第46話 特別編-旭一行は「珍獣屋」に向かう -前編
今回は2話同時更新となります。
「珍獣屋」さん(@noge_chinjuya)から名前を使用してもいいとの許可を得ましたので、コラボしてみました。
ーーーー
それはとある日の午前10時頃。
俺達[ロードオブヤンデレ]がウダルの宿でのんびりと休んでいた時のことだった。
スマホのインターネットから情報を収集していたルミアから疑問の声が上がる。
「旭さん。旭さんの前いた世界では虫とかも食べていたのですか?」
ルミアがスマホの画面を俺に見せてくる。
その画面には日本で食べられる昆虫料理の記事が記載されていた。
「わたしもルミアお姉さんと同じこと思ってた。パパが持っている電子書籍にそんな感じの漫画があったよね?」
ルミアの言葉を聞いて、レーナも会話に参加してくる。
レーナが言っているのは、恐らく女子校生と教師がサソリやコオロギと言った昆虫料理を食べるというあの漫画のことだろう。
気になる人は検索してみてほしい。
桐谷さんで検索すればヒットするから……多分。
それはさておき、俺はレーナとルミアに言葉をかける。
「あまり食べる人はいないけどな。見た目から忌避する人も多いみたいだし……」
「……見た目が悪いから食べるのを躊躇うのですか?旭さんのいた世界は裕福そうでしたし……それも仕方ないのかもしれませんね。私からしたらもったいないという感想しかでてこないのですが……」
「ルミアお姉さん、それは多分パパの世界に住んでいる人族だけだと思う。私も食べてみたいもの 」
ルミアの言葉にレーナが自分も同じだとばかりに話に加わってくる。
「俺の実家だとイナゴの佃煮とかスーパーに売っていたなぁ。最も俺も興味を持ったのはここ最近だが……」
俺の言葉に信じられないという表情を浮かべるルミア。
猫耳族からしたら虫も普通の食料なんだろう。
猫ってネズミとかハントするし。
そんな会話をしていたら、リーアが「あっ」という声をあげた。
俺とレーナ、ルミアがどうしたのかとリーアに視線を向ける。
「お兄ちゃん、ジビエで調べていたんだけど……こんな場所があるみたい。……ほら、これ」
リーアはそう言って俺達にとあるサイトを見せてきた。
それは桜木町駅の近くにあり、その界隈では有名な居酒屋「珍獣屋」だった。
個人的にもかなり気になっていた場所である。
「あぁ、珍獣屋か。俺も前から気になっていたんだよね。色々と珍しい料理があるらしくて。でももう行けないんだよなぁ……」
俺の言葉にレーナが首をこてんと倒して質問してくる。
「……?パパ、どうしていけないと思うの?パパには冬◯ミの時に使った【境界転移】があるじゃない。それを使えば行けると思うんだけどなぁ……」
……あぁ、そういえばそんな魔法もあったね。
帰ってきてわずか1日で炎上しかけたあの出来事な……。
もう使うことはないだろうと思って、忘れていたよ。
「確かに【境界転移】なら地球に行くことはできると思うが……前回のことを考えるとなぁ。ちょっと躊躇うんだよ」
俺の言葉に3人が疑問マークを頭に浮かべる。
どうして俺がそんなことを思うのか本気でわからないようだ。
そんな3人に苦笑しながら、俺は話を続ける。
「前回転移した時、最後に警察に囲まれただろ?あの後様々なところでニュースになっていたんだよ。それを思うとあんまり地球に行くのもどうかと思ってさ。それに件の居酒屋の席数は意外と少ない。眷属召喚も厳しいだろうし」
「今度は【偽装】を解除しなければ問題ないと思いますよ?」
ルミアの言葉にうんうんと頷いているレーナとリーア。
というよりも、3人の目がとてもキラキラしている。
俺が3人のお願いを聞かないわけがないだろう……そんな確信を持った瞳だ。
退路は既に絶たれていたみたいだ……。
俺はそんな3人のお願いを叶えるべく、叡智さんに尋ねる。
叡智さん、今回の【境界転移】は俺だけでも行けるかな?
ーーーー[疑問を感知。【魔力消費軽減】を使えば問題はないかと。旭のみなら旭のタイミングで戻ってこられるはずです]
叡智さんからもGoサインがでた。
俺は苦笑したまま3人に話しかける。
「それじゃあ、行くとしようか。」
「「「はいっ!!」」」
レーナとリーア、ルミアの3人はその場でハイタッチを交わす。
そんなに行きたかったのね。
3人の希望を叶えられてよかった……かな?
