再会
「――えっ?」
「そっ、そうなんですか?」
純も賢治も驚きの表情を浮かべながら、夢莉と織田を見比べる。
この反応は当然だろう。
なぜなら夢莉は賢治に『ここに来た理由』は話したが、父親に関する情報は何一つ話していない。
それはもちろん、父親の現在の名字だけでなく、職業に関する事も含めた何もかも全てである。
「……」
しかし、顔写真に関して言うと実は、夢莉の父親である織田は自分自身を撮られることは嫌っていた事もあってか、ほとんど写真が残っていなかった。
だから、夢莉はここに来て捜し始めても「この人を知りませんか?」という聞き方をしたくても、出来なかったのだ。
「…………」
そして、織田は久しぶりに会った夢莉に視線を向けたまま……いや、ジーッと夢莉を見つめたまま何も言わず立ち尽くしている。
でも、せめて……せめて何か一言くらい言って欲しい。
別に「大きくなったな」とか「なんで来た!」とかそういう事を言って欲しいワケでもない。
だからこそ、この際なんでもいいのだ。
ただ、リアクションがない、もしくは私の存在自体を無視されるというのがこの場合、一番堪える。
「…………」
しかし、織田は何も言わないまま、ただただ無言で夢莉の方をジッと見ている。
「あのぉ、お取込み中……」
そんな時、一人の警察官がおずおずと織田に声をかけた。
「あっ、えと。しっ、失礼しました!」
声をかけた警察官に向かい、賢治は「なんで今、声かけるんですか」とでも言いたそうに珍しく睨みつけている。
純は「おいおい。いくら何でもタイミングを考えろ、見れば分かるだろ」とでも言いたそうになっているのか、頭を抱えている。
確かに、この状況はさすがに話しかけづらいだろう。
しかし、警察官の方が織田に声をかけた事により、ふと周りを見てみると、どうやら皆さんほとんど作業が終わって、次の指示を待っていたらしい。
「ん? あっ、ああ。撤収作業終わったか。じゃあ、一旦戻るぞ!」
織田は、確実に夢莉の存在に気が付いていた。
しかし、織田は夢莉に何も言わず、部下たちに指示を出し、あっという間に帰ってしまった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます