進出の準備
エンリがこの一週間ナザリックの知恵者たちによる教育で支配者としての教養を身に着けている間、モモンガは今後この世界へと進出するための準備を着々と進めていた。
その中には、有事の際にパンドラズ・アクターを初めとした、子供たちと行う戦闘での連携の確認であったり、冒険者として活動するためのアンダーカヴァーを考えたりであった。
他にもアウラとマーレにトブの大森林でグラウンド・ナザリックと呼ばれる拠点建造を指示したり、シャルティアとセバス、そしてソリュシャンにリ・エスティーゼ王国を始めとした、この世界の公的機関へと働きかけるための準備も並行して行せている。
これらの活動は、恐怖候の眷属で集められた情報を基にしてデミウルゴス監修の下教育が行われており、その教育が終わり次第シャルティア達はナザリックを出立し、王都リ・エスティーゼに向かう事になっている。
第六階層そこは広大に広がる地下世界。密林が広がる世界の中心にはアンフィテアトルムが鎮座する場所。
今この場所で頂上の者どもによる模擬戦が行われていた。
今回の模擬戦はパンドラズ・アクターとモモンガの連携テストで、相手を務めるのはコキュートスとその直近の配下数名だ。
冷気により大気が凍え、死霊術の邪悪な闇が蠢き、裂帛の気合と共に剣戟が宙を走る、そんな戦いが繰り広げられてはいるが、今回はあくまでも連携の確認。
世界の終りのような模様を見せるこの様相も、彼らにとってはまだまだ本気とは言えないものであった。
「やっぱり近接戦でコキュートスを相手にするのは大変だなー。」
どこか暢気な雰囲気の声を出しながらライトブルーの蟲王と切り結ぶモモンガは声を出す。
「コレモモモンガ様ガ齎シタ武技アッテコソ。」
コキュートスは今数多の武技と、ユグドラシル由来のスキルを駆使して戦っていた。故に現在のコキュートスは瞬間的にレベル百二十水準の戦士職と同等の戦闘力を発揮することが可能になっていた。
「ソレニ、今モモンガ様ハ一切魔法ヲ使用サレテイナイ状態デス。私ガモット強ケレバコノ様ナ手加減ヲスルコトナク訓練ガ行エタコトヲ思エバ、不甲斐ナイトシカ。」
「そういうなコキュートス、それは単純なレベル差で起こった事だ。技量ではお前の方がはるかに上だよ。」
トブの大森林。
そこはカルネ村から現地民がいけない程の奥地である。
今ここではアウラとマーレの指揮の下に、対外的な拠点造りが行われていた。今後この世界の国の賓客を迎えるための表向きの場所として。
森は切り開かれ広大な敷地面積を確保、さらには地下にもその手を伸ばして建造が行われている。外観はナザリック城を模しているが中身は全くの別物で、モモンガを始めとしたナザリックの者たちの安全を第一に考えられて設計されたものである。
ナザリック第九階層にある学園の一室では、シャルティア・セバス・ソリュシャンを初め外部で活動予定の者たちが、デミウルゴスが纏め上げた情報を基に今後の活動をするための勉強会を日夜開き、その成果を着実に上げていた。
視覚的には最も判り辛いものであるのだが、彼らのこの一見地味に見える活動は、今後を見据えたものである為、この勉強会に参加するナザリックの子供達の中に、手抜かりをするものなど皆無であった。
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