エ・ランテルにて
過去最速
茜色の空、遠くを見れば夜の帳が下りはじめているそんな時間帯。
「はー、疲れた・・・、まさかこんなところで拘束されるとはな。」
その言葉の内容と同様に、素振りにも疲れた物を覗かせつつ、エ・ランテルの冒険者組合から姿を現したのは、2メートルに届かんばかりの巨躯に、豪奢な漆黒のフルプレートメイルを纏った偉丈夫であった。
ハムスケを伴ないエ・ランテル入りしていたモモンガ達が扮するモモン一行は、ハムスケがエ・ランテル都市内で活動出来るようにと、自身の冒険者登録と魔獣登録を行う為に、ここ冒険者組合へと赴いていた。
だがしかし、現地の住人からすればハムスケという強大な力を持つことが一目でわかる魔獣、それを従える屈強な戦士。
これらが合わさったとき、冒険者組合内だけではなく、ここに至るまでの道中でもそれなり以上の注目を集めていたことを思えば、冒険者組合長自らが受付に姿を現した後、組合長室へとモモン達を招き入れ、色々と便宜を図ろうとするというのは当然と言えば当然というもの。
モモンガ自身も組合長であるプルトン・アインザックの対応は理解できなくもないが、こうも長時間に渡って胡麻擦りをし続けられることに対して、辟易とした感情は持ってしまうのはまた別の問題であった。
「まー、そのお陰もあってこのプレートと、言うことなんだが。」
冒険者の階級を表す冒険者プレート、モモンガ達三人は過去最速、もとい過去に例を見ない登録時時点でミスリルプレートを渡されるという、中々に話題性の高い事をアインザックより行われていたのだが。モモンガの胸中としては「無駄に目立ってしまったな。」の、一言で終わらせられてしまう程度の事。
「さて、ハムスケと合流次第、黄金の輝き亭に向かうぞ。」
その言葉に応えるのは、生真面目な口調の「はい、モモン。」と、元気溌剌な「わかったっす!」の声であった。
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