ヤンハブコンビの初めて 2

翌日。


「ハムハムハムハムハブジュぁああーー!!」

「あひいぃーー!?」

「あ゛ーー!!」

「きゃあー!やめてー!」


じゃんぐるエリアに赴いたハブは通りかかったフレンズの尻尾にがむしゃらにむしゃぶり付いていた。

しかも誰彼構わず、なりふり構わずといった勢いで目に付いたフレンズ全てに襲いかかっており、尻尾をヨダレだらけにされたフレンズ達は唖然とした様子でその場にへたり込んでいた。


その破竹の勢いが止まる事はなく……なんてこともなく。


「うおああぁあーーーーっ!!ハムらせろおぉおーーーーっ!!」

「いやぁーー!?」


目に付いたミナミコアリクイの尻尾をハムハムしようと飛びかかった時だった。


「この痴れ者が!!」

「ハぶゅん!?」


両者に割り込むように伸びてきた太く長い尻尾がムチのごとく振るわれ、ハブを地面に叩きつけたのだ。

怯えるミナミコアリクイを抱き上げながら鋭い目付きでハブを睨みつけるのは、アリクイのフレンズ達の頭を務めるオオアリクイだった。


「フレンズがフレンズを襲うとは何事か!このような暴挙に出る訳を答えよ!」

「バブュ……」


顔面ごと地面に突っ伏したまま動かないハブにキッと鋭い眼光を送り続けるオオアリクイは、動かないハブに苛立つように地面を強く踏み付ける。

微弱な地響きが起きるほどの衝撃でハブも飛び起き、無関係だった他のフレンズや客達も異変を察して何事かとばかりに集まってくる。


「そうやっていつまでも黙っている気か?貴様の噛み癖は聞いているが、今回は一段と酷いではないか。何をそこまで荒ぶっている?」

「…………ぅぅ……」


オオアリクイに問い詰められてもまごつくように口を開かないハブ。それに業を煮やしたか、オオアリクイの眉間には一層深いしわが寄り始め、苛立ちから声も自然と大きくなる。


「ええい、ハッキリしない奴め!いい加減に何か話せばどうだ!!」

「…………だ」

「聞こえん!もっとしっかり話せ!」


それに答えたつもりか、俯いたままのハブはぼそりと何かを呟くが、よく聞こえなかったのでオオアリクイの苛立ちに更に火をくべる事となる。

さしもの彼女も我慢の限界が近付き、ハブに詰め寄ろうと足を動かしたその時だった。


「ハブはノンケだあぁ!!ハブはノンケなんだよおぉおーーーー!!!!」


わっと堤防が崩れて洪水が起きたかのように、悲鳴にも近い声を張り上げるハブ。

フレンズの中でも高い実力を持つオオアリクイだが、至近距離でそれを聞かされては流石の彼女も肝を冷やして目を丸くしたまま固まってしまった。


「ひゃあぁ!?」

「ごぅっ!?」


さらに彼女に抱かれたままのミナミコアリクイが驚いて威嚇のポーズを取った際、振り上げようとした拳が見事に彼女のアゴへ決まっては地面に倒れこみ、さらにその拍子に投げ飛ばされたヒメアリクイが木の枝で寝ていたナマケモノにぶつかって下の川でジャガーが引いていたイカダに乗ってどこかに運ばれていくというピ●ゴラスイッチのような綺麗な流れが出来上がった。


それに構うこともなく背を向けるハブは、周囲の制止も聞かずにどこかへ走り去ってしまった。

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