第41話 旭のヒロインは依頼報告を行う

 四神達とお昼のカレーを食べた後、俺達はウダルの冒険者ギルドに戻ってきた。

 街を出る大義名分の為にレーナ達が受けた依頼の達成報告を行う為だ。


 ルミアを先頭としてレーナとリーアの3人は受付カウンターに向かって歩いていく。

 ……俺?付いて行こうとしたら座って待っててくれと言われたので、1人寂しくお酒を飲んでいますがなにか?


「討伐依頼の報告に来ました。確認をお願いしたいのですが」


「は、はいっ!では、御三方の冒険者証を確認させていただきます!」


 ルミアに対して緊張していると思われる受付のお姉さんに冒険者証を渡すレーナ達。

 どうやら魔物を討伐したら自動的に冒険者証へと記録されるらしい。

 ……便利だよなぁ。


 受付のお姉さんは3人の冒険者証を数度見て、レーナ達に返却する。


「ありがとうございました。バーサルベア10体の討伐依頼達成です。こちらは報酬の金貨5枚となります。……討伐したバーサルベアはお持ちですか?」


「はい、バーサルベアの死体は旭さんに持ってもらっています。今呼んできますね」


 そう言ってルミアは俺の方に駆け寄ってくる。

 ……そういえば、依頼の中に綺麗な状態で持ち帰ったら素材の買取も行うって書いてあったな。

 というか、それなら俺は1人寂しく待っている必要なかったんじゃないか?


「旭さん、すみませんが一緒に来てもらえますか……ってお酒飲みすぎでは?僅か数十分で三杯なんて……大丈夫ですか?」


「……1人で寂しく座って待っているなら飲むしかないじゃないか。……とりあえず依頼の報告は聞いていた。バーサルベアの提供だろ?今行くから待って……っとと」


 俺は受付に行こうと椅子から立ち上がったが、フラついてしまった。

 流石に10分弱で清酒ロックを三杯は飲みすぎだったか。

 フラつきはあるが、歩けないほどではない。

 そう思って受付に向かおうとしたのだが……。


 ーーーーむにゅん。


 俺の頭に柔らかな感触が伝わる。

 何事かと思ったが、どうやらルミアに抱きとめられたらしい。

 俺の顔に当たるルミアの豊満な胸……そうか……ここが……天国……。


「もう……旭さん。そんなにフラついているのに無理をしてはダメですよ?……宿に戻ったらたくさん甘えさせてあげますから」


「「あーーーーっ!!それを使うのは反則だーーっ!!」」


 ルミアに抱かれている俺を見たレーナとリーアが、慌てて俺の元へと掛けてくる。


「ルミアお姉さん!!抜け駆けは禁止だってあれほど言ったでしょー!!」


「お兄ちゃんも冒険者ギルドこんな場所でデレデレしないの!!……後で巨乳よりもちっぱいの方がいいって分からせないと……!」


 いやいや、俺はちっぱいも好きですよ?

 確かにこのふくよかな感触も捨てがたいですけど。

 ……うん、相当酔いが回っているらしい。


「あ、あのー……。素材の買取の件は……どうしたら……」

 

 受付ではお姉さんが困惑した表情で、俺達のやり取りを眺めていた。

 うん、もうちょっと待っててください。

 今の2人の目からは光が消えているので。


  ▼


 ーーーーそして、なんとか依頼の報告と素材の買取を終えた俺達は宿に向かっていた。


「……まったくもう!ルミアお姉さん!いくらなんでもあれは酷いよっ!わたし達じゃあんな風にパパを癒せないじゃないっ!」


「やっぱり……大きくないとダメなの……?ルミアさん、胸を大きくする方法を教えて!お兄ちゃんを独り占めするのは良くないと思うの!」


 レーナとリーアは俺の両肩に乗りながらまだぷりぷり怒っていた。

 2人を肩に乗せて歩くのは別に酔っていても問題ないんだが……。

 2人揃って抱きついてくるのは今は遠慮してほしい。

 前が見えないんだよ……顔に当たる柔らかな感触は幸せだけれども。


「あのままだと倒れそうだったのは事実ですから。たまには私もいい思いをしたいのですよ。胸を大きくする方法ですか?……そうですねぇ……旭さんに揉んでもらいましょう」


「「それだっっ!!」」


「いや、揉むのはいいけど明日からな?今日は飲みすぎたから流石に無理……」


「「それは数分であんなに飲んだパパお兄ちゃんが悪い」」


「……えぇ。寂しかったんだから仕方ないじゃないか……」


 俺の言葉に即答するレーナとリーア。

 いや、確かに一気に飲みすぎたのは俺が悪いんだけど……。

 ルミアはそんな俺を苦笑しながら慰めてくれている。

 ただ、その目は私も期待していいですよねって言う目だよね?

 ……わかりました。今夜も頑張ります。


「旭さん、宿に着きましたよ。後もう少しですので頑張って」


「あ……あぁ。ありがとう。」


 そう言いながら俺達は宿に向かった。


  ▼


 ーーーー翌日の朝。


「あー……よく寝たはずなのになんか疲れた……」


 俺は食堂で項垂れていた。

 昨日あの後何があったかって?

