援助活動
「準備は宜しいでしょうか?」
ここはリ・エスティーゼ王国の王の執務室、パ・ティツの一言によりこの場に集まったものは緊張を高める。
ランポッサ三世と護衛のガゼフ、更に二人の息子たちと王国側は中枢の人物を配している。
そんな中執務室に漆黒の渦が現れた。
一瞬腰を浮かせてしまう部屋の住人たちは落ち着き払ったティツを観てそそくさと言った感じで腰を下ろす。
二人の息子が若干焦りを伴なう行動をしてしまう中、流石王と言ったところかランポッサ三世は落ち着いて雰囲気を維持している。
ガゼフはカルネ村でも同様の転移法を見ていた為特に身じろぎすらしていない。
だが、その漆黒の渦から出てきた二人の女性の内の一人を見て驚愕の顔を覗かせた。シャルティアとラナーが現れたのだ。
事前の説明では神たるアインズの名代として側近を使わせるという話だったのだが、実際に出て来たのは二人の少女だったのだ。
「皆様初めまして、私はアインズ・ウール・ゴウン・ナザリック=グレンデラ・ススギ=シャルティア・ブラッドフォールンと申します。この度はラナー殿の補佐として随伴させていただいております。」
見目麗しい日の光を浴びたことが無いと見まがうほどの白磁の肌をした可憐な少女が挨拶をする。
「お父様、お兄様方お久しぶりです。今回の件について全権を任されております。」
「ラナーよ全権とは・・・。」
「お父様、言葉通りですわ。王国内で起こった同時多発に発生した死の螺旋現象に関する全てです。」
なぜ謝罪に出向いたはずの娘が、神と僭称する存在から全権委任を受けることになったのか皆目見当もつかないランポッサ三世は、言葉を紡ごうとするもそれをラナーに止められる、その後間髪挟まず言葉が紡がれる。
「その事に関してはまた後程。まずは本題の話をいたしましょう。」
こうしてアインズ・ウール・ゴウンサイドと王国サイドの会合が始まったのだった。
アインズ・ウール・ゴウンサイドの要求はそれほど多くは無かった。が、問題はその内容であった。
先に活躍したグレンデラ自衛軍が王国内で活動するという通知。
同じくグレンデラ軍の裁量権を王国内で行使する通知。
そう、通知だ。
王国サイドの意向を一切聞かず行動すると言ってのけたのだ。
流石にこれに対して横暴ではないかと言を荒立てるバルブロ王子であったが、これに対してラナーは一言。
「神の言葉に対して不敬ですわよ、お兄様。」
と、取り付く島もない始末。
バルブロは顔を赤くして怒りを露わにする中、ランポッサ三世とザナックは苦み走った渋面を隠しもせずにラナーに見せる。
「さて、我らが偉大なる神、アインズ・ウール・ゴウン・ナザリック=グレンデラ・スズキ=モモンガ=サトル様のお言葉はお伝えしました。お父様方は何かございますか?」
速やかに対処され人的被害が抑え込まれた死の螺旋事件が発生した各都市には、深い緑の服装に身を包んだ事件解決の立役者たちが復興活動を行っていた。
人的被害は無かったが、建物などの損壊が著しい地域もあり、彼らの活動は王国民に非常に感謝された。
それに引き換え何もしない貴族たちへの感情が良からぬ方向へと向かい始める。
そして普段は碌に市井の事など気にもかけない貴族だが、こと悪評に関しては敏感だ。貴族に対する侮蔑罪と称して王国民を弾圧しようとするが、そこに割って入る存在がいる。グレンデラ自衛軍だ。
こうしてリ・エスティーゼ王国には緑色の軍服を着熟した、自国ではない暴力装置たる軍組織の部隊が浸透することになったのだ。
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