第5話 旭とレーナは身支度を整える
ーーーー皆さまおはようございます。
幼女エルフに抱きつかれて、理性と欲望の戦いに投じていた旭です。
あの後朝になる2時間前まで奮闘していたので、あまり眠れていません。
そんなことを誰に言うわけでもなく、心でぼやいていたら唇に柔らかな感触が伝わってきた。
ーーーーん?
この柔らかな感触は……?
って、これキスじゃないか!?
しかも頬にじゃなくて唇に直接。
舌ははいってきてはいないが、啄ばむようなキスをされている。
この状況でキスするのはレーナしかいないわけで……、でもレーナは娘のようなもので!?
そんな俺の戸惑う顔が見えたのか、レーナは唇を離して俺に挨拶をしてくる。
「……プハッ。おはよう、パパ」
「あぁ、おはようーーーーって何をしているんだ!?」
「え?なにって……おはようのチュー」
首をコテンと倒して何かいけなかったのかと疑問に感じている俺の娘。
「いやいや、昨日好きになるかどうかは時間欲しいって言わなかった?」
俺はわずかばかりに残った理性で、レーナに語りかける。
本心?そんなもん飛び上がるくらいに嬉しいに決まっているでしょうよ!
こんな可愛い女の子が!朝起きて寝起きにキス!
嬉しくないと思うか?いいや、ありえないね!
俺のそんな内心を理解しているからかレーナはこう答えた。
「んぅ?パパの寝顔が思ったよりも可愛くて、好きな気持ちが溢れてきたからキスしたの。嬉しくなかった?」
「いや嬉しかったです。ありがとうございます」
気づいたら俺は本心を伝えていた。
本心を聞いたレーナは満面の笑みで頷いている。
ほら、やっぱりパパも私のことが好きなんだ。
そう言わんばかりの満面の笑みである。
昨日あんなことを言ってしまった手前、恥ずかしい。あまりの恥ずかしさに穴があったら入りたいくらいだ。
このままではパパの威厳が損なわれる(元からないのかもしれないが)ことを危惧した俺は、話題を変えるべく今日の予定を話す。
「そ、それは置いておいて。今日は冒険に出るための買い物に行くから。そのついでに冒険者として依頼を確認したいとも思っている。レーナは今日やりたいことある?」
「慌てて話題を変えるパパも可愛い……。んーっとね、わたしは特に問題ないよ。買い物は大事だものね」
「じゃあ、ご飯食べたら出かけようか」
「うん!」
話題をうまく逸らすことに成功?した俺は、朝ごはんを食べるためにレーナと1階に向かう。
昨日は軽食だけだったので、どんな朝ご飯があるか楽しみである。
おにぎりでも美味しかったのだから、かなり美味しいのだろう。
期待に胸を膨らませて、食堂に向かって行った。
▼
結論からいうと、朝ごはんも大変美味だった。
朝ごはんはビュッフェ形式で、洋食和食中華なんでもあった
俺は朝からたくさん食べられる人間ではないため、控えめに食べていたのだが、レーナはお腹が膨らむほど食べていた。
「うぅ……、食べ過ぎちゃったよぅ……」
「レーナはたくさん食べていた《ルビを入力…》からなぁ。後で回復魔法をかけてあげるけど、今後は食べ過ぎに注意してね」
「はぁい……」
後で回復魔法をかけることは確定だが、少し反省させるべきだろう。
レーナが恨めしい目で見つめてくるが、ここは心を鬼にするべきだろう。
その分買い物の時に甘えさせてあげよう。
――――だから、そんな目で見ないでくれ!
俺はまだ娘に嫌われたくないんだ!
