進む準備

 深い深い森林の奥深く、禍々しくも神々しく荘厳なグラウンド・ナザリックでは、現在内装工事が行われている。

 各種防衛設備とそれらの欺瞞、グレンデラへと繋げられた据え置きのゲート展開装置、賓客を受け入れ持て成すための準備。

 間もなく訪れるリ・エスティーゼ王国第三王女、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフを代表とした外交使節団。

 先のカルネ村での一件の後処理とそのお礼を兼ねて来訪するこの使節団は、モモンガ達がこの異世界に訪れてから初めて招く公人である。

 故に、事前にこの異世界の文化水準の調査を迅速に且つ正確に収集、その情報に合わせて受け入れ態勢を整えていた。

 ヨーロッパ中世後期頃の科学技術、そこにユグドラシルから流入した魔法やスキルなどの恩恵によって個人の能力次第では近世。さらに一部の存在は転移の魔法などを扱えることからそれ以上。

 ただ、芸術文化や生活水準は中世期後期と同等と判断され、それに合わせた準備が着々と進められていたのであった。


 殺す殺す殺す殺す殺す・・・、只管に殺す。

 徐々に自分の力が増してくのが解る。英雄の領域から神の領域に到る為に、ただ只管に言われた通りに、用意された魔物を狩り続ける。

 狂喜に滲んでいた表情は、いつしか無感動なものになり、殺すという作業を行うだけとなっていた。

 こんな状況を受け入れた女、法国より逃亡することに成功したクレマンティーヌは、悪魔からの契約を完遂する為に、より高みに自分を上げるために殺し続けていた。


「おー、これが・・・。」

「そうだ、後はタイミングを合わせて発動すればよい。その後はこちらで行う。」

 湿りを帯びた空気の中で一人の禿頭の男と、とある存在より使わされたレッサー・デーモンが密談を交わしていた。

 また、この様な風景は、彼らが所属する地下組織が潜伏している王国の各都市でも行わていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る