第71話 旭は不動産屋に向かう
冒険者ギルドでレーナとリーアが達成した報酬を受け取った後、俺達3人は宿に戻ってきた。
【長距離転移】をする前に、冒険者達が死んだような目をしていたような気がするが……気のせいだろう。
ハイエンジェルのお灸が強すぎたとかそんなわけではない……はずだ。
「「「「ただいま〜」」」」
[あら、皆さん。お帰りなさいませ]
転移で帰ってきた俺達を迎えてくれたのはソフィアだった。
帰るとは聞いていたが、ここまで早いとは。
……いや、ただ単に俺達が遅かっただけなのかもしれない。
「ソフィアもお疲れ様。ハーデスからお金は返してもらえたのか?」
[その辺は抜かりなく。ハーデスが勝手に使った金貨30枚はきっちりと回収してきました。旭達もいろいろと大変だったみたいですね]
ソフィアはレーナとリーアの方を見てそう言った。
現在2人は俺に抱っこされている状態だ。
その顔はいまだに真っ赤だが。
俺の首元に痣ができるくらい吸い付いている最中である。
「大変だったのは俺とルミアじゃなくて、レーナとリーアの2人だけどな。帰って早々で悪いけど……お風呂の準備はできてる?レーナとリーアの身体を洗ってあげたいんだが」
俺の言葉にレーナとリーアはビクンと体を震わせた。
何故かルミアも体を震わせている。
……うん。何を期待しているのかわかった。
ソフィアも同じことを思ったらしい。
ジト目で俺を睨んできた。
瞳から光が消えているから【狂愛】が発動してるな。
[旭……?私への御褒美も忘れないでくださいよ……?]
……もちろんわかっているって。
俺は心の中でソフィアに答えて、口を塞ぐ。
ソフィアならこの行動だけでもわかってくれそうだが……。
そんなことを考えながら、俺達は風呂場に向かった。
2日ぶりの全員でのお風呂だ。
今宵は4人を満足させられるように頑張るとしようじゃないか!!
▼
レーナ達4人との熱い夜を過ごした翌日の朝9時。
俺達は遅めの朝食をとりながら、今日の日程について話し合っていた。
ちなみに遅めの朝食になってしまったのは、昨晩ハッスルしすぎたから。
4人の意識がなくなるまでやったら気がついた時には朝の6時だった。
「……ごほん。今日の日程についてだが……不動産屋に行こうと思います」
俺は手を組んでみんなにそう語りかけた。
伊吹姫の件で忘れていたが、この街を拠点にするために家を買うことに決まった。
それを今日やってしまおうという魂胆である。
俺の発言にレーナが手を挙げた。
足をもじもじさせているのが非常に愛らしい。
「パパ、それは問題ないんだけど……1日で決められるものなの?」
「それは問題ない。ギルドマスターから不動産屋に話が通っているみたいだからな。そんなに時間はかからないんじゃないかと思う」
[旭がそう言うのならそうなのでしょう。では、準備が終わったらすぐに向かったほうがいいかもしれませんね。ギルドマスターに場所とかは聞いているのですか?]
「それについては大丈夫です。ギルドマスターに用事を伝えに言った際に、住所は教えてもらってあります。そのメモはここに……。座標軸さえわかれば【長距離転移】も可能ではないかと」
ソフィアの疑問に答えたのはルミアだった。
不動産屋の場所がわかればすぐにでも行動できる。
まぁ、俺自身は行ったことがない場所に対する【長距離転移】の座標軸固定はできないので、ソフィア頼りになりそうだが。
「それじゃあ……行くとしようか。ソフィア、不動産屋の入り口までの座標軸固定を頼む」
[YES,My Master。不動産屋の入り口に座標軸の固定を開始……固定が完了しました。いつでも転移可能です]
「よし、早めに行って今日はゆっくりしようか。【長距離転移】!!」
俺は4人が抱きついたのを確認して、不動産屋に転移した。
最近、歩くという動作をしなくなった気がするが……転移が万能すぎるから仕方ない。
▼
「こんにちはー。冒険者ギルドのギルドマスターさんから紹介されてきたんですけれどもー」
リーアがドアを開けて中に入っていく。
俺達はそのすぐ後ろから店内に入っていった。
ちなみにリーアが先頭なのは礼儀正しい挨拶ができるからだ。
褐色銀髪ロリのダークエルフを見て嫌がる人がいるわけがないとかいう理由ではない。
数分もしないうちに恰幅のいいおじさんが奥から出てきた。
「はいはい……いらっしゃいませ。……っと貴方が響谷旭殿ですかな?ギルドマスターからお話はお伺いしております。私はこの店の店主をしているブレイズと言います。以後お見知り置きを」
「響谷旭だ。こちらこそ今日はよろしく。じゃあ、早速だけど……物件を見せてもらってもいいか?可能ならば家を購入したいんだが……」
「えぇ、もちろんですとも。では、奥の部屋へどうぞ。そちらの可憐なお嬢さん達も是非」
ブレイズの言葉にレーナとリーアはキャイキャイとはしゃいでいたが、ルミアとソフィアは警戒するような目つきをしていた。
出会ってすぐに可憐とか言う人間は信用できないんだろう。
……俺も正直信用はしていないが、何かあったら【勲章を無くす病】でもかけておこう。
だから2人とも?