予約なしで行くと入れないので、今回は2日後に行くことになった。
時差の関係もあるので13時頃に転移を行なう。
すでに【偽装】は発動済み。
もちろん、突然現れた俺達に驚かないように【透明化】も忘れてはいない。
「じゃあ……行くからな?ーーーー【境界転移】!座標……桜木町駅前!」
俺達は二度目の地球に向けて出発した。
▼
俺達は桜木町駅のロータリーに到着した。
到着時刻は16時。
前回同様トイレに向かって【透明化】の解除を行う。
俺が先に解除した後、女子トイレ近くに行き、3人に解除の合図を出した。
前回の時に女子トイレを出た瞬間に囲まれたから、その対策である。
「ぱ……旭お兄ちゃん、お待たせっ!」
「お兄ちゃん、今回は囲まれなかったね」
「囲まれなくて良かったですよ……。旭さん以外の男に見られたくないですから」
三者三様の反応で俺に声をかけてきてくれる3人。
まぁ、3人は美少女なので注目は集めているが。
ちなみにレーナは前回同様[旭お兄ちゃん]と呼ぶように言い聞かせてある。
その方が都合がいいからな。
「じゃあ、お金を下ろしてから居酒屋の方に行こうか」
「「「はーい」」」
3人の返事を聞いて、俺達は駅を出た。
何をするにも日本円は必要だ。
今回は4人なので結構な額をおろさないと……お金残っていればいいんだけどなぁ。
▼
お金をおろして数分後、準備を整えた俺達は珍獣屋にやってきた。
予約なしだと満席で入れないと事前に調べていたのだが、その情報は正しかったらしい。
予約なしの3名以上の団体さんが断られているのを見たから間違いない。
……そういえば、12歳以下の方は入店をお断りいたしますとか書いてあったような……。
大丈夫かなぁ?
そんな疑問を感じつつ、俺達はそのまま二階にある珍獣屋に向かった。
「いらっしゃいませ〜。何名様ですか?」
「予約していた響谷です。人数は電話の通り4人です。」
「なるほど、ではそちらのカウンターにどうぞ〜」
俺達はマスターと思われる店員さんの案内に従い、それぞれ椅子に座る。
レーナとリーアは身長が届かなかったので俺が座らせてあげた。
2人を見たマスターが俺にこんなことを聞いてきた。
「お客さん、念のため聞きますけど……この2人は12歳以下ではないですよね?」
……予想はしていたが、やはりその質問が来たか。
【偽装】で身長が伸びているように見えているとはいえ、2人とも見た目は美少女だからな。
12歳以下に見られても仕方ないだろう。
実際にその通りなのだが。
俺は否定の言葉を発しようとした瞬間、レーナとリーアが思わずと言った感じでマスターに宣言していた。
「お兄さん!わたしの年齢は13歳だよ!?お店には入っても大丈夫なはず!」
「私は14歳です。というよりもそんなに幼い年齢の子がここに食べにくるわけがないでしょう?……ね、お兄ちゃん」
「「あ、はいそうですね」」
俺とマスターの声がシンクロする。
その様子を面白そうに眺めているルミア。
実に楽しそうな顔をしている。
マスターはコホンと1つ咳払いをして、改めて俺たちに向き直る。
「では、改めまして……いらっしゃいませ!今日はヤギの◯玉刺しがオススメですよ!活きのいいのがはいってます!……あ、当店はワンドリンクオーダー制なので、先に飲み物の注文をお願いします」
そう言って片手を動かすマスター。
その動きがやらしく見えたのは俺の心が汚れているからだろうか?
