第2話 獄中にて


(゜ω゜)








 ……アハッ⤴︎!アハハハハハッハハ!まじで笑うしかねぇぜ!



 檻の中って意外と暖かいんだなぁ。この毛布ペラッペラでスライスチーズみたいなんだけど!便器の中もまぁ臭い事臭い事!ほんとここに来てから始めての事だらけだよ!現代のジャパンという国では味わえない屈辱的仕打ちだよ!……









「おい!こっから出せ!不当逮捕だ!不当逮捕!善良な一市民であるこの俺がこんなクッサイ牢屋にいる事自体おかしいでしょ!だれか一般教養のある方、僕の無実を証明してください!僕はここにいるべき人間じゃありません!俺は無実だ!弁護士!弁護士を呼んでくれー!」


 彼の檻をガシャンガシャン揺らして行ったアピールは儚くも他の囚人の笑いのネタになるだけに収まった。


「(うるせぇ筋肉ダルマどもが!みせもんじゃねぇんだよ!)」



 周りの人間から反感を買うわけにも行かず。彼は文句を心の中にだけ爆発させた。




「うるさいぞ!27番!」



 少し経つと騒ぎを聞きつけた看守の見回りが彼を注意しに現れた。



「檻から手を離して大人しくしていろ!」


「あぁん!うるせぇ!なんかあんまパッとしない見た目しやがって!」


「なんだと貴様!いいから手を離せ!」


「ハイー離したーー!ていうかさ今どき貴様呼びとか流行らんでしょ。なんていうかダサい?ってゆーか!」


「私を愚弄するか!」



 看守がさらに激昂すると同時に周りに独房から笑いの渦が巻き起こる。居心地が悪くなったのか看守は「覚えていろよ!」と顔を真っ赤にしてお決まりの捨て台詞を吐き持ち場に戻っていった。



 この世界に来て半日経った。




 彼の状況は悪くなる一方である。





(゜ω゜)


 それは数時間前ドラゴンに掴まれてから30分ほどしたあたりだろうか。荒々しいフライトのため彼の顔が右往左往大暴れしていた時である。ドラゴンは急にスピードを落とし始めた。


薄眼を開け、恐る恐る辺りの様子を伺った彼の目に入ったのは、外壁に囲まれた1つの国だった。



外側を大きな壁で覆われ、内側には沢山の家々や協会のような建物が立ち並んでいる。そして中心には見るからに大きな宮殿がでんと立っている。市場の場所には人らしきらしきものが歩き回っているのも確認できた。



「(これ、国か?)」



 空から見えたその様子に彼は驚きを隠せなかった。見るからに大きな宮殿しかり、所狭しと立ち並ぶ家々を見た限り、まるで中世のヨーロッパにタイムスリップして来たかのような感覚に陥った。






「着陸するぞ!」



 女の声がした。するとドラゴンはいきなり真っ逆さまに急降下始めた。その影響で彼の顔はまたまた大変な事になったがなんとか持ちこたえ、今度は止まったかと思ったら次は庭園のような場所に振り落とされた。


「くそ、痛なぁ〜。もっと丁寧に扱えや!」


「黙れこの!衛兵!そいつをひっ捕らえろ!」



 周りにはいつのまにか何人もの兵隊が彼を取り囲んでいた。まぁこの後は御察しのように武術経験なんてあるわけもない彼は結構あっさりと数の暴力で衛兵たちに捕まった。




「そいつは王宮の宝物庫に忍び込み、由緒正しい財宝を盗み出そうとした上!騎士である私の事を愚弄した愚か者だ!今すぐ牢屋に投獄せよ!」


「だから人違いだって。俺はこんな国にも来たことないし、宝物庫の場所も知らない!ほんと無実だって!」


「うるさい!投獄!」


「くそっ、離せや。不当逮捕、不当逮捕だぁぁ〜〜〜。」




 彼の無念の声が辺りに響く。そして衛兵たちに連れていかれた場所が今いるこの牢獄なのだ。

 彼のここ牢獄の感想は

「(ここは本当ヒドイ、まじでひどすぎる。)」といった具合だ。

 飯はまずい、日の光は当たらない、なんか臭い、例えるなら地獄の肥溜めみたいな場所だ。携帯も荷物も衛兵に持っていかれ完全に退路は完全に絶たれれてしまった。


 「(くそっ、落ち込んでいても仕方がない。取り敢えずここまでの情報を整理しよう。)」


 彼は意外にも冷静にこの最悪な状況に立ち向かおうとした。半日の間じっと我慢し、彼が行ったのは見回りの話を盗み聞きする事だった。耳を済ませ衛兵たちの言葉を一言一句記憶してしていく。

