ヤンハブコンビの初めて 4

ゆっくりと顔を上げたハブの目の前には、赤くなっているもみ上げと白い髪が映え、赤と白の服が特徴の____


「……トキ……?」

「あら、どこかで会ったことあるかしら?それとも私のファン?」


思わず口に出したそのフレンズの名前。映像越しに見た時とは雰囲気が違うながらも姿形が全くと言っていいほど同じ彼女は、キョトンとした顔でハブを見下ろしている。


〜〜〜〜


「……そう。そんな事があったのね」


あれから路地裏の外へ連れて行かれたハブは近くの公園にあるベンチに座らされ、隣に腰掛ける彼女に促されて事の経緯を淡々と語った。


「……あの映画を見てからハブはおかしくなった。モヤモヤしてザワザワして落ち着かなくて、ジッとしていられなくなって……あんなのを見たからだ……」

「それはちょっと違うんじゃないかしら」


フードを深く被って顔を伏せていくハブに、トキは静かに、しかしハッキリと聞こえる声で言葉を返す。


「実はね、私もあの映画を見た事があるの。正直最初は衝撃を受けたわ。自分と同じ姿の誰かが女の子同士の恋愛をしているのはちょっと変な感じだったもの」

「……今はイヤじゃないのか?」

「知り合いのフレンズが自分に正直になれたって言ってきたの。その子、ずっと前から好きな子がいたんだけど、こんなの普通の感覚じゃないってずっと悩んでいたの。そうね……今のあなたに近い感じ」


その知り合いのフレンズはヒトがパークに戻ってくる少し前から相手の事を意識するようになっていたのだが、というものがこの世に存在する事や生命の成り立ちについても自然に知っていく内に、徐々に自分の感性が珍しいものである事を知っていった。


さらに、フレンズがヒトの男性と恋に落ちていく様を数多く目の当たりにするようになったのと同時に、相手にこの想いを告げると「気味が悪い」と避けられてしまうのではないかという恐怖も生まれたのだ。


そんな時、タイトルに騙されたトキとそのフレンズはあの映画を同じタイミングで見たのをきっかけに仲良くなり、相談に乗る事もあった。


「それから色々あったけど、相手の子も一緒になってあの映画を見たわ」

「一緒に!?拒否られたりしなかったのか!?」

「さすがに最初はビックリされたわ。けど、あの子の不安そうな顔を見て放っておけなくなったって言って、最後まで付き合ってくれたわ」

「……で、どうなったんだ?その二人」

「言い方が悪くなるけど、わ」


つまり、結果的にその二人は恋人同士としての仲へと発展したのだ。

元々恋愛に対する価値観が定まっていない時にこのような体験をしたのも手伝い、一気に女性同士の恋愛というものに引き込まれていったのだ。


「かと言って男女で行う一般的な恋愛を否定する訳でもないわ。そういう愛の形もあるっていうだけよ。それを後押しできたんなら、こういうのも悪くないかなって、そう

感じるようになったの」

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