第66話 旭は神々と作戦会議を行う
「それでは……これより第1回女神による転移の影響についての作戦会議を行う」
俺は【クリエイト】で創造したテーブルの上でゲン◯ウのポーズをして話を切り出した。
今回創造したテーブルは円形のテーブルだ。
ゼウスとハーデスの2人は身長を170cmまで縮めているため、椅子に座っている。
四神達は……小さくなっても椅子に座ることができないので、四方についてもらうことにした。
白虎と青龍に囲まれたギルドマスターの体が震えているが……気のせいだろう。
『主……今回は女神の転移の影響を考えるということですが……。詳しい説明をお願いしてもよろしいですかな?』
ゼウスは手を上げてからそう発言した。
わざわざ発言前に挙手をするとは……真面目な奴だ。
……だからソフィア?そんなに睨むようにゼウスを見ないでやってくれ。
おかしいことは言っていないんだから。
[……旭がそういうなら]
ソフィアは俺の心の声に反応し、渋々といった感じでゼウスを睨むのをやめる。
ゼウスがホッとため息をついたのが視界の隅に映った。
……レーナのヤンデレといい、ソフィアといい……ゼウスはビクビクしすぎじゃないか……?
今度酒が美味しい居酒屋にでも連れて行ってあげよう……。
「確かに事情を説明していなかったな。じゃあ、ギルドマスターも聞きたいみたいだし、今回の作戦会議を行うに至った経緯を説明するとしようか」
そう言って俺はギルドマスターと神々に事情の説明を始めた。
この世界を管理している女神(低階級)とやらが俺の反応を見るために、丹奈をアマリスに転移させたこと。
丹奈が俺に負けたので、2週間後に新たに俺の元カノを転移させようとしていること。
その元カノが俺がフリーターになる原因となった人物であること。
あわよくば転移されてきた状態で送り返し、女神による転移の影響を受けさせないようにしたいこと。
簡単にではあるが、だいたいこんな感じで説明したと思う。
『ご主人……なんというかご主人の人生は波乱万丈だな。冥界でいろんな魂の輪廻転生を司ってきたが……ここまでの人間はご主人が初めてだぞ……。って、ソフィア殿!何故に我に対してそんな殺意をむけるのですか!?』
[……旭だって好き好んでこういう人生になったわけではないのですよ?そこをしっかり考えなさい。呆れるなんて言語道断です……ッ]
俺の説明にハーデスが呆れた顔をしてそうぼやいた。
ぼやいた瞬間にソフィアからの殺意のオーラがハーデスに向けて放たれる。
俺は確かにラノベ主人公みたいな人生を送ってきたから、ハーデスの言ってることはあながち間違っていないんだよなぁ。
呆れるのはごく普通の反応なので、俺はソフィアの身体を抱き寄せた。
抱き寄せる際に尻を掴んでしまったのは……不可抗力である。
[……ひゃん!?あ、旭……!?突然そんなところを触るなんて……どうしたのですか!?人が見てる中での行為は恥ずかしいのですが……!?]
顔を真っ赤にしたソフィアが俺に反論してきた。
そんなソフィアの唇を塞いで、俺は抱き寄せた理由を説明する。
「俺のために怒ってくれるのは嬉しいんだけどさ。このままだと話がいつまでも進まないから、強硬手段を取らせてもらったよ。今だけは抑えてくれないか……?後でそれ相応のお礼はするから」
[……旭がそういうのであれば、私はその命に従うだけです。……お礼、期待していますからね?]
ソフィアは上目遣いで俺の方を眺めてくる。
ふふふ……期待していろよ?
この間みたいに昇天するまで気持ちよくしてやる……ッ!
「パパ……ソフィアさんばかりかまっちゃダメだからね?」
「レーナの言う通りだよ、お兄ちゃん。平等に愛してくれないと……嫉妬しちゃうからね?」
「……旭さん、私達も期待してもいいです……よね……?」
ソフィアだけ愛されると危惧したのか、レーナ達3人が俺の近くに椅子を寄せてきた。
目の光は……消えてヤンデレ状態になっている。
うん、嫉妬深いところも非常に愛おしい。
俺は【魔力分身】を使って分身を3体呼び出し、レーナ達を膝の上に座らせた。
もちろん、意識は本体に統一している。
3人は俺の無言の行動に何かを察したらしく、満足そうに微笑んで俺の膝の上に座りなおした。
それぞれ違う感触が俺の心を癒してくれる……。
まぁ、これで話の続きができるだろう。
だからギルドマスター。そんな目で俺を見ないでくれ……って違うな。
あれは白虎に頭を齧られてるから助けてくれって言うメッセージだな。
俺はテレパシーで白虎に注意しておく。
……脅してはいないぞ?
