画策
リ・エスティーゼ王国、王都リ・エスティーゼの地下深く、その者は彼らに奸計を授けていた。
「これを用いてこの場所を混沌の坩堝と化しなさい。そうすればあのお方はそれに愉悦を憶え、貴方方の過ごしやすい世界を構築する事を約束されています」
王国に属さない軍事力によって平和を構築しつつある王国。
そんな王国だが、闇に生きる者達からすれば行きにくい環境だ。
大きさの割には鈍い音を響かせ八本の腕にそれぞれ色の異なる禍々しい珠を持った像がゴトリと置かれる。
「これは発動すると悪魔が召喚されるマジックアイテムです。召喚された悪魔は適正のあるものが発動させれば支配下に置けます。
何方か魔法の素養が高いものに任せると良いでしょう」
では、次会うときは成功した後ですねと言葉を残し、一体の悪魔は闇に紛れて消えていった。
八本指の長は追い詰められていた。組織としても個人としても。
もう戻る事も立ち止まる事さえ出来なかった。
このままでは何れ粛正されてしまうのは目に見えていたのだ。
「組織の残っているマジックキャスターの中で最も難度の高い者を呼べ」
暗がりの中、側に侍っていた従者らしき男に声を掛け、何処か虚ろな瞳を目の前の禍々しい黄金に輝く悪魔像に向け続けていた。
王国の日常は改善されていっている。
王国以外に属する者達の手に因って。
だが、その水面下では追い詰められた者が都合の良いマジックアイテムを手渡され、それを発動するべく人選を行っていた。
平和によって追い詰められ、地下に潜った組織の長は悪魔像を躊躇無く配下の者に使用させた。
その日の王都は平和であった。
緑の見慣れない服を纏った者達による悪辣な貴族の弾圧。
さらに治政に関しても優秀な人材が投入された。
貴族が弾圧された事により空席となった領主の席に座ったのは、神により魂を救済されたと言われた、弾圧され殺された貴族のアンデッドだった。
本来であれば忌避される存在であるアンデッドだったが、緑の服をきた彼らの素性を先に公表する事で混乱は避けられていた。
そう、緑の服を着て様々な活動をしていた彼らは吸血鬼…アンデッドだった。
葛藤こそあったものの、そこは実益が勝りアンデッドという存在は受け入れられた。
眠る事を知らない彼らによる献身により王国は平和を謳歌していた。
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