第9話 レゴを踏む

「そうそうこの間のゆいが教えてくれた算数の公倍数のトコがさ〜」


 相変わらずかっちゃんは寝転んだりしたり立ったり、自分の部屋をウロウロしながら星のノートに落書きしたり、おやつのじゃがいもを揚げたチップスを食べたりしてた。


「うんうん」


 かっちゃんに相槌しながらわたしは立ち上がり、かっちゃんの勉強机にある鉛筆削りで鉛筆を削ろうとした。


「い、痛あっ!」


 絨毯に転がってた大きめのレゴを踏んでわたしは転びかけた。

 そしたら慌ててダイブしてきた、かっちゃんに抱きとめられてた。


「大丈夫? 結?」


 かっちゃんの顔が近い。


「うっ、うん……」

ゆい。ごめん。レゴ一個片づけ忘れ」 


 慌ててかっちゃんからパッて離れたら、かっちゃんはなんだか悲しそうだった。


「ごめん。ゆいが怪我するとこだった。今度から気をつけるね」


 かっちゃんは下を向いていた。

 しょぼんとしている。


「だっ、大丈夫だよ〜。かっちゃんが助けてくれたから、怪我しなかったもん」


 私はドキドキしてた。


「うん。……よかった。――でさ、結。俺テストで〜」


 かっちゃんは、その……、ドキドキしないのかな?


 私はかっちゃんに転んだのを助けてもらって。あんなにかっちゃんの顔が近くて、すっごくドキドキしたのに……。


 だってね、今も。

 わたしは今もそう、こ〜んなにね、ドキドキしてるのに。

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