9 王女様監禁される
「おはよう!俺の嫁!」
朝起きたら、蛮族の男が床に潜り込んできていたことに対して五言絶句で感想を・・・述べれる訳なあーーーい!!
「ちょ、ちょっと何してるのよ!」
どん!と、第二王子を突き飛ばすと、
『拳で殴らないだと?!可愛い』
とか訳の分からないことを言いだした。
「ふわふわの髪も可愛いなあ!」
髪の毛に伸ばされたゴツゴツした手をパシッと払いのけると、なぜか悶絶している。
「うおおおお!何この小動物みたいな反応」
動物を可愛がるように、私を撫で摩る。
な、なに、こ、これ!!
へ、変態?!
「日に焼けてるとこも色っぽいし、目なんて、くりくりしてて、可愛いし、胸はデカイし、たまんねー」
え、ちょっと、この金毛のサル、私の上に乗って来てるんですけど。身体が大きすぎない?!
ぎやーーーー!!
く、首筋舐められた!舐めるな!
舐めるなーーーー!!
「食われるーーーっ!」
足が抑えられてて、急所が蹴れない。
ヤバイ!これはヤバイ!
「はいはい、王子。そこまでですよ」
魚大夫?と思ったら、魚大夫より一回り小さい、のっぺりとした男が現れた。
背丈なんて、私と同じくらいで、華奢な感じがする。
「ちぇー」
ちぇーっじゃないわよ!馬鹿王子。
危なかった。
まさか、結婚相手に寝込み襲われるとかあり得ないし!
「いや、結婚相手だから襲うのでは?」
と、のっぺり男が言う。
あ、そっかあ。
それも、そうかもしれない。
結婚相手以外とは致さない訳だし。
「そ、そう言われれば、そうよね」
「そうですよ(これで納得するとは、ちょろい)」
なんか、言いくるめられてる気がするけど、まあいいか。
それはそうと、貴方誰よ?
「申し遅れました。私、夏要と申します。王子の無礼をお詫びいたします」
「こいつ、俺の舎弟!めっちゃ頭が切れるんだぜ!」
礼儀にかなった作法でこうべを垂れた夏要の挨拶も、主人である第二王子のセリフで台無しだ。
(舎弟)
どこの仁侠集団だ!
ヤバイわー。
黄緑国、やっぱりヤバイわー。
「とりあえず、現状を確認したいのですけど、ここは黄国と黄緑国の境のあたり?」
この大陸一の血統と力を誇る黄国。本当は都も見学したかったんだけど、嫁ぐまでは出来るだけ他国の都を迂回して嫁ぎ先の国に行くことになっている。大夫が言うには揉め事は避けたいのだそうだけど、そのせいで黄緑国に着くのがこんなに遅くなっている。
まあ、私の美貌を巡って各国が争ってしまう心配も分からなくはないわね!
、、、そうそう、夏要の話も聞かなきゃね。
「賊は、この国境の人目のつかぬ所を狙ったのでしょう。
我々も王都で王女を狙った賊がいると噂を聞き、来てみれば案の定。
お助け出来て本当によかった」
夏要という男の満面の笑みが、なーんか、嘘くさい。
「王女様は何もご心配などされず、ゆるりとお過ごしください。けが人もおりますので、ここで一週間ほど過ごされた後、黄緑国まで我々がお送りいたしますから」
うさんくさい。
「、、、頼りにしてるけど、怪我人が気になるの。見てきてもいいかしら?」
魚大夫が無事なら、皆無事だろう。文官みたいな性質のくせに、実は魚大夫は武芸も達者なのだ。軍の運用を任せれば青国の宰相よりも巧と評判だ。
だけど、魚大夫をはじめ、漏らした側仕えの侍女の姿にしろ、まだ見かけないのは気になる。私が目が覚めれば侍女が着替えを持ってきて、魚大夫のお説教が始まるのが日課だったのに・・・
「別の天幕にてお休み頂いております。今日のところは皆さまお疲れのようですので、また後日にでも・・・」
私が寝ている寝台も、天幕も、第二王子が用意した移動式のものだ。
寝台は籐で編んだもので、寝心地もかなり良いんだけど、用意が良すぎる気がする。
「はい・・・分かりました」
「では、お食事をご用意いたしますのでここでお待ちください。王子行きますよ!」
「嫁!またな!」
ぶんぶんと手を振る王子に、とりあえずにっこり手を振った私は、天幕に一人残された。
天幕の出入口には人の気配がする。
見張りが立ってる?
んー?
これ、私監禁されてない?
まあ、
「どうするかは、ご飯食べてから考えよう」
空腹では何もできないし、それから考えるのが一番よね!
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