第8話 ダマスクの企みと……

残酷な描写があります。

苦手な方は注意してください。


ーーーー第三者視点ーーーー

旭達が温泉宿に向かった頃と同じ時間帯。

とある屋敷では一人の男が1人にやけた顔をしていた。


「ふ、ふふふ……。明日だ。明日ようやく逃げられたレーナを取り戻すことができる……!」


そう呟いた男こそが旭達が受ける依頼を出した人物であり、レーナの父親からレーナを買い取ったダマスクである。

ダマスクはレーナに逃げられた時、魔法を封じていなかったことを激しく後悔していた。

レーナの父親はレーナが魔法を使えることを知らなかったため、魔法に関する封具は着用させていなかった。

そのことが災いして、レーナにまんまと逃げられたのである。


ダマスクはその後、ダスクの街中を下っ端を使って調べたが、姿を見つけることはできなかった。

その時である。

響谷旭という男と一緒に冒険者になったという情報を聞いたのは。

ダマスクはすぐに冒険者ギルドに駆け込み、旭からレーナを奪い取るための布石として魔物の索敵且つ討伐の依頼を叩きつけた。

冒険者ギルドもその依頼を請け負い、翌日旭達がその依頼を受けることを聞いた。

……ギルド側が疑問に思って組織の壊滅を狙っていたことは全く知らずに。


「……まさか逃げられるとは思わなかった。捉えたらまずは罰として俺がその未熟な体を散々に陵辱してやろう……!貴族どもには達磨の状態にしてから高値で売り払えば、今回の件も帳消しにできよう」


ダマスクはレーナを買い取った時から、その青い果実を自分で楽しもうと決めていた。

父親から高値で買い取ったのも、幼いエルフに自分の欲望を存分に叩き込めると思って興奮したからである。

逃げられたことでそのどす黒い欲望はさらに増大していた。


「旭とやらはギルドマスターのお墨付きらしいが……たかがFランクの冒険者にどうこうはできまい。あぁ、今から楽しみだ。あの幼いエルフが俺に対してする表情が今から楽しみでならない……!」


ダマスクは依頼した森に部下に命令して強大な魔物を召喚。それを使って深夜遅くに旭を始末、その後レーナを奪い返そうとしていた。

魔物のレベルは冒険者のBランク級の強さを予定している。

たかがFランクの冒険者ごときにとダマスクは思っていたが、ギルドマスターのお墨付きであるということと嫌な予感が脳裏に走ったからである。

……実際はそのランクでは旭の妨害にすらならないのだが、それを知る者はいない。

冒険者ギルド側も情報を渋っているので、ダマスクは直感に頼るしかない。


「まぁ、ありえないことだが……魔物を倒せたとしても……だ。俺の下っ端達は全員ヤクザ並みの連中ばかりだ。一般人が恐れずに抵抗することはできないだろう」


ダマスクは冒険者ギルドで起こった出来事を知らなかった。

旭がブチ切れて、男冒険者達を1つの魔法で戦意を失わせた出来事。

その翌日に全知全能の神を従わせた出来事。

ダマスクの書類上には上がってきていたが、レーナを犯すことしか考えていないダマスクはそんな書類に目を通していなかった。

そのことが自らの破滅につながることになるとは知らずに……。


「…………」


そんなダマスクを1人の少女が黙ってじっと見ていた。

その少女は褐色の肌に白い……いや、銀髪の長い髪を前におろしている。

耳は横に長い……ダークエルフと呼ばれる存在である。

服装はボロい布切れを羽織っているだけで、大事な部分がチラチラ見えている。

肌も傷だらけで見るからに痛々しい。

首には奴隷用の首輪。手足には枷がつけられており、魔法も封じられている。


「……あ?なに許可なく俺のことを見ていやがる!」


視線に気づいたダマスクが、苛立ちを隠しもせずにその少女の痩せこけた頬を叩く。


「…………グッ」


「お前は明日手に入れるレーナの代わりなんだよ。それ以上でもそれ以下でもねぇんだ。ったく、幼いダークエルフだっていうから購入したっていうのに……。初潮来てたら興奮しないんだよ!……ちっ、思い出したらムカついて来た。お前が!11歳で!初潮を迎えていなかったらこの性欲の捌け口にできたっていうのによ!!」