すると早速、有益な情報を手に入れた。話を聞いたまとめた限りでは、この国はフリッズ王国というれっきとした国家らしい。真ん中に見えたのはこの国の城だったのだ。


 城が赤かったのはこの国の象徴が赤の神シウテクトリだからだと言っていた。象徴が神様とは、これでもかと異世界っぽさが出ている。

そしてあの忌まわしい銀髪ハリウッドはこの国の竜騎士ドラゴンナイトの資格を持つ唯一の騎士で名前はリリー・べイヴという。絶世の美女で剣の腕も立つ、しかも勇猛果敢で国内外からも多大なる人気を得ているとか。



「(リリー・べイヴね………よし覚えた。


 ……いつか覚えてろよ。)」



眉を寄せリリー・ベイヴと脳内にその文字を焼き付けた後、『絶対復讐してやる』と強く心に決めるのであった。




「(にしてもどうするか?…このままじゃぁ異世界で何もできなくて無駄死にする可能性が出てきたぞ。)」




 そう今のこの状態のでは復讐するとか以前にどうしようもない状況だ。まず最初の課題はどうにかここから出なくてはいけないという事だ。そして次に荷物の確保も念頭に置いておかなければいけない。


「(少なくとも持っていかれた荷物と携帯は返して欲しい。あれがないと家に帰れない。戻る以前の問題だからな。)」



「罪人ども飯の時間だ!」



 いつのまにか辺りは暗くなり夕食の時間に差し掛かっていた。看守の号令で配膳に盛られた食器が運ばれる。ここの食事は不味い以前の問題で酷いのだが背に腹は変えられない。あれだ、嫌いな給食は牛乳で飲み込んでおけばいいと思う小学生と同じだ。


 だが一向に彼の牢屋には配膳が配給されなかった。



「あの〜、ご飯を貰ってないんですけど。」


「ん?あぁ、27番。貴様には飯をやるなと言われている。」


 何故と言う前に彼の牢獄に一人の看守が近付いた。それはさっき捨て台詞を吐き逃げ出したあの看守だった。


「さっきはよくもやってくれたな。ふふふ、お前のような立場のわかっていない新人囚人は看守に権限により一週間飯抜きだ!」


「はぁ?そんなの認められると思ってんのかよ!囚人にも人権があるんだぜ。人権侵害だ!」


「あぁ残念な事に今の国王の法改正でそういう奴が増えたがな、暴力は極力振るうなくらいしかその法に拘束力はない。残念だったな。」



そうここは異世界だ。日本のように囚人にも人並みの生活をさせようとする腑抜けた思想はない。おそらく奴隷もこの世界にはいるだろう。そんな世界の人間が囚人をどう扱うなんて目に見えている。人権ってなに?状態なわけだ。


「そういうわけだ。一週間頑張って生き延びろよ、27番。」


 そう言うと看守は高らかに笑いながら去っていった。



「おい!このクソ看守!俺は27番じゃねぇ!いつか、いつか絶対後悔させてやるからな!」



 彼の悲痛な叫びも虚しく消え、グゥ〜とお腹が鳴った。


「(あ〜〜、腹が減って死にそうだ。このままじゃ脱獄する前に飢えて死んでバットエンドになりかねない。)」


「(大体普通の異世界ものだった序盤でメインヒロインとかとエンカウントしてるもんなんだよ!あの銀髪は…………なしなし、どんなに顔が良くても性格がな。俺はあいつをメインヒロインとは絶対認めないぞ!)」



 いつか出会うであろうメインヒロインに期待を膨らませる間も彼の腹は大きく鳴くのを止めない。もう今ならそこら辺落ちてる石ころなんかも食べれるくらいなってきている。

 

 ……異世界モノの小説で石ころ食べる奴の前例があっただろうか?




