第4話 旭は幼女エルフの誘拐の一連の流れを把握する
レーナと一緒に家族風呂に入った後、俺たちは軽食を食べに1階に降りて来ていた。
え?お風呂の出来事を教えろって?
それができたら苦労はしないさ……。
1つ言えるとしたら、俺は理性と欲望の戦いになんとか勝ったということだけである。
レーナはひたすら無邪気だったが、獲物を狩るような目つきをしていたことも追記しておく。
さて、話を戻そう。
1階の食事処は時間が遅いからなのか、人はまばらだった。
食事処の人に受付で軽食が食べられる旨を聞いたことを説明し、席に着く。
「パパ、軽食?って何が出るんだろうね〜」
レーナは足をプラプラさせながらそう話しかけてくる。
足がつかないからなのだが、そんな仕草も可愛いからずるい。
「そうだなぁ……。時間も遅いし、おつまみとかおにぎりとかじゃないかな?」
「おにぎり?お米をにぎったものだっけ?」
「そうそう。この世界にもおにぎりがあってよかったよ。お米は美味しいからね」
「わたしはおにぎり食べたことがないから、それが来たらうれしいな〜」
レーナのその言葉が厨房に届いたのか、出て来たのはおにぎりセットだった。
俵状に握られたおにぎりが2つと、卵焼きがいくつか。
うん、コンビニに売ってそうなくらいの出来栄えである。
コンビニの商品と比べたら厨房の人に怒られるかもしれないが。
「うわぁぁ!!これがおにぎり!?美味しそう!!」
レーナはよだれを垂らしそうな勢いでおにぎりを見つめている。
「じゃあ、食べようか。こっちの世界では食べる前に言う言葉とかあるの?」
「んぅ?んーとね、エルフは命の恵みに感謝して[いただきます]って言うよ。人間族は基本言わないみたい」
いただきますはエルフのみに伝わっているのかな?
俺も普段はいただきますとは言わないが、この世界では言っていくことにしよう。
「そうなのか。じゃあ、一緒に言おう」
「「いただきます」」
まずは俵状に握られたおにぎりを食べる。
おぉ、三角形の物よりもつかみやすい。
中身は……梅か。
梅と塩のバランスが遅い時間だと言うことを忘れさせて、食欲を促進してくれる。
レーナのおにぎりは鮭のようだった。
なるほど、梅と鮭のおにぎりか。
バランスが素晴らしい。
ただ、レーナには梅干しは酸っぱかったらしく、口を✳︎の形にすぼめて酸っぱさに悶えている。
「うぅ……。この梅干しっていうの酸っぱい……」
「それが癖になるんだよ」
「えぇ、そうなの?……わたしはこれ苦手かなぁ……」
「まぁ、無理に食べることはないぞ?」
「うぅん。せっかく作ってくれたんだもの、しっかり食べる」
命の恵みに感謝すると言うだけあって、残すという概念はないらしい。
エルフの食育に感心しながら、頑張って梅干しを食べきったレーナの頭を優しく撫でる。
「よしよし、偉いぞ、レーナ」
「あっ……。エヘヘ……」
こうやって家族以外の誰かと一緒にご飯を食べるのは久しぶりだが、やっぱりいいものだな。
レーナが相手だからか、心身ともに癒される気がする。
これが幼女エルフのヒーリングパワーってやつか……。
そうやって特に問題が起こるわけでもなく、穏やかな軽食タイムを終えた俺たちは部屋に戻って言った。
▼
部屋に戻った俺たちは布団を準備して、その上で雑談をしていた。
レーナは俺の膝の上に座ってこれ以上ないくらいにリラックスしている。
そういえば、レーナはこの街で拐われたのか?
出会った時は首輪をつけていたが……。
「そういえばレーナひとつ聞いてもいいか?」
「ゴロゴロ……。んぅ?パパ、どうしたの?」
「レーナが拐われかけていたのはこのダスクでのことなのか?もしそうなら親御さんが探しているのではないかと思ってさ」
そう尋ねたのだが、それを聞いたレーナは表情を暗くしてしまった。
あまり踏み込んではいけない話だったのかな?