 レーナとリーアの胸を大きくする為に2人の胸を揉んだりとか、ルミアが仲間外れは寂しい!と襲いかかってきたとか……まぁ色々あったわけですよ。

 2人だったサキュバスが3人に増えた……そんな感じです。


「旭さん、昨日はお疲れ様でした。……これに懲りたら数分でお酒をたくさん飲むなんて馬鹿な真似はやめてくださいね?」


「……善処しよう」


 ルミアからお小言をもらった俺は、少し躊躇ってから答える。

 ……寂しくなったらまたやりそうな気がしたから。


「そんなことよりパパ。今日はどうするの?」


 レーナが俺に対して質問してくる。

 丹奈が出立したとされる日から3日……。

 ウダルまでの道のりは5日ほどであるから、今日から訓練をしないと3人の強化は間に合わないだろう。

 俺は3人に向かって今後の予定を説明する。


「丹奈達がダスクを出たとされる日から3日が経った。時間がないから、今日明日はレーナ達の訓練をしようと思う」


 俺の言葉に3人は神妙そうな表情で頷いた。

 時間がないのは3人ともわかっていたのだろう。


「お兄ちゃん。訓練するのはいいんだけど、どこでするの?」


「自称イケメン君と戦った決闘場を使おうと思っている。新たに使役した召喚獣の結界の強さも確認したいしな。だから今から冒険者ギルドに向かおうと思うんだけど……異論はあるか?」


 俺の質問に3人は首を横に振っている。

 3人の反応を見てから俺は告げる。


「じゃあ、冒険者ギルドに行こうか。一応ギルドマスターに決闘場の使用許可を得ないといけないからな」


「旭さんなら許可をもらわなくても何も文句は言われないと思いますが……」


 ルミアが思案顔で何やら呟いているが……無断で使用するのは日本人としては心苦しい。


 そして冒険者ギルドに着いてギルドマスターに決闘場を使用したい旨を説明したところ……。


「なんで1日で召喚獣が増えているんだ!?しかも決闘場を使用したい?使用するのはいいが……まだ地面とかえぐれていて訓練するに最適……とは言えないぞ?それでもいいなら構わないが……」


 俺の召喚獣が増えたことには驚いていたが、決闘場を使用することについては特に問題はないようだ。

 足場が悪いみたいだが……それは俺達の自業自得だし、今は


「足場が悪いのはむしろ好都合だ。リーアとルミアの敏捷を強化するのにも役に立つからな」


「…………そうか。旭君達がそれでいいなら何もいうまい。ただ……もうあれ以上壊してくれるなよ?あれを修復するのにもお金と時間がかかるからな……」


「それについては大丈夫ではないかと。旭さんは神霊魔法級の四神を4体従えました。耐久の心配はいりません」


 ルミアの言葉に?マークを浮かべているギルドマスター。

 神霊魔法は一般には伝わっていないからピンとこないのだろう。


「なんならギルドマスターもみにくるか?別にみられて困るものではないし」


「いいのか?では、旭君の強さを確認させてもらうことにしよう。その四神?という召喚獣も気になるしな」


 俺の言葉に乗っかってくるギルドマスター。

 少し嬉しそうなのはなぜだろうか。

 ウダルのギルドマスターも日々の職務に疲れているのだろうか。

 四神達と俺の力を見て動揺しなければいいけど。


「パパ、ギルドマスターからの許可ももらったことだし、早く訓練しに行こっ!残り時間は少ないんだから!」


「レーナの言う通りだよ、お兄ちゃん。インターネットで見た◯と◯神の部屋でも使えるなら別だけど……使えないでしょ?なら時間は有限に使わなくちゃ!」


 リーアが某有名漫画の部屋について語ってくるが……いつの間に読んでいたのだろうか。

 それにしても◯と◯神の部屋か……劣化版でも使えたら心置きなく訓練ができるんだけどなぁ。


 ーーーー[疑問を感知。外界の1日を365日にすることはできませんが、1日を1ヶ月にすることはできます。神霊魔法【遅延空間】を使えば……ですが。どうしますか?]


 俺の心の声に叡智さんが反応する。

 ……というかあったよ、劣化版。

 1ヶ月でも正直ありがたい。

 レーナの【詠唱省略】は2日で習得できるとは思えないからな……。

 俺はレーナとリーア、ルミアの3人に叡智さんから得た情報を共有する。


「1日を365日にはできないみたいだけど、1日を1ヶ月にすることはできるらしいぞ。どうする?」


 俺の言葉に3人は呆れたような表情を浮かべた。


「パパ……もうパパにできないことはないんじゃないかと思い始めたよ……」


「私は適当に言っただけなんだけど……まさか劣化版◯と◯神の部屋があるなんて……。それを知っている【叡智のサポート】も十分規格外だよね……」


「旭さんについて驚くことはもうないと思っていましたが……まだまだだったみたいですね……」


 いや、そんなことを言われても……。

 俺自身びっくりしているんだから。


 ギルドマスターはそんな俺たちを苦笑しながら眺めていたが、決闘場に行くように促してきた。


「ほらほら、旭君がすごいのは今に始まった事ではないだろう?時間も惜しいから早く決闘場に行こうじゃないか」


「……それもそうですね。旭さん、行きましょう」


 ルミアの発言に従って俺たちは冒険者ギルドの外にある決闘場に向かう。

 そんな様子を見ていた他の冒険者達は……。


「ギルドマスターが直々に見に行くとは……」


「流石は[ロードオブヤンデレ]だな。あそこまでの重い愛を受け止めている旭はすげぇよ……」


「あんたらもそれくらいの器量があればモテるだろうに……」


「「「うるさいわ!!!」」」


 うん、ダスクと違って雰囲気が悪くない。

 まぁ、ギルドマスターの後ろ盾があるからかもしれないけど。


 そんなことを考えながら俺は決闘場に向かった。

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