レーナの視線に耐えつつ、出かけるための準備をするために部屋に戻った。
部屋に戻り、出かけるための着替えをしようとしたところで、気がついたことがある。
「レーナ、服はそれしかないの?」
「んぅ?拐われて着替えさせられてから、そのままだったからこれしかないなぁ」
レーナの服装はボロボロのワンピースみたいな服だった。
昨日は色々あって周りの視線を気にしてなかったが、これから冒険者としてやっていくのに、その服装はいけないだろう。
また昨日の奴らみたいに不埒な奴が現れるとも限らない。
となると、まずはレーナの服を買いに行かなくては。
そのままの姿でレーナを歩かせるわけにも行かないので、【無限収納】から俺の上着をレーナに着せる。
冬物の上着だが、寒そうな格好だからちょうどいいだろう。
「えへへ……。パパの匂いがする……」
「あんまりいい匂いじゃないだろうに。とにかく、服屋に行くぞ?」
「はーい」
レーナはそう言って手を繋いでくる。
迷子にならないようにするために必要なことなんだが、レーナの繋ぎ方はいわゆる恋人繋ぎというやつだった。
「レーナ、この繋ぎ方は違うんじゃないのか?」
「わたしはパパの娘でもあり彼女だからいーのー」
……まぁ、レーナが幸せそうだし、これくらいはいいか。
街に出て数分歩くと服飾屋が見えてきた。
異世界でも使えるスマホ様様である。
服飾屋についたレーナは、水を得た魚のように服を物色し始める。
俺は特に慌ててはいないため、レーナの様子を観察することにする。
レーナは真剣に服を選んでいる。
何着か自分の体に当てて、キープしながら選んでいるようだ。
俺はただ見ているだけだが、レーナが美少女であることもあって、いつまでも見ていられる気がする。
……あ、店員がレーナに服を勧めに行ったぞ。
レーナにピンクは似合わないと思うんだけどなぁ。
「お客様、 こちらのピンクのお洋服とかお似合いになると思いm「や」」
ほら、みたことか。
店員は肩を落としながらレーナから去って行く。
まぁ、一着は確実に売れるからそこまで気を落とさないでくれ。
「パパ、この服とこっちの服どっちがわたしに似合うと思う?」
そんなことを考えていたら、レーナが二着のワンピースを持ってきた。
この展開はラノベでもリアルでも体験しているぞ。
正しい方を選ばないと機嫌が悪くなるやつだ。
レーナが持ってきたのは緑のワンピースと、水色のワンピース。
緑の方は途中からキープしていたように思える。
水色の方は色合いが気に入ったのかな?
……俺としてはエルフのイメージもあって緑を推したいところだ。
金髪に緑のワンピース……似合うと思わないか?
そう思ったので、俺はレーナに緑のワンピースの方がいいことを告げる。
「俺としては、緑の方がいいかな?金髪と緑ってエルフって感じがするし、何より目に優しい」
「うーん……。森に近い色合いだったからキープしていたんだけど……」
おっと、これは失敗したか?しかし、レーナはこう続ける。
「でも、パパが言うようにエルフのイメージとしては緑の方がいいかも。わかった!これにする〜」
機嫌悪くならなかったーーーーmission completeだな。
ただ、一着だけでは洗い替えとかも厳しいだろう。
レーナが緑のワンピースを着て行くために、試着室に入ったのを見計らって別の服を買っておくことにした。
周りを見ていると、前の世界のネットで見たことがある〈童貞を殺す服〉がおいてあったのでそれを購入。
俺は童貞ではないが、露出が少ない服というのはレーナに似合う気がしたので、即決だった。
ついでに縞パンと白のパンツも購入しておくとしよう。
店員からの目が白い気もするが、元カノの前で下着を選んで購入したことがある俺からしたら、そんな視線は痛くもかゆくもない。
「パパ〜着替え終わったよ〜!どうどう?似合う?」
「おー!やっぱりレーナにはそのワンピースが似合うね!」
俺が素直にそう褒めると、レーナは身体をクネクネさせて喜んでいる。
やっぱり天使だわ、この子。
「次はパパの服ね!」
俺は別にいいかと思っていたのだが、レーナ曰く、
「なんか周りと比べて浮いてる気がする」
とのことなので、レーナに選んでもらうことにした。
俺は服に無頓着だから、選んでもらえるのはありがたい。
パートはスーツ着用だから良かったが、私服は全然持ってなかったしな。
「パパに似合いそうなのは……これ?でもなんか違う……」
レーナは自分の服を選ぶ時よりも真剣に服を探している。
俺はなんでもいいんだけど、そんなことを言える雰囲気じゃないな。
最終的に黒いポロシャツみたいな服と青いズボンになった。
ジーパンではないんだけど、デニム生地みたいなズボンだ。
ジーパンに近いというだけで履きやすくなるから不思議。
服飾屋での総額は金貨2枚と銀貨5枚になった。
約25000円か……。服ってこんなに高いのかね?