でも、パパになった以上娘のことは知っておきたいんだ。
「うーん、パパになら話してもいいか」
そう言ってレーナは拐われた時のことを話し始めた。
「わたしが誘拐されたのはエルフの里を出て少し歩いたところだったの。一応本物のパパもいたんだけど、パパもグルだった……」
ーーーーレーナ視点ーーーー
その日、わたしはお父さんと一緒にエルフの森の外にある場所まで、山菜を採りに行っていたの。
あまりエルフの森から出たことがなかったけど、お父さんも一緒だったからその時は心配してなかった。
山菜をある程度採り終わったころに、ある男の人たちがお父さんとわたしに近づいて来たの。
その男の人たちはパパに近づいて、ニヤケ顔を隠しもしないでこう言ったんだよ。
「これはこれは。その娘が今回の取引の娘ですかな?」
「いつもお世話になっています。はい、これが娘のレーナです」
わたしはその言葉を聞いた時、意味がわからなかった。
取引き?なんの話なの?そんな感情でいっぱいだったの。
お父さんはその男の人に続けてこう言ったんだ。
「娘はハイエルフの9歳でまだ処女……。いい奴隷になることは間違いないと思いますよ」
「あなたも悪い人だ……。浮気相手と結婚するためとはいえ、実の娘を売りに出すとは。まぁ、私たちにはメリットしかないですがね」
その男の人たちは奴隷商人だった。
わたしが知らない間に取引を持ちかけていたみたい。
……多分、お母さんも知らなかったんだと思う。
浮気していることもその時初めて聞いたから。
お父さんと奴隷商人の会話を呆然と聞いていたら、首輪をかけられた。
あまりの出来事に抵抗する気力も起きていなかったんだ。
でも、奴隷商人の馬車に乗る前に見たお父さんは、大量のお金を手に入れてすごい満足そうな表情をしていたの。
「お嬢ちゃんも可哀想にねぇ。抵抗しなければひどいことはしないから、大人しくしていてくれな」
そうしてわたしは実の父親に売り払われたの。
馬車の中では特に抵抗していなかったから、これから行く町のことを奴隷商人から教わっていたんだ。
これから行く場所が[ダスク]って言う名前であること。
見た目がいいから、お金持ちの貴族に売られることになるだろうと言うこと。
わたしはそれを聞きながら、どうやって抜け出そうかばかり考えてた。
ダスクに着いた時に、奴隷商人が手続きのために馬車から離れたのを見計らって抜け出したの。
首輪には魔力制御の機能はなかったし、お父さんも魔力が使えることは知らなかったから、抜け出すこと自体は簡単だった。
馬車の御者は光魔法で倒しちゃった。
なんとか街中を逃げていたんだけど、実戦で魔法を行使したことはなかったから魔力がつきちゃって、路地裏をふらつきながら歩いていたら、あの男の人達に拐われかけたの。
結果的に初めては奪われなかったけど、時間の問題だったと思う。
男の人たちの目はギラギラしていたからね。
そんな時にパパが通りかかって助けてくれたんだ。
その後の出来事は、パパも知っての通りだと思う。
わたしは通りがかっただけのパパに助けを求めて、重力魔法で男の人たちを退治して、わたしを助けてくれた。
わたしはその時、パパに一目惚れしたの。
あんな子供を売るような男とは違う、カッコいい人はいるんだなって……。
あー、パパってば「ちょろすぎないか……?」目してる……!
……わたしからしたら結構重大なことだからね?
あの時にわたしの心がどれだけ救われたか……。
……わたしはパパの娘になりたい。
あわよくば彼女にもなりたいって思っているけど……えへへへ。
パパからしたらまだ娘のようにしか見れないと思うけど、わたしパパがたまに性的な目で見てるの知ってるからね?
そう言う視線はごまかせないのですよ。
だから、わたしはこれからもパパの娘として、そして一人の女としてパパを欲情させて見せるから!!
覚悟していてよね、パ・パ・!
▼
ーーー娘のようなものだと思っていた幼女エルフが実は娘以上の関係を目論んでいた件について。
俺がレーナの事情を聞いて第一に思ったことがそれだった。
いや、冒険者証の称号に娘兼彼女と書かれていたからそんな予感はしていたけどさ。
俺自身、年下の彼女に裏切られた経緯があるから、信じてはなかったんだよね。
しかし、当のレーナは至極真面目な顔をしている。
俺がレーナに向けていた劣情の視線を受けて尚、そのようなことを言い張る女の子に突っぱねることができるだろうか?いや、できないだろう。できるのはおホモの人だけじゃないか?
ただ、俺の口から出た言葉は本心とは真逆のことだった。
「レーナの気持ちは正直嬉しい。でも、俺自身がまだ娘としてしか見れていないんだ。こんな俺で申し訳なく思うけど、彼女云々の県件については少し時間が欲しい。返事は必ずするから」
「大丈夫だよ、パパ。わたしが無理言ってるのはわかってる。でも、パパは遠くないうちにわたしのことを彼女……ううん、一人の女の子として認めると思うよ?」
「なんでそう思うんだ?意思が変わらない可能性もあるだろう?ハーレム狙う可能性もあるし」
俺は自信満々に答えるレーナに疑問を投げかける。
俺だってハーレム願望はあるのだ。そこまで甲斐性あるかと言われると微妙だけどな!
そんな俺にハイライトを消したレーナが答える。
……そういえば、この子のスキルに狂愛とかあったな。
ヤンデレ属性は正直好みなので、問題はないがハイライトってマジで消えるんだなと感じた。
「ハーレムについては……頑張って許容できるようにする……。でも、パパを1番好きなのはわたしだし、パパもそうだと信じてるから!」
俺の欲望を正直に伝えても自分が1番だと言い張るレーナ。
……まったく、敵わないなぁ。
俺がレーナの尻に敷かれる未来が見えた気がした。
俺は苦笑しながらレーナの頭を撫でる。
「えへへ……これからはずっと一緒だからね?離れたりしたら許さないからね……?」
そんなヤンデレなことを言いながら抱きついてくるレーナ。
……実を言うと、こんな女の子を彼女にしたいと思っていたりするのだが、レーナにはそのことは伝えない。
両思いにしろ出会ってまだ1日も経ってないのだ。
もっとお互いのことを知る必要はあると思うし、それはこれから積み重ねていけばいい。
俺のことも知ってもらいたいしな。
そんな話をしていると日付が変わっていた。
「レーナ、明日から必要なものを揃えて冒険に行く予定だからそろそろ寝ようか」
「え?もうこんな時間なんだ……。じゃあ、パパ、一緒に寝よっ!」
そういって二人で布団に入る。
えぇ、布団は二枚あるのに、レーナは俺の布団に潜り込んできましたとも。
子供特有の温かい体温とぷにぷにの体の感触をその肌で感じながら、俺は理性との真剣勝負を始めた。
レーナは布団に入ってすぐ寝てしまった。
しかし、俺に抱きつくようにして眠っている。
くそぅ、負けるものか!
響谷旭、欲望には弱いが守るべき一線は守ることができる男!
そんなことを思いながら夜を過ごして行くのだった。
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