第49話 アイスなら作れそう
チョコはしらばく手に入らないけど、他に何か作れそうなデザートはないかな。
今手に入るのは、小麦粉、卵、万能調味料、牛乳かぁ。
ホットケーキは作れるけど、お肉をたくさん食べたからあそこまでボリュームのある物は食べられないかなぁ。
レストランのコース料理だと、最後にアイスが出てくることが多いけど……。
そうだ! アイスを作ればいいんじゃないかな。
レシピを探すと……あった。
これなら簡単に作れそう。
牛乳 100cc
卵黄 2個分
砂糖 30g
バニラエッセンス 少々
生クリーム 100g
バニラエッセンスがないけど、とりあえずある物だけで作ってみようかな。
う~ん。でもそのまま錬金釜で作るのも味気ないなぁ。
お客さんの前でパフォーマンスしながらアイスを出すのってどうかな。カッコいいよね。
ずっと前に人気のカフェでアイスを目の前で作ってもらったことがあるんだけど、あれを再現できないかなぁ。
「ねえ、オコジョさん。この世界に氷の魔法ってある? 使える人はいるかな」
私の質問がこの世界の常識だと、知らないと思われたら怪しまれるかなと思って声を潜める。
「この部屋にも使える人はいると思うよ~」
じゃあ、ありふれた魔法なのかも。
良かった。それなら気軽に頼めるね。
あとは金属製のボウルが必要だけど、とりあえず実験する為には鍋でもいいかな。
「それから、錬金釜で途中まで作る事ってできるかな?」
「できるけど、加減が難しいと思うよ。途中でやめればいいんだけど、タイミングを間違うと、失敗して真っ黒になっちゃうからね」
ポーションとか籠なら失敗しても品質が落ちるだけなんだけど、なぜか料理は錬金に失敗すると真っ黒な謎物体になっちゃうんだよね。
でも、失敗は成功の元って言うし。
チャレンジ精神って大事だよね!
私はお店の人に牛乳と生クリームを用意してもらった。デザートを作りたいって言ったら、作り方を見たいとのこと。
「別に構わないですけど、錬金釜で作ると途中の手順が飛ばされちゃうから、参考にならないかもしれませんよ?」
フルーツを持ってきてくれてからずっとこの部屋にいる、料理長さんらしき一番大きなコック帽をかぶっている人が「それだけでも十分です」と首を振った。
「お嬢様は先ほどから、我々の知らない調味料を見せてくださっておいでです。手に入らない物は諦めるしかありませんが、これから作る物は私どもにも手に入る材料ですから、それがどのような料理になるのかこの目でしかと見ておきたいのです。それに材料が分かれば、後は試行錯誤して作れますから。もちろんレシピは買い取らせて頂きたいと思います」
レシピかぁ。
マヨネーズのレシピもそうだけど、元々私が考えたレシピじゃないし……。
と、考えていたのが分かったのか、ジークさんが声をかけてきた。
「メイ。料理人にとってレシピは財産だ。気軽に無償であげてはいけない」
えーっ。
タダでもらえたら嬉しいんじゃないの?
「高額でなかなか出回らないレシピを使ってこそ、格式のある料理店だと思われるからな。誰でも手に入るレシピの料理を提供するならば、家庭料理で十分だと
そっかぁ。
つまり、ブランドみたいなものかな。
う~ん。
あ。そうだ。
「じゃあ私が商業ギルドのギルド長であるヴィクターさんにレシピをお譲りするので、ヴィクターさんは私においしいお肉を譲ってください」
「……は?」
いきなり話を振られたヴィクターさんは、切れ長の目を丸くした。
「私が譲ったレシピは、ヴィクターさんが好きなところに提供してください」
「それは……商業ギルドにとっては願ってもないお話ですが、それではメイ様にとって何の得にもならないのではないでしょうか。我々商業ギルドは売り手と買い手がお互いに利益を得ることを前提としております。それではメイ様にとって不利なお取引になってしまいますよ」
ヴィクターさんって、公平な人なんだなぁ。
さすがに商業ギルドのギルド長だけはあるってことかな。
私が一方的に不利益をこうむらないように提案してくれてる。
「でも、そもそもこのレシピは私が考えたものじゃないし……。言うなれば、界渡りの魔女が集めたレシピなんですよね」
ほら、とレシピが書いてあるページを見せたけど、皆首を傾げている。
どうしたんだろう。
「あのねぇ、メイ。その本は、メイにしか文字が読めないんだ。錬金の才能のない者には読めないんだよ。逆に言うと、それが読めるからこそ、メイは界渡りの魔女の後継者なんだ」
えええええええ。
そうだったのおおおおお!?
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