「旭お兄ちゃん、わたしクランベリージュース!」
「お兄ちゃん、私はグレープフルーツジュース!」
レーナとリーアはそう言って俺に飲みたいものを教えてくれる。
未成年なので、お酒は禁止してある。
飲酒は二十歳になってから。
「旭さん、私はビールでお願いします」
ルミアはビールを頼むようだ。
俺はマスターに3人の飲み物のオーダーする。
……俺?俺は初めはハイボールと決めているので、ハイボールを注文しましたとも。
「ねぇねぇ、旭お兄ちゃん。珍しいメニューがたくさんあるけど……どれ食べる!?」
レーナが目をキラキラさせて俺に訪ねてきた。
どうやらどれも美味しそうに見えているらしい。
確かにメニューを見ているだけでも興味を惹かれるものが沢山ある。
「これだけあると悩むなぁ……。マスター、オススメはなんですか?」
「そうですねぇ……やっぱり[虫の盛り合わせ]ですかね。いろんな虫の食べ比べができるのでオススメですよ〜」
ほほう……虫の盛り合わせですか。
半分くらい食べられるかどうか不安がよぎっているが、オススメとあれば是非食してみなければ!
3人を見ると俺と同じ考えだったらしく、やけにキラキラした目で頷いていた。
「では、その虫の盛り合わせを4人分お願いします。後は……さっき言っていた[ヤギの◯玉刺し]も4人分お願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
そう言ってマスターは店内の女性店員に色々と指示を出し始めた。
ルミアが興味深そうにテーブルの上のあるものを見ている。
そういえば、ルミアは男嫌いだったが……マスターに対しては普通に接していたな。
そんなルミアはマスターにテーブルに置いてあるものについて質問していた。
「マスター、これは一体なんですか?中に蛇が入っているみたいですが……」
「お姉さん、それはハブ酒ですよ。値段は左上の……あそこに」
マスターの言葉を受けて、俺とルミアが左上を見る。
そこには[ハブ酒¥950]と書かれていた。
「なるほど、ハブという蛇をお酒に漬けたのですね」
「そうなんですよ〜。オススメの飲み方はショットですが……どうします?」
「どんな味かどうか気になりますね……。旭さんも一緒にどうですか?」
「ショットは飲んだことないんだけど……いけるかな?」
「お兄さん、このお酒はかなり飲みやすくなっていますよ〜。ぜひぜひ」
マスターは俺のつぶやきに反応してくれた。
飲みやすいのか……せっかくきたんだし、頼まないと損だよね?
「じゃあ、俺も飲もうかな。マスター、ハブ酒も2つください」
「まいどっ!」
そう言えば……とマスターが俺に話しかけてくる。
「お客さん、良かったら捌く前のヤギの◯玉見ます?今日のは活きが良くてかなり大きいんですよ〜」
え!?それも見せてくれるの!?
勿論見てみたい。
俺が是非とも見たいと言おうとした時……。
「捌く前のヤギの◯玉!?見たい見たい!旭お兄ちゃんも気になるよね!?」
「お兄ちゃん、私も見たい!こっちの世界のヤギの◯玉ってどれくらい大きいのかな……!」
ウチの両天使がマスターに向かって◯玉が見たいと大声で話していた。
……ちょっ!?
女の子が大きな声で◯玉◯玉言わないの!!
マスターの他に男の客がいないとはいえども……それはどうなの!?
俺がなんとも言えない表情で2人の頭を撫でていると、マスターが苦笑しながら話しかけてきた。
「お客さん……。お客さんの妹さん達は……こちら側ですね!」
マスターめちゃくちゃいい笑顔でサムズアップ。
それに笑顔でサムズアップを返すレーナとリーアの2人。
ごめんなさい 、マスター。
その娘達は妹じゃなくて嫁なんです。
そんな事は地球では口が裂けても言えないので、俺もサムズアップをしておく。
「では、妹さん達の強い希望もありましたし……こちらをご覧ください!これが……ヤギの◯玉です!」
マスターが捌く前の◯玉を皿の上に乗せて見せてくれた。
その光景に俺のヒロインズは……。
「「「お……大きい……」」」
3人とも色っぽい目でそれを眺めていた。
確かヤギには滋養強壮の効果があった気がする……。
今夜は寝落ちする事は出来なくなりそうだ。
搾り取られるという意味合いで。
そんなことを話していたら、最初に注文していた飲み物が届いた。
俺は3人にコップを持つように促し、乾杯の音頭をとる。
「じゃあ、[ROY]の初の飲み会と珍獣屋にきたことを祝して……乾杯!!!」
「「「乾杯!!!」」」
グラスを高く掲げて乾杯する。
他のお客さんもいるのでグラスをぶつけることはしない。。
そんな俺達をマスターはヤギの◯玉を捌きながら微笑まそうに見ていた。
ーーーー後編に続く。
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