次なる一手

ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ

 リ・エスティーゼ王国の宝、黄金の姫と国民から呼ばれ人気を一身に集めている王族である。

 いずれこの国を統治するであろう兄よりも人気度が高い為に、長男からは疎まれているが表立っての行動はしていない模様。

 次男は次男でラナーの頭脳を時々借り受け、王族の一員としての責務を果たしている。

 そんな中、ラナー自身はというと、自由気ままに過ごしていた。友人であるラキュースを伴ない王都を散策する姿をよく見るお転婆なお姫様である。


 国と同じ名前を持つ都市の中心に存在している、ロ・レンテ城内ランポッサ三世王の私室には、この部屋の主であるランポッサ三世と長男バルブロ、次兄ザナックと長女ラナー。さらにはガゼフとナザリックから出向しているグレンデラ軍のパ・ティツが居た。

 ガゼフによりもたらされた情報を聞き、ランポッサ三世が声を掛けこの場が設けられたのだが、報告を聞いた面々の顔色は芳しくはなかった。ラナーを除いて。


 遂に百年の揺り返しが起こりましか。あの方の言葉通りです。そして、話を聞く限り相当な力の持ち主だというのは確定ですね。ラナーはそう胸中で結論付けるとランポッサン三世にこう告げた。

「お父様。この度の件私に任せて貰えますか?」

「ん?ラナーよどうするつもりなのだ?」

「はい、まずは私自らお礼を申し上げに行こうかと思っています。護衛は蒼の薔薇の皆さんに頼み少数で向かおうかと。その時はティツ様。何方かに案内をお願いしたいのですが。」

「はっ。それでしたらガゼフ殿と同行した私たちの中から一人案内役としてお供させましょう。それと、この件は我が主に報告しますがよろしいですかな?」

「はい、私はそれでお願いしたいのですが、お父様?どうでしょう。」


「と、言う訳なの。ラキュース、護衛よろしくね。」

「急な呼びだしたから、何かと思ってみれば・・・。それは冒険者組合を通した正式な依頼として?」

「そうよ、後日組合の方に申請をしますから受けてね。」

「はー、解ったわ。皆には準備を進めるように言っておくから。もう少し詳しい話を聞かせて頂戴。」

 ラナーの自室にいつも通りメイドを通して呼びだされたラキュースは、友人であるラナーの急なお願いを無事に遂行する為に情報を聞き出す。

 エ・ランテルまではメイドと案内役一名と青の薔薇のみを供として馬車で移動。エ・ランテルに到着したら、黄金の輝き亭で旅の疲れを癒しつつ、トブの大森林を移動するための最後の準備を行い、先方から派遣された護衛と合流し、トブの大森林奥地にあるグラウンド・ナザリックという、神様の居城に行くことになっていた。

 そして、このトブの大森林内での護衛をする者の名が、モモンと言う戦士が率いるパーティだという事だった。

 一通り話を聞き終えたラキュースは、

「そうなると、日持ちのしない物は兎も角として、森に入る為の準備は王都で済ませた方がいいわね。」

「そうね、その辺りの準備に関しては、私とメイド二名の分も含めてお願い。」

 ラキュースは馬車での移動という事で、多少楽は出来るかと思いながら、ラナーの自室を退出すると仲間たちが待っている宿屋へと向かうのだった。ラナーとメイドの森林踏破用の装備をどうしたものかと悩みながら。

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