エンディングフェイズ:シーン6「夏の夕暮れ」

GM:雨が上がり、蒸した暑さに包まれた町。あなた方は踏切に差し掛かります。

 電車が来る気配はなく、聞こえてくるのはひぐらしの声ばかり。景色は夕暮れ。血のような夕焼け空が広がっています。

 あなたの意識はほとんど虚ろになっていました。体が熱い。血が沸騰しているかのようです。湧き上がる『衝動』が今にも爆発してしまいそうです。

 もう、抑えきれない――きっとあなたは、あと数分、ひょっとしたら数秒しか、人間でいられないでしょう。

篠月彩花:「綿貫くん? どうしたの?」

GM:そう言って微笑む彩花さんは、あなたの手を握ります。

透利:「……いや、ちょっと、疲れただけ。暑いから、かもな」なんとかそう答えつつ、歩みを止めないで何とか進もうとします。

 「そーな、なんか気がまぎれる話しててくれよ。昔の話とか、夏の予定とか」

篠月彩花:「気が紛れる話? そうだなぁ……ひぐらし……もうすぐ夕方なのかな。夜になったら、花火の時間だね。花火で思い出したんだけど、昔、透利くんと──」

GM:と、その時です。彩花さんの身体から力が抜けて、あなたに倒れ掛かりました。

透利:「……!? 篠月?」慌てて支えますね

GM:はい、では、あなたが彩花さんを抱き留めた瞬間、乾いた銃声が響いて――あなたの視界は赤く染まります。

 斃れ伏す刹那、あなたが見たのは彼方から銃を向けた『人間』。化け物ではありません。撃たれたのは、透利さん、あなたですね。今際の際に、あなたは何を思うのでしょうか。

透利:では、倒れてから、撃たれたことを理解して、なんとか顔を上げて、人影の方に向かって声を上げます。

 「撃つな!」 なんとか人間の言葉になっているといいのだけれど「撃たないでくれ、彩ちゃんは、化け物じゃない」

GM:大丈夫です、言えたことにしましょう。人影は、彩花さんには銃を向けませんでした。

透利:その結果を確認するかしないかのうちに、完全に突っ伏して、それでもなんとかスマホを取り出しました。

 開くのはラインの画面、『篠月 彩花』の名前を叩き、どうにか文字を打ち込んで送ります。

 『ごめん』

 「……馬鹿だ。読めねぇじゃんか」苦笑して、咳き込んで

 「あー、くそ……」横に倒れた顔が、もうよく見えないのですが、そちらの方を向きながら、ゆるゆると目を閉じていきます

 「ちゃんと、振られときゃ、よかったかなぁ……」

 そう誰にも聞こえない声でつぶやくと、目を閉じて動かなくなりました。

GM:では、そののちしばらくして、

???:「目標の沈黙を確認」

GM:と、銃を担いだUGNエージェントが呟きました。

???:「一般人の確保に向かう」

GM:別のエージェントが飛び出し、彩花さんの無事を確認して抱え上げます。そばにあった、透利さんのスマホも、画面を確認すると一緒に回収したようですね。

???:「よかった……この人はジャーム化していない」

GM:そのまま彩花さんはUGNエージェントに抱えられて、安全な場所へと運ばれていきました。

 あとに残されたのは黄昏色の町の中、ひぐらしの声に包まれて、静かに倒れ伏したあなたの骸のみ……。


 貴方はもう助からない。それでも、歪んだ腕で、歪んだ心で。護れたものが、そこにいたから。――貴方の心が死にきる前に。

 ダブルクロス The 3rd Edition『入道雲の空の下』これにて、終幕でございます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る