カルネ村

 俺はみんなと穏やかな朝食を取った後、執務室に入り上がってきていた報告書の決済をしている。

 今のところ各階層で異常は見当たらないが、念のために階層守護者は担当階層に詰め、経過観察をするという事。

 第九・第十階層に関しては、階層守護者が持ち回りで当面の間様子を見る事。

 グレンデラ湿地帯に於いては、POPするモンスターから資材を集めようとしたところ、以前のようにデータクリスタルがドロップしない事と、退治したモンスターの死体がその場に残った事。

 これを受けて生産、研究開発部からはこれらの素材を使用した新しいアイテムと、既存のアイテムが生産できるかどうか、実験を行う旨の報告があった。

 報告書を見るにナザリック内であれば、安全を確保できているようだが、グレンデラ湿地帯はPOPするモンスターがこちらを襲ってくるようで、素材の供給に困ることは無いものの、少々危険な状態だという事か。

 ただ、彼らは成長するし、時間が経てばその辺りの問題は解決するか。

 上がってきた各種報告書を決済しつつ修正をした書類に関しては、アルベドを通して各部門にさらに調べるように伝え、本日午前の執務を終えた。


「さて、セバスよこれで溜まっていた物は全て消化したかな?」

「はい、モモンガ様。これにてすべてで御座います。」

 今この部屋には、セバスが執務の手伝いをしてくれ、ナーベラルが俺付きのメイドとして控え、来客の対応をしてくれている。

 アルベドは、今度開かれるナザリックの子供達との面談をする時の時間調整の為、各階層に詰めている守護者たちの下に出かけている。

 そして、今俺の肋骨の内側ではルベドがご満悦の表情で、モモンガ玉に頬ずりをしている。肋骨の間から天使の羽が飛び出ていて、肋骨の骨を擽ってこそばゆいが、まー、好きにやらせてあげよう。

「ふむ、では昼食の時間は何時頃かな?」

「はっ、先ほど料理長に準備のお願いをしましたので、三十分ほどでご用意できるかと思います。」

「なるほど、では、その間少し外の様子を見てみるか。」

 えーっと、どこにしまってたかなー。あーあったあった。執務室の机の上に設置してっと。


 モモンガはミラー・オブ・リモート・ビューイングを取り出し鏡に後付けで搭載した、各種情報対策系魔法を展開させると、ナザリック外の様子を確認する為、鏡を起動させるのだった。


「ん?これは・・・、大分操作感が違うな。」

「モモンガ様、これも異界渡りの弊害でしょうか?」

「そうだな、操作自体は出来るのだが・・・、慣れるまで少し時間がかかりそうだ。なに、この周辺を見ている内になれるだろうさ。」

「流石モモンガ様。その勤勉なる姿勢、このセバスも見習いたく思います。」

「はは、セバスよ、これほどまでに私に尽くしているのだ、中々時間を取るのは大変ではないか?」

 モモンガは、ミラー・オブ・リモート・ビューイングの視点を慣れない手つきで操作しながらセバスに言葉を返す。

「いえいえ、私たち執事及びメイド一同、モモンガ様にお仕えする上で大変などど思うことなど御座いません。」

「そうか、その言葉嬉しいぞ。」

「は、有難う御座います。」

「しかし、見事に何もない平原が続いているな。」

「そうでございますね。町や村などの間隔がかなり開いているのでしょうか。」

「うむ、先行偵察を行った報告書を読む限り、エ・ランテル・・・だったか、人間種の住む大きな都市と、それの周辺に農村があるという話だった筈だが。人口はそれ程でもないのかな?」

 暫くするととある村が見えてきた。遠くに臨む雄大な山々の裾野から広がる広大な森林の傍らにポツンと存在する村、規模からして森を開拓するための村か?しかし、この状況は・・・。

「セバス私はこれからこの村に行く。」

「私もお供します。」

 俺はセバスを見る・・・、やはりたっちさんの子だな。

「ふむ、セバスは私の供をせよ。ナーベラルはここにデミウルゴスとアルベドに現状を伝えて呼んでおいてくれ。それと、デミウルゴスにはグレンデラ軍からアライアンス1で軍を抽出し、編成は人間の村が騎士に襲われているのを考慮して行うように伝えてくれ。」

「畏まりました。モモンガ様。」

「頼んだ。行くぞ、ゲート。」

 俺は、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンのレプリカを手にして、ゲートを潜った。


「おう、こんな辺境にいるのはもったいないものを持ってるな!」

「はっ、しかし、少々傷つけてしまいまして。」

「なーに、どの道長居は出来んのだ、さっさと出して終わらせるさ。」

 私の近くでそんな話を身勝手にしている騎士達が居る、ネムは・・・あ、あそこねまだ手を出されていない・・・。でも、私は・・・、


 ほんとこの隊に参加していて良かった、これほどの女と宜しくできるんだからな。まずは邪魔な服を切り裂いてっと、あー反応が薄いなー。大分出血してるからだな。でも、嫌がっていない訳ではない、ヒヒヒ、良い表情だ、ほれっ、お前の大事な部分もこれで丸出しだぞ!ハハハッ、胸をさらけ出した時よりいい表情じゃないか!


 私はここで、終わる・・・、たとえ運よく生き残ったとしても・・・、ううん、もう無理ね私はここで死ぬんだ。ネム・・・ゴメンね・・・おねえちゃん、守れなくて・・・。

 でも、すぐにでも犯してくるだろうと思っていた、醜悪な下半身をさらけ出した目の前の騎士、それに私が身動きが出来ないように手を拘束している騎士の動きがとまっている?

 その二人の騎士の視線を追ってみると、死神が居た。あー、私、これで楽になれるんだ。

「絶望のオーラ。」

死神様から溢れ出した黒い何かが、私を避けて騎士に触れた次の瞬間、私を犯そうとしている騎士達の力がなくなって、周囲からも何か倒れ込むような音が聞こえてきた。

「ルベド。」

「わかってる、モモンガ様。」

 死神と・・・あれは天使様?

 死神様の身体の内側から赤い髪の天使がそっと出てくると、

「ライト・ヒーリング。」

 私は天使様からの祝福を受けたようだ。体につけられた傷が治っていた。

「これで、身体を包むと良い。」

 そういって、死神様が差し出してくれたのは、すごい良い肌触りの見たこともない黒い布地だった。私は、

「ありがとうございます。」

と、涙を流して感謝の言葉をいう事しか出来なかった。

「おねちゃーーん!」

 ネムが駆け寄ってくる。ネムを捕らえていた騎士は・・・、どうやら死神様に命を刈り取られたらしい。

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