「そんな主人公はいない。」





 そんな時だった。




「おい、これ。」


 鳴り止まないお腹を抑えてうずくまっていると隣の房から手が伸び、料理の乗った皿が出てきた。空腹にかられた俺は思わずその皿に飛びついた。


「これ良いのかよ!」


「あぁ、良いぜ。」


「ありがてぇ!」


 隣の房から伸びた手はぐっとサムズアップしていた。出てきた料理は対して美味しくはなく、安い定食屋よりもまずい飯だがこの時だけはとても美味しいように感じられた。空腹は最高の調味料とはうまくいったものだ。


「あ、ありがとうな。」


「いいよいいよ。こんぐらい。さっきは中々面白いものを見せてもらったからね。これだけでも結構お釣りが出るよ。」



 彼は房から顔をだし隣の房を覗く。隣の房にいたのは一人の男だった。年は彼と変わらないくらいだろうか?顔は少し童顔で頰に引っ掻かれたような傷跡がある、身長は少し小柄で彼の方が大きい。なんか元の世界だと男子高校生やってそうな感じだ。一言で言うと普通にどこにでもいそうな華奢で小柄な体格の男だった。



「ここではあまり看守に楯突くような奴はいないからさ。君みたいにああやって正面から楯突いた奴は初めてだよ。」



「ふんっ!ああ言う奴は権力に物を言わせて俺みたいな弱者を痛ぶるんだよ。裁判系のゲームとかには山程いたよ。」


「ゲーム?まぁいいや。……ふぅんそうかい、君は自分を弱者って言い切るのかい。」


「そりゃそうだろ。ここにいる筋肉ダルマどもの中だったら俺は一番弱いね。」


「確かにそうだ。やっぱり君は面白いね。」



 そう言うと童顔の男はククと笑った。



「僕はルル・トランクだ。君は。」



「…板元 健だ。」



「イタモト?変わった名前だな。東欧からでも来たのかい?」



「日本っていう最高で最低の国だよ。」



「ニホン?聞かないねぇ。」



 意外にもルルとの会話は結構弾んだ。彼自身、内心異世界に来てやっとまともな会話が成立した気ができたと盛り上がっていた。場所は最悪だけど。



「それそうと君は宝物庫に侵入したって聞いたけど、どうやったんだ?」


「だから違うって。俺は盗みも殺しもした事がないほんとに善良な一市民なんだよ。」


「善良な一市民が看守をあんな風に罵倒できるとは思えないけどね。」


「俺の特技は相手に言葉をまくし立てて丸め込む事だからな。あんなの余裕のよっちゃんですわ!」


「はは、やっぱりケンは面白いね。」



 ルルの言葉に彼は少しびくりとした。



 「(こいつ!いきなり他人を名字で呼ぶとはさては陽キャだな!よく見ると顔もちょっとイケメンだし………でもいい奴そうではある。)」



 捻くれているが為こういったどうでもいい事に対しては少しだけ神経質なところが彼にはあった。それは例え異世界に来たとしてもそのスタンスは変わる事はない。



「それでさぁ、ケン。ちょっといい話があるんだけど。」



 ルルはニヤっと笑い悪そうな顔でこちらを見ていた。



「実は、今日ここから脱獄する予定なんだけど。君も来ないかい?」


 それはいきなり過ぎる誘いだった。彼は脱獄する事にも驚いたし、それを誘ってくる事にも驚いた。

 教室で隣の席になるとはわけが違う。ルルがどんな犯罪を犯したは知らないが牢獄に入っているということは何かしらはしたということになる。そんな奴のことを信用してもいいのだろうか。


「でも本当にここから出ることなんかできるのかよ。もししくじりでもしたら……」


「大丈夫大丈夫!こういうの慣れてるから!それに今日のここはなんでか知らないけど警備が薄いから脱獄しやすいと思うよ。それにせっかく友達なったんだし、一緒に脱獄したいんだ。」


 


