第三章 死の螺旋
エ・ランテルへ
思わぬところから推察されたプレイヤーの存在
カルネ村で起こったガゼフ暗殺未遂事件は、その内容から情報が秘匿されている。この件を知っているのは当事者であるナザリックサイドとエ・ランテルの王族と貴族階級のみである。
そして、カルネ村が襲撃にあってから数週間経つ頃、ポーションの材料を仕入れるために、エ・ランテルから冒険者を雇いンフィーレア・バレアレという名の、薬師の少年がカルネ村へと向かっていた。
対して、モモン・グレンデラ一行は当初の予定通りにトブの大森林を抜けカルネ村に到着すると、パーフェクト・アンノウンアブルで隠密状態のグレンデラ軍カルネ村駐留パーティと接触、現状何も問題がない事を確認したのちエ・ランテルへとその足を向けたのであった。
そんな両名が人が何度も通って自然にできた道とも呼べない道のようなもので出会う事になった。
ンフィーレアの薬草採取の護衛の依頼を引き受けている、漆黒の剣の目と耳であるルクルット・ボルブは前方から漂よって来る圧倒的強者の雰囲気を持つ3人と一匹を探知する。
「リーダー、前方からすごい騎士様方が接近中。」
「こんな辺境に騎士?」
チームの斥候からの報告に疑問符を浮かべて、パーティーリーダであるペテルは返事を返すと。
「そうだ、見たこともない見事な漆黒のフルプレート・アーマーを装備している騎士と、同じく漆黒のローブを着た美女と、漆黒の修道服を着た美女と、強大な魔獣が一匹だ。向こうは俺よりも速くこっちを知覚しているっぽいな。どうする?」
「ふむ、魔獣であるか。」
ドルイドであるダイン・ウッドワンダーが声を上げると、騎士と聞いて明らかに不機嫌になった、漆黒の剣のマジック・キャスターであるニニャが、
「まー、挨拶程度ですませてさっさと先に行きましょう。」
この言にンフィーレアと他のパーティメンバーは微妙な表情を浮かべながら、ペテルの決定を待つ。
「そうだな。とりあえず敵意は無いのだろう?」
「ああ、それは保証するぜ。」
「じゃ、このまま進みます。良いですね?ンフィーレアさん。」
「ええ、お任せします。」
一人で甕が複数詰め込まれた馬車を操る少年がそう答えると、一行はそのまま道なりに進んでいった。
「殿~、前方から監視保護対象一と、その護衛の冒険者たちでござる~。」
「ん?あれは・・・、ンフィーレアだったか。」
武技視力強化を使用し、レンジャー並みの視力を得たモモンが見た先には、冒険者を護衛にして馬車を操る薬師の少年がいる。
「周囲にいるのは漆黒の剣という冒険者ですね。」
「確か銀級の冒険者だったはずっす!」
「ふむ・・・。」
ナーベラルとルプステギナの声を聞き、どうしたものかと思考に沈むモモンガであった。
モモンガがこの転移してきた世界の情勢を探るために各地に放った影の者達の活躍で、ンフィーレアの特殊なタレントを知ると、彼の関係者の情報を一通り集めさせたのだが、なかなか愉快なことになっていた。
ンフィーレアは、あらゆるアイテムを使用制限を無視して使用できるという破格のタレントを持っているのだが、そんな彼がなぜ平穏無事に日常を過ごせているのか、その事に疑問を持ったモモンガだったのだが、彼の周辺を調べていくうちにその疑問は氷解した。何のことは無い、彼の能力を狙ったズーラーノーンと八本指とで既に秘密裏の協定を結んでいたという事だったのだ。
過去様々な闘争が一般人が知る由もない方法で多々行われ、その結果ンフィーレアに対して、手を出さない・出させないという内容の秘密協定が結ばれることになっていたのだ。
ただ、この事を知ったデミウルゴスとアルベドとパンドラがこういう結論に到った。これは既定路線の可能性が有ると。
この二つの組織は普段行っている活動が全くの別物である為、反目することが無いのである、その為秘密協定を結ぶこと自体はありえない話ではないと結論付けられたのだが、その後に結成されたンフィーレアを陰から護衛する組織が、あまりにも効率的に機能してしている点が問題視された。
そこでナザリックの頭脳たる三名が出した答えが、この二つの組織・・・何処かで繋がっている可能性があるというものだった。だが、この件に関しては証拠が一切見つからなかったのであるが、それが証拠とも取れるとデミウルゴスは言った。
つまり、このナザリックと同等もしくはそれ以上の隠密の者が間を繋いでいる可能性であり、これはつまり、プレイヤーの存在が陰にある可能性であった。
以上の事柄から、現在ンフィーレアに関しては監視保護対象として一定の距離を保ちつつ様子見と言うのが現在のナザリックの方針である。
さて、そんな非常に対応の困る相手が目の前から近づいている現状。モモンガはどうしたものかと思案に耽るが、どのように行動したところで、現在ンフィーレアを護衛する例の組織に見られるだろうことは明白であると判断、堂々とそのままエ・ランテルに向かう人が通って出来た道を進んでいくのだった。
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