三匹を拾う
トブの大森林奥地。この地に築かれているグラウンド・ナザリック城建設現場では、今日も安全第一の精神の下ホワイトな運営体制でもって、ナザリック配下の者たちは決められた労働時間の中、日夜御方の為に働ける幸福と共に労働に励むという平和な生活を送っていた。
そんななか、遠方で戦闘する気配にいち早く気付いたのは、レンジャー技能を持ったアウラであった。
「ん?振動?どこかで戦闘でもあったのかな・・・、ん~、ちょっと気になるから調べておこうか。マーレ~、ちょっと遠くで何か起こっているみたいだから、調べてくるねー!」
少し離れたところで小さなインプに報告を受けていたマーレは、声を飛ばしてきたアウラに、「解ったよ~、おねーちゃ~ん!」と声を返す。その声を聞いたアウラは即座に振動の原因を探るため、フェンリルのフェンとイツァムナーのクアドラシルと共にトブの森に入っていったのであった。
野太い樹木が唸る度に、森に生える大樹が軋みを上げて倒れて行っている。
そして土煙舞う中に大きな人影が、同程度の大きさの人型の動く樹木と相対していた。
「グよ!ここは一旦引くのじゃ!」
そんな巨人の周辺でも同様の光景が広がっていた。複数体の樹木型モンスターによる他のモンスターの狩りである。
「俺は勇敢な戦士、引くことなどありえない。」
「そうは言ってもグ殿、この状況は些かマズイでござるよ。」
このトブの大森林にて圧倒的強者であるはずのこの三匹の魔獣を持ってして、打開できない事態となっている。
すでに、彼らが従えていた他の魔獣は樹木型のモンスターに捕食されてしまっていた。そん状況になってしまったが故に、西の魔蛇ことリュラリュースは撤退を進言しているのだが、先ほどから東の巨人と呼ばれるグというトロールはこれに一切耳を貸さずに攻撃一辺倒で、森の賢王と呼ばれる彼女もこの事態にグへと苦言を呈してるが、これも無視されてしまっている。
「えーい!賢王よ、もうここは持たん!儂らだけでも逃げるぞ。」
「そうでござるなー。グ殿ー!我らは先に逃げるでござるよー。」
リュラリュースの切迫した口調と比べると、やや緊張感に欠ける語調であるがこれでも彼女は精神的にかなり追い込まれている。
そんな時、樹上から掛け声とともに降り立つアウラが現れる。
「とお!」
小柄な人影は三匹がやっとの事で押しとどめるのが精いっぱいだった樹木型モンスターを、掛け声一つで鞭を撓らせていとも簡単に撃破してしまった。
「この辺りのモンスターにしては強いかな?」
と、三匹の魔獣に聞こえないように小声で呟くと、
「ねえ!、何があったのか教えてくれる?」
そういって、この状況の事を詳しく聞き終わるころには、何故かズタボロにされた東の巨人と縮こまる二匹の魔獣が居た。
「ふー、なんで話聞いただけなのに、こんなに攻撃的なの?コイツは。」
「申し訳ない。」
「いや、あんたが謝ってもさー。まー、ソレは後で教育するとして。あんたたちは一旦私の建ててる拠点まで退避しておいて、後はこっちで何とかするから。」
こうして、彼らトブの大森林に君臨していた三匹の魔獣はナザリックに所属することになり、教育を施されることになるのだった。
後日この事を報告された御方は、その中の一匹の見た目を大層気に入れられ、ペットとして自身の近くに置くことになり、彼女はハムスケと名付けられることになる。
そして、アウラの手によりパワーレベリングを施されて、見事なレンジャーへと成長するのだった。
また、今回の事態を引き起こした存在は、コキュートスと彼が指揮するグレンデラ1個パーティによって撃滅されることになった。
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