正確
「ふぁ……」
その日の夜。純が帰って思ったより早く『情報』が来た事によって、夢莉と賢治は眠れていなかった。
「ふぅ」
こんな緊迫している状況であっても少しでも気を抜くとふとした瞬間、そのまま目が塞がってしまいそうなほど眠かった。
「あの、眠いのでしたら」
「あっ、大丈夫です。すみません」
でも、この時の夢莉は頑なだった。それくらいこの事件は解決すべきものと思っていたからである。
「そうですか」
「はい」
そう言いつつも、賢治は夢莉の心配をしていた。
「しかし、本当にこの辺ですか?」
「ええ。ですが、あくまでサイトに書かれていた内容などを鑑みた結果ではありますが」
そこは賢治が営んでいる喫茶店から徒歩で行ける距離にある『細い路地の裏』だった。
「それにしても、どうやってここを特定したんですか? それに、場所もですけど、時間までどうやって?」
やはり、純としては『それ』を聞きたかったのだろう。現場に向かっている最中でも矢継ぎ早に賢治に質問していた。
「それはですね」
賢治が見せた画面には『ゆき』という名前が記されたゲーム内で使われている『アバター』と呼ばれる『自分の分身』とも言える小さい女の子のミニキャラクターが表示されていた。
「…………」
ただ、このゲームの特性故なのだろう。
そのかわいらしいミニチュアの見た目とは裏腹に、そのキャラクターの背中には大きな剣がチラチラと見えた。
「この方から、あのオンラインのゲームサイトとは別の『とあるサイト』の存在を教えていただきました」
「それで、そのサイトを見ていたら、今までの事件に関する情報が書かれていて……今日起きるであろう『事件』の事も書かれていたんです」
そう言うと、純は「えっ」と驚きの表情を見せた。
「?」
「どうかされたのですか?」
「あ、いえ。実は俺もそのサイトは見たのですが、今までの事件内容が書かれていただけだったので、特に問題視していなかったんです。あくまで俺から見た視点での話ではありますが」
「そうですか。本当に『それだけ』ならまだよかったのですが」
「違うのですか?」
賢治はため息交じりに呆れた様子でそう話したのだが、純はどうして賢治がそんな表情を見せたのか分からず、逆に不思議そうな表情だった。
「あの……実はそのサイトで『この事件を起こして捕まらなかったら百万円!』ってデカデカと書かれているページがありまして」
「!」
「しかも、その事件を起こして欲しい『内容』は書き込みをした本人が指定出来るらしいというモノでして」
「その中には今も捕まっていないと思われる人物の書き込みもありました。もちろん、なりすましの線も否定は出来ませんので何とも言えませんが」
果たして賢治たちの言葉は純に届いているのだろうか……なんて思わず心配してしまうほど、純はその場で絶句し、固まっていた。
無理もない話なのは分かるけど――。
「え?」
「今のは……?」
しかし、その状況もすぐに変化した。
「今のは! とっ、とりあえず急ぎますよ!」
なぜなら、純の無線から『至急! 至急!』という大きな声とうめき声が、近くにいた賢治たちの耳にも聞こえてきたのだから……。
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