 その言葉に彼は少なからず動揺した。


「(真正面からそんな事言ってくれる奴なんて……初めて見たよ。)」


 そして照れ臭そうな笑みを浮かべた。



「よし分かった!行こう!」



「ありがとう!なら一緒にこの地獄の牢獄から脱獄しようじゃないか。」



 ルルの話ではこの監獄は深夜になると警備が甘くなり、闇夜に紛れれば結構簡単に脱獄できるらしい。それに今日は特に警備が手薄になっている。ここを出た後は行商人の荷車にうまく隠れれば明日の昼にはこの国から脱出できる。



「まじで、それほんとかよ!?」


「まじだよマジ。問題は牢屋の鍵だけど。」



 ニカっと笑うと右手からチャリチャリと鍵が何個も繋がれている紐があった。



「昼に君と看守が言い合いしてる内に盗んでおいたんだよ。要するに君のお陰で最後のピースが揃ったってわけさ。」


「いやお前すごいな!」


 ハイスペックなルルの手際に感嘆の声が漏れる。そしてなんとなくルルがどうして捕まったのか分かった気がした。




 そして後はこれを決行するだけとなったふとある事がよぎった。



「なぁルル。もしこの国を出られたとして、その後はどうすんだよ。俺ここら辺の地理とか分かんないし…。」


 それはもっともな意見だった。知らない土地しかも異世界になんて彼の安息の地があるはずもない。そもそもここは日本でもなんでもない。あり得ないことが現実なっているかもしれない世界なのだ。そんな世界をあてもなく彷徨うなんて無謀にも程がある。


 だが、ルルはそんな彼にニカッと笑ってみせた。



「それなんだけど、僕はこの街であらかた稼いだら港で海賊やる予定だったんだ。だからケンもここを出たら一緒に海賊やらないか?今はちょっとドジって捕まって監獄ここに捕まったわけだけどね。でも君とならできそうな気がするんだ!どう…かな?」




 不思議にもその言葉には謎の安心感があった。あって間もないはずの奴なのになんだか初めてあった気がしないのは気のせいだろうか?

 それに海賊をやるといってもここは異世界だ。手に入れた財宝も天候を操るだとか、時間を止められるみたいなもののあるかもしれない。もしかしたら元の世界に帰ることのできる道具が見つかるかもしれない!という期待が彼の頭の中に浮かんだ。



 少し悩むそぶりを見せたが、その答えは決まった。



「よし分かった!一緒に海賊やろう!」


「いい返事をありがとう。脱獄の決行今夜12時だ!」



 二人は顔を合わせハイタッチしあった。




( ^ω^ )/\( ^ω^ )




 監獄から受刑者のイビキの音以外が聞こえなくなった静かで深い夜。彼らの計画を実行に移した。



「よし、鍵は外れたよ。」


「サンキュー。」



 音を殺し気配を殺し、慎重に鍵を開けたケンとルルは急ぎ足で廊下をかけた。途中看守と鉢合わせしそうになりながらもルルがいち早く気配を察知し暗闇に紛れるなどしてやり過ごした。



 警備が甘いという話は本当で結構あっさりと彼らの脱獄は成功した。なんだか拍子抜けである。そして彼らは急いで牢獄から離れておこうと走り出した。



「よし!後は行商人の荷車に忍び込むだけだ。」


「あぁ!……あっ!でもちょっと待って。」

「(そうだ思い出した!俺のバック置いてきたままだった。取りに行かないと。)」


 もう一回牢獄に入らないと行けないのは少し危険が伴うがあの警備なら問題ないだろうと思い。ルルを呼び止めた。



「どうしたの?」


「俺、荷物があってな。罪人の荷物って監獄のどこに運ばれるんだ?」


「えっ?」



 するとみるみるうちにルルの顔が青ざめていった。



「ケン!なんでそういう大事な事を言わなかったんだ!」


「な、なになにどうしたんだよ。そんな大声出して!」



 凄い剣幕でルルが叫んだ。




「いいかい!罪人の荷物は監獄に保管されることはないんだよ。暴動や反乱の際武器に使用される危険性があるからね。だから罪人の荷物や武器は、ある一箇所に保管されるんだ!」