「えへへ……」
まぁ、レーナのこんなに可愛い顔が見れるのなら安いものか。
予算もまだ439枚もあるしな。
▼
服飾屋で服を購入した後は、武器屋に向かった。
俺は武器なしでもいいのだが、レーナから杖が欲しいと訴えがあったためである。
「そういえば、レーナの使える魔法に精霊魔法と光魔法、回復魔法があったけど……。やっぱり杖があった方が威力が上がったりするのか?」
「うーん……。杖がなくても呪文自体は出せるけど、威力はやっぱり下がるかなぁ」
「ふむ、やはりそうなのか……。じゃあ、武器屋で見るのは主にレーナ用の杖かなぁ」
「ーーーーというか、パパがおかしいんだからね?杖もなし、詠唱もなしであんな威力の魔法でないからね?」
レーナが何か言ってるけど、俺自身使い方が分からないんだから仕方ない。
とにかく、レーナの杖を探すことにする。
店の中にはさまざまな杖や武器が並んでいる。
ラノベみたいに鑑定できるようにならないかなぁとか考えていると……。
ーーーー[取得条件を満たしました。スキル【鑑定眼】を取得しますか?]
……なんか頭に聞こえてきたんですけど。
え?マジでラノベみたいに思うだけでスキル習得できるの?
イージー過ぎない?
一応レーナにも確認してみることにする。
「レーナ、スキル習得の時って頭の中に声が響くものなのか?」
「んぅ?確かにスキル獲得時は頭に言葉が聞こえてくるけど、滅多にスキルが手に入ることはないと思うんだけどなぁ……。……もしかしてスキル獲得したの!?」
「あぁ、なんか【鑑定眼】とか手に入った」
手に入ったスキルがスキルなので小声でレーナに伝える。
「パパ……やっぱりパパは色々とおかしいと思う……」
「ま、まぁまぁ。これでレーナに1番いい杖を買ってあげられると思えばいいじゃないか」
「むぅ、なんか納得しないけど……、わかった。パパ、いい杖を選んでね?」
俺はそう言って【鑑定眼】を発動させる。
ほとんどの杖にはスキルがついていないが、スキルがついている杖を二本見つけたので、レーナのところに持って行く。
「レーナ、この【MP自動回復】のスキルがついている杖と、【詠唱簡略化】のスキルがついている杖だったらどっちがいい?」
「うーん……。【MP回復】は欲しいけど、パパがいるから問題なさそうだし……。【詠唱簡略化】のほうにする!」
「俺がいるからっていうのはどういうことなんだ?」
「だって、パパは全魔法適正あるんでしょ?それなら【
なるほど。使ったことはないが今度試してみるか。
さてさて、お値段は……っと。
金貨10枚か……これは安いほうなのか?
よくわからないけど、必要経費だから問題ない。
「パパも何か買わないの?護身用の剣とか」
「そうだなぁ。偽装用に剣の1つでも買っておいたほうがいいのかな。じゃあ、この短剣にしよう」
そう言って手に取った剣は刃渡りの短い短剣だった。
【敏捷上昇】のスキルがついているので、敵の攻撃をかわしやすくなるだろう。
どっかのラノベに洞窟とかで振り回すなら、短剣の方がいいとか書いてあった気がしないでもないし。
剣と杖を持って、会計に向かう。
「いらっしゃい。剣と杖の両方で金貨20枚だよ」
受付のおっちゃんはドワーフだった。
これまたテンプレな展開で嬉しくなる。
「えぇ、それでお願いします」
「値切らないなんて今時の若いもんにしちゃ珍しいな。……よし、修理の際には俺のところにもってこい。言い値で修理してやるよ」
値切るのが面倒なだけだったのだが、なぜか気に入られてしまった。
まぁ、良いつながりを持てたと思えば上々だろう。
俺たちは武器の購入を終えた後、小道具などを買い足し、冒険者ギルドに向かった。
昼過ぎということもあり、人混みが多くなってきている。
俺はレーナを肩車して、街中を歩いて行く。
周りからの視線は親子をみるかのようなものに変わっていた。
……やはり、服装というのは大事なんだなと思った俺なのであった。
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