すれ違う
過去両親が病に掛かり亡くなってから、祖母のリイジー・バレアレの下で薬師として修業をしながら生活を送る彼は、不幸な経験をしながらも恵まれていた。
彼の両親が亡くなった後、リイジーはそれまでにも増してポーション製作・・・、神の血へと至る為の研究を行い、その活動を維持するためのポーション販売も精力的に行っている。
そんな祖母の背中を見て育った彼もまた、優秀な薬師としてエ・ランテルで認知されている。
未だに既存のポーションの枠組みに囚われ、血の如く真っ赤なポーションの製作に成功してはいないが、王国内で最高の薬師とまで言われるようになった、リイジーとその孫ンフィーレアは恵まれていると言って良いだろう。
ただ、その環境は誰かに安堵されたものであった。
ポーションの研究と制作に明け暮れているンフォーレア少年であるが、そんな彼も年頃の少年らしく淡い恋心を抱く相手が居た。その相手とはカルネ村の村娘エンリ・エモット。
そう、ナザリックに新しく迎え入れられ、モモンガの娘としてナザリックの支配者の娘として、相応しくふるまえるように鋭意努力を積み重ねている彼女である。
(メッセージ。モモンガだ。今は大丈夫かな?)
無詠唱でメッセージを唱え、エンリへと繋がれた魔力の波がモモンガの声を聞いたエンリの返答を返す。
(はい、お父さん大丈夫です。)
今エンリは、アルベドからナザリックの運営について講義を受けている最中であるが、すでに高レベル帯に突入しているエンリにとって、複数のタスク処理は当たり前に出来るようになっていた。
(今カルネ村からエ・ランテルに向かっている途中なのだが、その間でンフィーレア君と接触しそうでね。それで連絡をしたのだが、エンリは彼に会いたいか?)
(んー、そうですね。正直なところもう住む世界が違いすぎます。無理に会いたいとは思いません。お父さん、私に気を遣わずに行動して下さい。)
(そうか、解ったよ。勉強頑張ってな。)
(はいっ!)
「いやー、すごいフルプレート・アーマーでしたね、ンフィーレアさん!」
「はい・・・。」
「そ、そうですねペテル。モモンさんの鎧もそうですが、ナーベさんのローブもすごい上等な拵えでしたね。」
「えー・・・。」
「うむ、それと、この辺りではあまり見ない神を信仰していた様であるな。」
「うん・・・。」
「それに・・・ほら!あの強大な魔獣見たかよ!あんなのを調伏するとかすごいよな!」
「ですね・・・。」
モモンとンフィーレアはすれ違いざまに軽く挨拶をかわし、モモンからとある情報を聞いてから、彼らはずっとこの調子である。
ンフィーレアは塞ぎ込んでしまい、相槌を打つものの心ここに在らず。彼の胸中はカルネ村・・・いやエンリの安否に向かっているのだが、その生存は絶望的だ。
モモンからもたらされた情報はこの先の村、つまりカルネ村がすでに廃墟同然の状態になっており、人の姿を確認できなかったというもの。
何かしらのモンスターに襲われたか、野党の類の襲撃を受けたか。モモンの話では恐らく人による襲撃だという事が伝えられ、ンフィーレアは薬草採取の予定を、カルネ村の状態確認に移行して、今現在は移動している。
すこしすると話題が尽きたのか、一行は黙して淡々と進んでいくのだった。
彼らを監視する複数の気配に一切気付かぬままに。
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