「…どこ?」


「王宮だよ!」



 ルルは興奮して指をさす。その先にあるのはドラゴンの上から見えた一際大きな建物。だが上空から見るのと地上から見るのとでは迫力が段違いだった。10メートルはある石塀が凄まじい圧迫感を与える。そしてその後ろにほんの少し見える王宮はさながら魔王の最終ボスの手前を思わせた。



「王宮の警備は監獄とは段違いだ!並みの盗賊じゃ忍び込む事なんて出来ないよ。」


「……そっか。」


「悪いけど、その荷物は諦めた方がいいね。「分かった。諦めるよ。」いやだから無理に決まっt……えっ!?いいの、そんなあっさり!」



 おそらくその王宮は日本で言うところの皇室クラスの警備もうで守られているんだろう。チートを持ってるであろう主人公様なら全然楽勝だとは思うけど、残念な事に今ここにいるのはチートも無ければ武器になるものないただの一般ピーポなのだ。


 「(うん、無理無理。人生諦めが大事だってこりゃ。)」



「いいよいいよ、ルルにそんな危険を背負わせる訳にもいかんやろ。ルルには迷惑かけっぱなしは嫌だからな。」


「でも、大事なものなんじゃないの?」


「いいのいいの。ちょっとの水と着替えとシャーペンぐらいしかないんだから。痛くない痛くない。」

 「(まぁ本音を言うとスマホとイヤホンは返して欲しいですはい。俺音楽を定期的に聞かないと死ぬ病気だけど。くっ!ここは我慢して死のう。)」


知り合って間もないルルを巻き込められるわけもなく彼は自分の唯一の現実世界の思い出をあっさりと諦めた。



「じゃ!そんな事より荷車探そうぜ。」


「……………。」


「ほら、どうしたよ。早くしないと夜が明けるぞ。」


「行こうよ!」


「えっどこに?」


「だから王宮!君の大切な物を取り返しに行こうよ!」


「いやいや、やめとこうぜ。そんな危険犯せないだろ。」



 大きく両手を広げてジャスチャーを加えるがルルは引き下がらない。



「いーや!行かなきゃダメだ!ここで諦めたらきっと後悔するよ!」


「でも、警備がスーパーマックスなんだろ。行くだけ無駄でしょ。」


「でも、でも。……。」



 さっきと立場がまるで逆になっている気がするが、どうやらルルは本当に彼の事を友達と思っているようだ。赤の他人にならここまでしようとする奴はいないだろう。



「…分かった!こうしよう!俺が一人で王宮の宝物庫に乗り込んでいくから。お前はいち早くこの国を出て待っていてくれ。場所は……海がある街だな。そうだなそうしよう!」


「一人で行く!?そんなの無理だよ!出来っこない!」


「ふふふ、心配するな。俺にはな、隠されたスキルがあるのだよ。」


「えぇ!?君スキル持ちだったの!どんなスキル!」



 もちろんそれはケンによる嘘であった。だが思いの外ルルの食いつくが良いのは何故だろう?



「ま、まぁそれは海のある街で再開したらで話すよ。会ってちょっとしか経ってないんだ。お前がそんなに首突っ込むことでもないだろ。」


「時間なんて関係ないよ!君と僕はもう友達だろ。」



 


 さっきもそうだが彼はその言葉には異様に反応を示した。だがさっきとは違い彼の心はあまり穏やかではなかった。



 …………俺はいつから友達なのかじゃなくて、




「とにかく!俺の言葉を信じてくれ。もし二、三日経っても俺が来なかったら。まぁそう言うことだ。お前一人で海賊になってくれよ。」


「そんな。あっ、ちょっと!」



 俺はルルに返答を待たず王宮に向かって走っていった。


「心配すんなって。俺は大丈夫だから。」



 大急ぎでルルから離れる内に彼の心の中に罪悪感がたまっていく気がした。



 一つは嘘付いていること、もう一つは友達だと言ってもらった時素直に喜べなかったこと、最後は……ルルの事を本気で信じることができなかったことだった。





「………俺ってやっぱりクズだよなぁ。」




 彼は皮肉めいた笑みを浮かべそんな事を呟いた。




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