貉睡の晨

まがひて幾星霜いくせいそう閲世えつせいほど、一睡の夢

鶏屋とりや主翁しゅおう瞑目めいもくし、貉睡たぬきねむり貉睡かくすい

いいあらそうたの妻は、すでに黄泉へと亟馳きょくちせり

五色ごしき羽有はねも夫婦翬めをときじかうとも啼かず、やうとも啼かず

今はほじしとなり果てて、琴瑟相和きんしつあいわたな

まなかぶらより漏れ出づる、なみだうるほおきなほほ

来たる東雲しののめ赮赮あかあかと、染めて今しも晨開あさぼら


※「貉睡かくすい」は概ね「(むじなのように)よく眠ること」の意。但し『書言字考節用集』(ハ・言辞)に「貉睡タヌキ子フリ」の傍訓あり。

※「亟馳きょくち」は「すみやか/はやく」「馳す」の字義なり。但し『西大勅謚興正菩薩行実年譜附録』に「急死」を意味する用例あり。

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