「さて、話は脱線してしまったが、転移の影響についての話し合いを再開しよう。女神による転移について知っていることはあるか?」
俺の問いかけにハーデスが挙手をした。
ハーデスの名前を呼び、続きを促す。
『ご主人、今回の女神は低階級とのことだったな。低階級の女神であれば、この場にいる神霊級の神が1人いれば問題はないだろう。これが高位の女神だったらまた違ったかもしれないが。低階級の女神による転移というのは、転移の準備に相当な時間がかかる。この時に必要になってくるのが個人情報だ。そのデータをハッキングで抹消した後、今後情報が漏れないようにウイルスを仕掛けておくのが一番だと思われる』
……なるほど。
って、異世界に来てまでハッキングやらウイルスやらの単語を聞くことになるとは思わなかったぞ。
あれか?女神の転移はパソコンのシステム的なものなのか?
しかもハッキングが可能って……俺の【長距離転移】もそんなに使用しないほうがいいのかもしれない。
([……旭の【長距離転移】はハッキングやウイルスなどの心配はありませんよ。私が身近にいますし、今の旭はそこらへんの神よりも高位の存在になりつつありますので。少なくとも四神や冥府の神を従えている時点で普通の人間にできる芸当じゃありません])
俺(本体)の膝の上で疑問を感知したソフィアがフォローしてくれた。
というか、俺の存在ってなんなんだろうな。
そこらへんの神より高位の存在って……チートすぎるだろ。
フォローしてくれたソフィアの頭を撫でつつ、ハーデスに返事を返す。
「女神の転移に対する対応策は理解した。そうなると……ゼウスはすることがなくなるな。何か意見はあるか?」
俺の問いかけにゼウスは少し考えた後、苦笑いを浮かべた。
自分にできる役割を見つけ出したのだろうか?
『確かに我は禁忌級なので女神の転移に干渉はできませぬ。しかし、禁忌級といえど低階級の女神と同等の存在です。ハッキングをする間の時間稼ぎは我にもできると思いますぞ』
[旭、ゼウスの言うようにハッキングしている間に女神を取り押さえる役目は必要となります。ここはゼウスに任せてみるのもいいのではないかと]
ゼウスの言葉にソフィアからのフォローが入った。
全知全能の神を囮に使うのか……。
本人からの申し出だし、問題はないんだろうけど……贅沢な使い方だよなぁ……。
俺は内心でぼやきつつ、ゼウスの発言を受けて考えた作戦を皆に伝える。
「では……ゼウスにはハッキングする際の女神への時間稼ぎを任せる。女神の居場所はソフィアから後ほど聞いてくれ。四神達は毎回同じで申し訳ないが、決闘場にて【四獣結界】の使用を頼む。ハーデスは……作戦の立案者だからハッキングとかその他諸々をやってくれ」
『『『『『了解!!』』』』しましたぞ!!』
『……ちょっと待てご主人。確かに我が女神の転移への影響について対応策を出したが、それで我が担当することになるのか!?1人でも問題はないが……誰かサポートをつけてくれないだろうか?』
四神とゼウスはすぐに自分の役目を理解したが、ハーデスからは反論の声が上がった。
……まぁ、ハッキングとウイルスをかける役割を提案して、自分がやることになったから納得がいかないんだろう。
作戦の立案をしている時、我には関係のないことだと言わんばかりにジュースを飲んでいたからな。
……油断しているからそうなるのだよ。
とは言えども、流石に1人でやらせるのは酷というものか。
それなら……と思い、俺はハーデスに向き直った。
「ハーデスがそう言うなら仕方ないな。作戦効率を上げるためにもソフィアにサポートしてもらうことにしよう。ソフィア、俺から離れての作戦になるが、ハーデスをしっかりサポートしてやってくれ」
[……旭から離れることはあまりしたくないのですが……仕方ないですね。わかりました。この【叡智のサポート】ことソフィア。マスター旭のために全力で冥府の神をサポートし、必ずや作戦を成功させてみせましょう。……作戦前に離れていても安心できるように愛してくださいね……?]
