第44話 旭とヒロインの訓練-リーア編-
レーナが予想以上に早くスキルを習得したので、8日目からはリーアの訓練を前倒しすることにした。
……え?
レーナに対してのご褒美はどうなったかって?
……そりゃもうすごかったですよ。
何がすごいって俺を久し振りに独占できることによるレーナの積極性よ。
【色魔】を使っていなかったら命が枯れていたかもしれない……そんな感じ。
ちなみにレーナはスキル【サキュバス】を獲得しました。
今後が怖い。
そんなことは横に置いておいて、リーアの訓練だ。
レーナと同じで明朝に決闘場の中央に俺とリーアは立っている。
リーアの訓練もレーナと同じで【詠唱省略】の獲得である。
【叡智のサポート】の効果範囲をリーアと俺に再設定する。
「さて、お兄ちゃん。レーナと同じようにスキルを獲得したらご褒美がほしいんだけど……いい?」
リーアが最初に言った言葉は、レーナと同じご褒美がほしいと言うものだった。
……おそらくレーナが話したのだろう。
別に困ることでもないので了承する。
「あぁ、それなら構わないぞ?ただし、俺にできる範囲でな?」
俺の言葉を聞いたリーアは蠱惑的な表情を浮かべて微笑んだ。
……あっ、これはレーナと同じパターンだな?
「ふふ……それならよかった。ちゃーんと音声録音させてもらったからね?」
手口までレーナと同じか。
仲がいいのはいいことだ。
まぁ、そんなことしなくても約束を破るつもりはないんだが。
「じゃあ、訓練を始めようか。訓練内容はレーナの時と同じ。俺が展開する強化版【聖域】目掛けて全力の魔法を放ってもらう。リーアは前衛だから近接戦闘も含めて訓練しようか」
「わかったわ、お兄ちゃん。お兄ちゃんからは攻撃してこないってことでいいんだよね?」
「そうだな。今回の訓練はリーアが【詠唱省略】を獲得するのが目的だ。実践的な訓練はスキルを獲得してからだな」
俺はリーアと訓練内容について最終確認を行う。
リーアは俺に対して全力の魔法を使うことを躊躇う様子は見られない。
これなら叡智さんの煽りがなくても問題はなさそうだな。
そう考えていたときのことだった。
「……そういえば、レーナはたったの5日で【詠唱省略】を獲得したのよね……。それでお兄ちゃんを1日独占できるご褒美をもらった……。私なんてまだ一回もお兄ちゃんを独占したことがないのに……羨ましい……。レーナと同じ条件でご褒美をもらってもそれは二番煎じ……。それじゃ意味がないわ……。お姉ちゃんとして威厳を保つためにもレーナよりも早い期間で習得しないと……」
……あれぇ?いつの間にか【嫉妬】が発動しているぞ?
それに加えてごく自然に【狂愛】も同時発動している。
2つのスキルを意識的に発動させるとは……。
リーアはスキルの使い方が上手いのかもしれない。
ーーーー[リーアの敏捷値上昇。旭、早めに【聖域】を展開しないと後悔するかもしれませんよ?]
俺は叡智さんの言葉に急いで強化版の【聖域】を展開する。
そうだった、訓練はもう開始されていたんだ。
のんびりしていたらリーアからの攻撃をまともに喰らってしまう。
まぁ、喰らったところでダメージがあるかと言われると……ないと思うんだが。
「私のご褒美のため、そしてお姉ちゃんの威厳を保つため……。全力で行くからね、お兄ちゃん!ーーーー我が望むは複数の敵を圧倒する力……【魔力分身】!」
リーアは【魔力分身】を使用して、7人に分身する。
前回使用した時は5人だった。着実にレベルアップしている。
そしてレーナと同様に最初の訓練の時点で呪文の詠唱を幾らか省略できているようだ。
俺はその事実に若干嬉しくなりながら、リーアに告げる。
「リーアの重い愛も全て受け止めてやるさ!全力でかかってこい!」
「「「「「「「お兄ちゃん、覚悟!!!」」」」」」」
……いや、覚悟て。
本気で殺しにきてないか?
いやいや、そんなことはないと信じよう。
7人のリーアのうち5人が俺の方に向かってくる。
「「「「「我は目の前の敵を消滅するもの也……【吸生の死剣】!」」」」」
その両手には闇の剣が握られていた。
ーーーー[ほう……。禁忌闇魔法の【吸生の死剣】ですか。リーアは【詠唱省略】を思った以上に早く習得できそうですね]
叡智さんがのんびりとした声でリーアの行動を分析している。
攻撃を受ける俺としてはたまったものではないが。
四方八方からリーアが【聖域】に斬りかかってくる。
ダメージを受けることはないが……なかなかの迫力だ。
【吸生の死剣】と言うくらいだから、1発でも喰らえば瀕死になるんじゃないか?
「「「「「ハァッ!……セェイ!!!ヤァァァァァッ!!!!」」」」」
リーアは光の失った瞳をこちらに向けながら全力で斬りかかってくる。
ちなみにリーアの服装はいつぞやの時に買った[童貞を殺す服]だ。
なぜ今着ているのかはわからない。
リーアは縦横無尽に動きながら攻撃してくる。
……と言うことは……だ。
当然スカートは翻り、リーアのつけている下着がモロに見えるという状況になる。
……それも計算に入れて攻撃しているのだとしたらなかなかに策士だろう。
「「「「「ふふふ……お兄ちゃん、どこを見ているの?今は訓練に集中する時であって、私のパンツを凝視している暇はないよ……?」」」」」
リーアはそう言いつつ更に動きを激しくする。
やっぱり計算した上での服装だったか。
……クッ!リーアのやけに大人びた黒い下着が5人分見えて集中できない!