ダマスクは怒鳴りながら少女の体を殴っていく。


「ぐっ……がはっ!?」


痛々しい青アザが少女の体に刻まれていく。

ダークエルフの少女は体力だけはあるらしく、気絶をすることすらも許されない。


ダマスクは初潮を迎えたロリは性欲の対象外となる、度を超えた鬼畜だった。

それを理不尽と思いながらもダークエルフの少女は、ダマスクの暴力を唇を噛んで耐える。


「……はぁ、はぁ。お前は俺のストレス解消用の奴隷なんだ。生かされているだけありがたいと思え。俺はそろそろ寝る。この部屋の後片付けをしておけ。明日起きた時に片付いていなかったら……わかるな?」


ダークエルフの少女は涙目で何度も首を縦に振る。

片付いていなかった時に受ける暴力を今からイメージしてしまったのだろう。


そんなダークエルフの少女を憎しげに睨みながら、ダマスクは自身の部屋に戻っていった。


「響谷……旭……様」


ダークエルフの少女は旭の名前を呟く。

少女はダマスクが見落としていた書類に目を通す。

全知全能の神を従えたことなどを知った少女はより涙ぐみながら呟く。


「私も……私も助けてほしい……。こんな環境に1日も長く居たくない……」


少女は旭が自身も救ってくれるのではないかと小さな希望を見出していた。

自分よりも小さなエルフの女の子は、旭に助けられて新しい洋服や武器を買ってもらったことも書類に記載されている。

何よりも旭に娘のように大切にされて、実の父親と暮らしている時よりも楽しそうな様子であることが、書類の情報からも簡単に把握できた。

今の自分とは真逆の女の子に対して、少女は嫉妬心を燃やす。


「なんで……なんで私ばかりこんなに辛い目にあわないといけないの……?あの女の子は私と違って幸せそうなのに……」


嫉妬などの強い想いはより強力な魔力を生み出す。

魔法を封じられていなかったら、レーナ同様に抜け出すこともできただろう。

しかし、一度エルフの幼女に魔法を使って逃げられているダマスクは、二度と同じ過ちは犯さまいと幾重にも拘束具を装着した。

それによって生み出された魔力は少女の奥底に留まり続ける。

爆発したくても爆発することすらも許されない膨大な魔力は、少女の嫉妬心を煽る。


「明日……旭……様がダマスクを倒した時に……私も救ってくれますように……」


少女は暗闇の中祈りを捧げる。

依頼を完遂し、願わくばダマスクから自信を救い出してくれることを。

この光の届かない闇の中から引き上げてくれることを。

そしてエルフの幼女と同等……いや、それ以上に自分を求めてくれることを。


そこまで考えた後、部屋の掃除をしていなかったことに気がついた少女は嫌々ながらも掃除を始める。

部屋の中は自身の血や、ダマスクが他の幼女奴隷を犯した際の青臭い汁やその他いろんな汁が飛び散っている。

少女は思わず目を逸らしたくなるのを必死に堪えて、掃除を始める。

ダマスクからは掃除道具などは渡されていないため、使えるのは自身の手と床に落ちているティッシュやタオルだけである。


「……オエッ。うぅ……臭い……吐き気がする……でもやらなきゃ……」


少女は文句を言いながらも、部屋の掃除を進める。


ーーーー結局掃除が終わったのは朝方になってからだった。

出かけるのはダマスクが起きてから1時間後。

もう出かけるまで時間がないので、少女は仮眠をとることさえも許されない。


「……今日全ての歯車が変わる…… どうか旭様が私を救ってくれますように……」


最後にもう一度祈りを捧げたダークエルフの少女の目には、もう何度目かわからない涙が浮かんでいた。

しかし、その瞳の奥には確信にも似た強い意志が存在している。

そのことをダマスクが知ることは……ない。


ーーーーそんな中旭達は……。


「パパ、今日こそはわたしの全部もらってもらうからね!」


「いや、明日は依頼当日なんだから変なことしないで寝ようぜ……」


「いーやーでーすー!!なんか嫌な予感がするから今日処女を卒業して、本当の大人になるのー!」


「いや、どこでそんな言葉を覚えてきたんだよ……。ちょっ、ま、まて……!それ以上はシャレにならな……アッーーーーーー!」


……防音設備が完備された布団の中でレーナに襲われている旭がいた。

口では否定の言葉を出しつつ、内心喜んでいる旭を見たレーナは「我が意を得たり!」とばかりに襲いかかる。


レーナは依頼を受けたら新たな女が旭の前に現れるかもしれないという事態を直感していた。

そうして部屋の中では幼女の蕩けた声と男の悲鳴にも似た嬌声が響き渡っているが、防音のため外には聞こえない。


ダークエルフの少女が掃除をしている中、イチャイチャしていた旭達だった。


各々の思いが交差する中、ついに依頼当日の朝がやってくる。

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