殺意は抑えておくように。
▼
「……と、ここまでが私が管理している物件の中で旭殿の要望を満たしているものになります。いかがでしょうか?」
ブレイズが提示してきた資料はどれも防音完備が充実されたものだった。
住宅街だからそういう物件を用意したのかもしれない。
意外にも仕事ができるやつだったんだな。
てっきり俺の女をいやらしい目で見てくるおっさんかと思ったんだが。
ちなみにレーナとリーアは話に飽きたらしく、今は2人仲良く俺の膝の上でお昼寝中だ。
子供特有の高い体温が非常に心地いい。
「防音が完備なのはいいが……住宅街なのが気になるな。俺達の能力は他の人よりも高い。近隣トラブルは極力避けたいところだし……。これ以外にあるか?」
俺の言葉にブレイズは思案顔になった。
提示した資料にいい物件がなかったことに対して怒っているわけではないようだが……。
「ふむ……そうなると土地を買ってマイホームを購入した方が良さそうですね。予算はどれくらいを検討していますか?」
なるほど。
俺の希望する物件だと該当するものがないから購入した方が早いということか。
それにしても……予算なぁ……。
一応金貨は400枚は残っているのだが、いかんせん相場がわからない。
俺はルミアの顔を見た。
「…………コクン」
ルミアは俺の顔を見て軽く頷いた。
どうやら俺が言いたいことを理解してくれたらしい。
さすがは元ダスクのギルドマスター補佐。
理解が早い。
「ブレイズさん、ここからは旭さんに変わり私がお話しします。金貨は……そうですね。現在300枚は用意できます。……それだとどのくらいの広さまで大丈夫ですか?」
ブレイズは金貨300枚という言葉に一瞬驚いた表情をしたが……すぐに真面目な顔になった。
……足りなかったのか?
「300枚ですか……。一般的な物件であれば十分なお釣りが返ってくるでしょう。……しかし、旭殿のご要望に応える建築となると……若干足りないかもしれません」
ふむ……足元を見てきているのかとも思ったが、真剣に考えてくれているようだ。
ブレイズは見た目以上に真面目な人間らしい。
ブレイズの言葉に何を思ったのか、ソフィアが俺の方を見た。
あの顔は「本当に建築費用まで出すのですか?」という顔だな。
……まったく。
俺の嫁達は俺の考えを表情で読み取る技を獲得しているらしい。
「そのことについてだが……建築費用なしにしたら、どのくらいの土地を買える?」
俺の言葉にブレイズは驚いた表情を浮かべる。
……特におかしいことは言ってないよな?
「建築費用なしですか……!?……そうですね。少なくとも冒険者ギルドと同じくらいの土地は購入できるかと。そこまで広い土地となると町外れになってしまいますが……」
ふむ……町外れの土地は安いらしいな。
じゃなきゃ、あのバカ広い冒険者ギルドと同じ敷地の土地を購入できないだろう。
俺はソフィアの方を向いた。
「ソフィア。ブレイズによるとそれくらいの土地を購入できるみたいだが……。建築は俺の魔法でなんとかできるのか?」
「…………な!?」
俺の言葉にさらに驚いた声をあげるブレイズのだが……今は放置だ。
俺の魔法で建築の問題をどうにかできなければ、先ほどの住宅街に部屋を借りることになる。
そういう意味合いも込めて尋ねたのだが……。
ソフィアは首を傾げて俺の質問に答えてくれた。
[……?逆に今の旭ができないことがあると思いますか?私というサポートがあるのですよ?……そうですね。【クリエイト】に【概念固定】と【腐敗防止】の魔法をかければ距離が離れても消えることはなくなります。2つの魔法は神霊魔法ですが、今の旭なら問題なく重ねがけできるでしょう]
……なるほど。
詳しいことはわからないが、【概念固定】で【クリエイト】で創造したものを地上にとどめて置ける……ということか。
【腐敗防止】は……そのままの意味だろうな。
「その話を詳しく……ッ!……う、動けん!?」
俺がソフィアと話していると、ブレイズが身を乗り出して俺の方に迫ろうとしてきた。
……おい、レーナとリーアが起きるだろうが。
俺は無言でブレイズに【空間固定】をかけて拘束する。
拘束されて動けないブレイズを見やりつつ、殺意を少し浴びせる。
「あまりうるさくするな。
「……ヒッ!?い、一応聞いてはいますが……てっきり冗談か何かだと……」
俺の質問にブレイズは顔を青くして答える。
……まだ殺意弱い方なんだが……一般の人間からしたらそれだけでも恐怖してしまうらしい。
「とりあえず……俺の実力は改めてわかってもらえたと思う。それじゃあ、その土地を購入するから手続きを頼む。もう動けるはずだぞ?」
「……は、はい!今すぐに!!」
俺は拘束を解いてブレイズにそう告げた。
拘束が解けたブレイズは大急ぎで、書類を準備をするために部屋を出て行く。
……はぁ、なんか疲れた。
俺はブレイズが部屋から出た後、ためいきをついた。
やはり俺の能力はチートすぎるのかもしれない。
こんな状況でウダルの民に魔法を披露することなんてできるのか……?
逆に問題が起こりそうな気がしてきたぞ……。
そんなことを考えていた時のことだった。
…………ムニュ。
俺の顔に両側から柔らかい感触を感じた。
どうやらルミアとソフィアが抱きついてきたらしい。
「旭さん、そんなに心配そうな顔をしないでも大丈夫ですよ。何があっても私達は味方ですから」
[ルミアの言う通りです。旭は1人ではありません。……もっと私達を頼ってください]
「……あぁ、そうだな。1人で抱え込まないように気をつけるよ」
ソフィアとルミアの巨乳に顔を挟まれていると、不思議と気持ちが落ち着いてくる。
……無意識に1人で抱え込んでいたとは……反省しないとな。
俺は2人の胸の感触を感じながら、ブレイズが戻ってくるのを待つことにした。
……ブレイズが戻ってきた時、物凄く引きつった顔を浮かべていたのは言うまでもない。
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