閑話休題 可哀そうな女の子
少し昔のお話をしましょう。
小さな小さな一族が、小さな小さな
弱い弱い一族でしたので、高価な馬を飼う一族は良く敵に狙われていました。
けれど、馬と共に暮らしていましたので、敵に攻められてもすぐに逃げることが出来ました。いつもいつも逃げる一族は臆病者として侮られ、罵られていましたが、一族はそんなことはへっちゃらでした。
小さな小さな一族にとって、逃げられる敵など敵ではありません。
彼らの敵は、疫病や災害、人にあらざるものからの災厄で、それに比べれば他者からの侮蔑など取るにたらないものでしたから。
そんな弱い弱い小さな小さな一族でしたが、ある時、とても強い強い男の子と、とても美しい美しい女の子が生まれました。
強い強い男の子は、大きくなると言いました。
「僕らはいつまで、弱い弱い小さな小さな一族でいなければいけないんだい?」
と。
美しい美しい女の子は、老人たちと一緒に男の子の言うことに反対しました。
「弱くてもいいじゃない。弱いから私たちは生きていけるのよ」
けれど、男の子は女の子や老人たちのいうことなど聴かずに、一族の若者達と一緒になり外へ戦いに行くようになりました。
男の子は馬を巧みに使って、同じように弱くて小さな一族を狙って殺しながら一族を少しずつ大きくして行きました。
弱い弱い小さな小さな一族が、小さな一族を営むまでになった頃、大きな国が小さな一族を目にしました。
「なんて立派な馬を持っている一族だろう」
大きな国の王様は、立派な馬が欲しくなり、小さな一族を討伐することにしました。
大変です。
すこしばかり一族は大きくなったと言っても、小さな一族です。大きな国の王様には勝てません。
強い強い男の子ではありましたが、みんなで逃げることを選択しました。
ところが、弱い弱い小さな小さな一族だったころは、簡単に逃げることが出来たのに、一族は逃げることが出来ませんでした。
彼らに攻められ、酷い目にあわされた弱くて小さい一族たちがこぞって密告したのです。
一族たちは、簡単に大きな国に殺されて滅ぼされてしまいました。
強い強い男の子は、見せしめとして煮えたぎった油に放り込まれ、その血肉は強い強い英雄の「肉」だと高価な価格で売買され、食べられてしまいました。
いえ、一人だけ、馬とともに生き残った者がいます。
美しい美しい女の子です。
一人残された美しい美しい女の子は、大きな国の王様に馬と一緒に貢ぎ物として捧げられました。
そして、一人の可哀そうな王子を生みました。
それが、全ての始まり。
女の子の本当の不幸の始まりです。
「それで、第二王子はどこへ逃げたのかしら?」
王座の隣に佇む女の問いに、跪いた男が応える。
「おそらく、母親の一族の元へかと」
「そう、では早く青の国の姫を迎え入れなければ。その後、第二王子の一族を討伐いたしましょう」
家臣の騒めきに、女、王大后(王の母親)は幼い王を守るように声を張り上げた。
「第二王子は、現王の招聘に応じなかった反逆者です。
必ずや、彼を処罰し、亡き王の望みであった我が黄緑王国の安寧を守らなければなりません」
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