに大きな屋敷を創造できるの……!?」


「レーナ、それは違うわ。私達の応援があったからこその結果なんだよ、きっと!!」


「ここまで立派な屋敷ができたのであれば、私も頑張って応援した甲斐がありますね……。でも、恥ずかしいので……この服はしばらく着たくありません……」


 俺が創造した家……というか屋敷を見たレーナ達3人はその大きさに驚いている。

 正直、3人の応援がなかったらここまで大きな屋敷は創造できなかったんじゃないかと思う。


「俺自身もびっくりしているよ。レーナ達3人が応援してくれたおかげだな。ありがとう」


[私からも感謝を。応援されることでここまでの能力を引き出せたのは3人のおかげです]


 俺とソフィアが3人にお礼を言うと、レーナ達は恥ずかしそうな表情を浮かべた。

 しかし、それも一瞬のみですぐに満面の笑みに変わる。


「「「喜んでもらえてよかった!!!」」です……」


「あー……もう!かわいいなぁぁぁあ!」


「「「…………!?」」」


 そんな3人を見た俺は我慢ができなくなり、思わず抱きしめてしまった。

 レーナ達が驚いたような表情を浮かべる。

 俺は分身を呼び出し、レーナ達をお姫様抱っこする。

 本体である俺はレーナを担当だ。


「【クリエイト】をする前から我慢できなかったが……そんなにかわいらしいんだ。家が完成した記念に愛してあげないといけないよな!?安心してくれ、お風呂場と寝室はすでに創造済みだから」


 俺は3人の返事を聞く前に屋敷に向かっていく。

 ……ん?

 ソフィアが羨ましそうにこちらを見ている……そうか!


「悪い悪い。ソフィアも頑張ったものな。1人だけ仲間はずれにするのは良くないよな」


[……いえ、そういう意味でみていたのでは……ひゃあ!?]


 俺は分身を向かわせてソフィアを抱き上げた。

 ソフィアはかわいらしい悲鳴をあげて抵抗していたが……すぐに大人しくなる。

 ……ソフィアはもうちょっと自分の欲望に素直になるべきだな。


 そんなことよりも……チアガール姿での情事は初体験だ。

 今日は一日中屋敷にいるとしよう。

 あ、誰かが訪ねてきても面倒だから結界は展開しておかないとな。


 俺は【聖域】を全力で展開して、今度こそ屋敷に向かうのだった。



ーーーー後書きーーーー

チア姿はフォロワーの24さんのイラストから逆輸入させてもらいました。

ヒロインのチアガール姿というのは素晴らしい……。

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