第3話 帰り道

 学校からの帰り道。

 何度となくかっちゃんと圭ちゃんと一緒に帰っているのに、今日はいつもより特別に思えた。


 二人きりだから?


 圭ちゃんがいないのは少し寂しいのに、わたしのなかのかっちゃんといるドキドキがいっぱいになる。


 かっちゃんと二人だけの帰り道……。


「早く夏休みになんないかなあ。俺、今年もゆいとお姉ちゃんとカブトムシとりに行きたーい」


 カブトムシ。

 そうか。

 楽しいよね。

 だけど朝早くの暗い森はこわいなあ。

 でも……、かっちゃんがいれば大丈夫だよね?


「そうだね、カブトムシとりに行きたいね。あとさ、かっちゃん」

「なあに? ゆい


 かっちゃんは私の通学バッグも上履き入れもなぜだか持ってくれてて、自分のも持ってるのに軽々振り回してた。


「花火大会も行きたい」

「いいね〜。いいね〜。今年こそ輪投げでなんかゆいに取ってやるよ」

「いいよ。いらないよ〜。だって可愛いものがいつもあんまりないよ」

「戦隊のフィギュアは?」

「いらない」

「嘘だろ〜? いらないのかあ」


 私とかっちゃんはいつまでも話してた。

 話が尽きることなんてなかった。


 なんで「一緒に帰ろう」ってかっちゃんに言われて、何を話せばいいのかなって思ったの?


 一緒に帰りたいのに誘われて話が続かなかったら嫌だなって困ってしまったんだろう。


 こんなにかっちゃんとたくさん話がいつまでも続いて。

 話したいことがもっともっとってなって、話題がなくらないし尽きることなんてなくって、すっごく楽しいのにな。

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