まぁ、【聖域】は展開したら集中力関係ないから、俺を喜ばせるだけで意味はないんだが。
そんなことを考えていたら、俺に向かってこなかった2人のリーアが叫び始めた。
「「前衛隊は空中へ退避!!次は私達が攻撃を実行するわ!」」
そう言って俺に切り掛かってきていた5人が【聖域】の上空に飛び、そのまま空中で停滞した。
あぁ……リーアの魅力的な紐パンが遠ざかっていく……ってそうじゃなくて。
どうやら魔力を足に集中して空中に停滞しているようだ。
そんな技法もあったのか……今度使ってみようかな。
「「魔法の転移先を【吸生の死剣】に指定。ーーーー我が望むは何もかも飲み込む闇……【深淵への誘い】!!」」
2人のリーアが唱えた魔法が俺の真上で作動する。
正確には囲むように空中で停滞して剣を下に向けていたリーア達から放たれた。
深淵という名が付いていたから闇系の魔法なのだろう。
俺はリーアが放った闇に飲み込まれる。
【聖域】は……うん、まだ大丈夫みたいだ。
ーーーー[【吸生の死剣】の次は禁忌闇魔法の【深淵への誘い】ですか。旭の【聖域】でなければ、もうこの世にいないところですね]
叡智さんがなかなかに怖いことを呟いてらっしゃる。
レーナといいリーアといい……なんでこんなにも即死性の高い魔法を使いたがるのか……。
今度時間あった時に、他の敵に対しては手加減するように強く説得したほうがいいのかもしれない。
「「「「「「「お兄ちゃん、まだ大丈夫なんでしょ……?どんどんいくからね!!」」」」」」」
少し離れたところと、上空からリーアの声が響き渡る。
リーアの猛攻はまだまだ続きそうだ。
▼
はい、ということで結論です。
もっと訓練の様子を詳しく描写しろって……?
いや、似たような感じだから仕方ない。
そんなことよりもリーアの訓練結果である。
リーアはなんとレーナより2日も早く3日で【詠唱省略】のスキルを獲得した。
このスキルは獲得しづらいと思ったんだが……俺の気のせいだったのだろうか。
ーーーー[疑問を感知。通常なら旭の考える通りだと思います。リーアはレーナの姉としての威厳を保ちたいが故の結果でしょう。通常なら1ヶ月でも足りないくらいだと思われます。旭の仲間になるヒロインは本当に規格外ですね……今更ですけど]
叡智さんから呆れたような返事が頭の中に響く。
……最近の叡智さんは感情豊かになってきていないか?
自我があるから当然なのかもしれないが……。
「さて……お兄ちゃん。私も習得できたわけだけど……ご褒美はちゃんともらえるんだよね?」
リーアは若干涙目の上目遣いで俺に訪ねてくる。
確かに予想以上に早い日にちでスキルを習得したのだから、レーナの時よりもご褒美を豪華にしたほうがいいだろうか?
あまり贔屓しすぎるとレーナとルミアが嫉妬してしまうだろうなぁ……。
そう考えた俺はリーアに返事をする。
「ご褒美はちゃんとあげるよ。俺の予想以上に頑張ってくれたし、なんでも言ってくれ」
「本当ッ!?じゃあじゃあ……!レーナ以上に愛して欲しいッ!レーナと同じ期間でいいけど、今まで以上に愛して……欲しい……で……す。……ぅぅ……恥ずかしいぃ……」
最後の方は顔を真っ赤にして小声になっていくリーア。
……なにこの可愛い生き物。
そんな普段と違う反応を見せられたら……たまらなく愛おしくなるじゃないか。
俺はそんなリーアを抱き上げ、耳元で囁やく。
「それなら……これから部屋に行こうか。頑張ったから明日とは言わず今から愛してあげるよ」
ボンッッッッ!!!という音が聞こえそうなくらいに顔を真っ赤にしたリーアは、コクコクと無言で首を縦に振っている。
恥ずかしさが上限突破したみたいだ。
そんなリーアの頭を撫でながら、家に向かっていく。
それを見ていたレーナとルミアは……。
「リーアは今から愛してもらえるんだ……いいなぁ。でも、かなり頑張っていたみたいだし……。うん!たまにはお姉ちゃんに譲るのも大事だよね!」
「レーナさんは達観していますね……って違いますね。既に自分は愛されているからこその余裕でしょうか?……私もご褒美をもらえるように頑張らないといけません……」
微笑ましい目でリーアを眺めているレーナと、自分もご褒美を貰いたいと燃えるルミア。
……うん、次はルミアの番だよな。
1人だけ仲間外れなのは可哀想だし。
訓練の内容を考えないと。
しかし、今は俺の腕の中で真っ赤な顔のまま蹲っているリーアにあげるご褒美に集中しなければ。
いつも襲われるパターンだったし、今回はこちらから攻めてみよう。
どんな反応をするのか……今から楽しみで仕方ない。
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