課題だらけの噴水工事

無駄遣い

 オレは、家族のお金を食いつぶしていった。

 小さいころから入退院を繰り返しているだけあって治療費がバカにならない。それだけでも生活は苦しいはずなのに、せめて暖かい家庭に向かい入れてやろう、と願った両親はいろんなものを切り詰めて念願のマイホームを手に入れた。最初に招き入れられた時は綺麗な家に心が躍ったが、病院内での生活の方が長かったオレにとっては、別荘という感覚でしかなかった。

 爆弾低気圧が発生した夏のある日、テレビには大洪水によって跡形もなく流されてしまった別荘の姿が映っていた。連日のテレビ中継の中で、被災者たちが入れ替わり立ち替わり何かをしゃべっている。両親は、仮設住宅から抜け出すため、そして僕のために、再び家を手に入れようと頑張っています。あの家のもう1人の住人である弟が、差し出されたマイクに向かってそう語っていた。

 現実では、オレの治療費を払うために、マイホームは後回しになっていた。やっと退院できた時には、やせ細った両親と高卒で奨学金を背負いながら働く弟がボロアパートで身を寄せ合うように暮らしていた。

 リョウタ君は若いから、と励ましてくれたタカさんの顔が次に浮かんだ。お互い、治療法が確立されていないような病に侵されていた。臓器移植のドナーが見つかって、運よく病院暮らしにピリオドを打つことができたオレは、次の寝床の狭いアパートで真っ先にタカさんに手紙を書いた。オレ、造園師目指して頑張ってみますわ、と。でも、今オレは後悔している。もしタカさんが臓器移植で治る病気だったとしたら、オレよりタカさんを治してほしかった。タカさんだって世間的に見れば充分若いのだ。ドナーの方にも、オレなんかがもらってごめんなさい、と行けるのなら天国で土下座しよう。

 川に落ちたオレは、一瞬見えた川底の穴に吸い込まれてしまい、生死をさまよっている。

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