ソフィアはそんなかわいらしいことを言いながらも、力強く宣言した。
全力でハーデスをサポートするなら問題はないだろう。
上目遣いで見つめてくる目尻に涙が浮かんでいるのは……ハーデスに対する当てつけかな?
『……わかった!わかりました!我が1人でやります!……というか、ソフィア殿……。それはずるいのではないですか……?そんなこと言われたらご主人と離れて作業させるのが申し訳なくなってくるでしょう……』
ハーデスは諦めたように机に突っ伏した。
突っ伏した状態でソフィアを睨んでいるが……当の本人は涼しい顔をしている。
というか……あの涙は演技だったのか。
ソフィア……恐ろしい娘……ッ!
[分かれば良いのです。では、ハッキングとウイルスをかける担当はハーデス1人ということで。……失敗したらどうなるかわかっているでしょうね……?]
『もちろんわかっておりますとも。消滅させられないように全力で取り掛かることをここに宣言しましょう』
ソフィアの脅しにハーデスは肩をすくめる。
今のソフィアは【狂愛】のオーラを全開なんだが……。
そんなソフィアに普段と変わらずに接することができるハーデスは意外と図太いのかもしれない。
「じゃあ、当日は各自与えられた役割を全うしてくれ。それでは、これにて第1回女神による転移の影響についての作戦会議を終了する。神々のおかげでこの世界に伊吹姫を転移させるのを回避できそうだ。ありがとう」
俺の言葉を聞いて満足気に頷いた四神とゼウスは次々と送還されていった。
ただ1人ハーデスは未だ顕現されている。
「……ん?ハーデスはどうしたんだ?まだ何か言いたいことがあるのか?」
『あぁ、ご主人に伝えておきたいことがあってな』
ハーデスは深呼吸をして、真面目な表情になる。
……なんだ?何をいうつもりなんだ?
『ご主人達を待っている間、人間界の食事とか買い物をしていたんだが……山賊の報酬金では少し足りなくてな……?ご主人の【無限収納】にあるお金を少し拝借させてもらった。いやぁ、眷属になると【無限収納】も共有されるのだな。冥界にいる我の女達にお土産を買ってしまったので30枚ほど金貨を使ってしまったが……事後承諾ですまないな!』
……ハーデスは今なんて言った?
俺の【無限収納】から金貨を30枚ほど拝借した……?
それを聞いた俺は無言でソフィアを見る。
ソフィアも同じ気持ちだったのか深く頷いた。
「……ソフィア。【冥府の神】の【無限収納】へのアクセス権を剥奪、その後……金貨30枚稼ぎ終わるまで送還されないように情報操作を行え」
[……Yes,My Master。ハーデス……貴方はあろうことか旭達の共有財産に手を出しました。本来なら極刑でもおかしくありません。さぁ、行きますよ。金貨30枚を今日中に稼いでもらいます……。私……かなり怒っていますからね?本来なら、これから旭からお礼をもらえるはずだったのに……。今日中に稼ぎきれない場合……買ったものは全て押収、貴方の女を1人ずつ消滅させます]
『…………ッ!?クソゥッ!冥界に戻れない……!』
俺とソフィアの言葉に顔を白くするハーデス。
いや、勝手に俺達の金を使ったんだ。
当然の報いといえよう。
「ソフィア、遠慮はいらないからな。全力で稼がせろ。……乱暴な言葉遣いしても俺は嫌いにならないから」
[わかりました。ではお言葉に甘えて……。ハーデス!!!]
『はいッ!』
[今から貴方を殺す気で金貨を稼がせます。わかったら即行動しなさい!!!]
『Yes, ma'am!』
[声が小さい!!!]
『Yes, ma'am!!!!』
ハーデスはソフィアに引きづられて冒険者ギルドに戻っていった。
さて、俺達も宿に戻るとしよう。
「……旭君が怒るとあんな感じなのか……。新しい嫁のソフィア君といい……絶対に敵に回さないようにせねば……」
立ち去る寸前、ギルドマスターのそんな呟きが聞こえた。
うんうん、怒らせないほうがいいと思うぞ 〜?
今の俺の能力なら魔王になることも簡単だからな。
俺は退屈すぎて眠ってしまったレーナとリーアを抱き上げ、ルミアと一緒に宿へ向かうのだった。
ーーーー後書きーーーー
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