第45話 よ~し、食べるぞ~♪
すると突然うさ耳おじさんがお腹を抱えて笑い出した。
おお~。元気になったみたいだね。良かった良かった。
「ジーク、ずいぶんおもしろい子を連れてきたな。伝説級の薬を作っておいて、その対価が肉料理だとは」
「……おもしろいと言える兄さんの感性もおかしいだろ」
げんなりしたようなジークさんとは対照的に、うさ耳おじさんはニコニコしている。
「そうか? お前は冒険者をやっている割には頭が固いな」
「兄さんが柔らかすぎなんだ。……メイ、本当に報酬は肉料理でいいのか?」
ジークさんに改めて確認されるけど、これだけは絶対譲れないですよ!
「食べ盛りだから切実です。おいしいお肉料理が食べたいんです! あとできればレシピも教えて欲しいです。それから定期的においしいお肉を買えるようにしてください。お願いします」
そう力説すると、うさ耳おじさんは笑いながら頷いて、隣のヴィクターさんに尋ねる。
「そういえば最近黄金牛の肉を入荷したと聞いたが、どの店に卸したんだ?」
「金の鹿亭と銀の枝亭です」
「格式張らぬ方が良いだろう。銀の枝亭に席を用意してくれ」
「ヘルベルト様もお越しに?」
「私が礼をする立場なのだから当然だな」
「かしこまりました」
「では、まず銀の枝亭でおいしい肉料理を提供しよう。レシピは……そうだな、さすがに食堂のレシピをもらう訳にもいかないから、うちの料理長に用意してもらおう」
やったー!
レシピもゲットだー!
レシピさえあれば、材料を揃えて錬金釜に入れてぐるぐるかき混ぜるだけでおいしい料理ができるんだもん、凄いよね。
これからは肉も野菜も思う存分食べれるようになるぞー。わーい。やったね。
あとは魚料理のレシピもあれば完璧かなぁ。
つまり、レシピさえあればこの世界のどんな料理も食べれるってことじゃない?
そしたらいつか世界中を回って、色んな国のレシピを集めたいなぁ。
「黄金牛のお肉っておいしいんですか?」
「そうだね。幻の肉って呼ばれてるよ。警戒心が強くて滅多に見つからないんだけど、霧の森に現れたのを僕たちが狩ったんだ」
こそっとクラウドさんに聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
おお、ジークさんたちが幻の肉をゲットしてきたんだ。それを食べられるなんて、ラッキー! どんな味かなぁ。
黄金の牛ってことだから、松阪牛みたいな味かな。
楽しみ~♪
うさ耳おじさん……なんてもう言っちゃいけないよね。私たちはリンツの領主であるヘルベルトさんたちと一緒に銀の小枝亭へ向かった。
ご飯を食べるところにロボを連れていっても大丈夫なのか心配だったけど、個室を用意してくれてるから大丈夫ってことだった。
良かったぁ。
滅多に食べられない絶品お肉みたいだから、皆で食べたいもんね。
そうだ。コッコさんにもお土産をもらって行かなくちゃ。ペルシオは……馬だから、肉食じゃないかもしれない。でもペガサスだし、どうなんだろう。
一応オコジョさんに確認してみたら、ペガサスは草に含まれる魔力を食べてるんだって。
ポーションの材料になる薬草も大好物みたいだから、後であげようっと。
そして到着した銀の小枝亭は、格式張らないお店のはずだったけど、十分立派なお店だった。
もっとカジュアルなお店を想像してたけど、領主が食べに行くお店なんだから、そこら辺の食堂のはずがなかった。
お店の支配人みたいな人に案内されて、広いお部屋に通される。
ロボを抱っこしたまま座ろうとしたら、お店の人が部屋の隅に用意されたロボ用のお皿の前に案内された。
「じゃあロボはここで食べていてね。ちゃんと大人しくしてるんだよ?」
「わんっ」
「うん。いいこいいこ」
おりこうさんにお座りをするロボの頭を撫でて、席に座る。どこで手を洗えばいいだろうと思っていると、お店の人がクリーンの魔法をかけて綺麗にしてくれた。
クリーン、便利でいいなぁ。
私には魔法が使えないから、錬金で何か代わりの物を作れないかな。除菌クリーナーみたいなの。
多分、原料はアルコールだよね。
そういえばアルコール100%の除菌スプレーってあったなぁ。それなら錬金で作れそうだし、後で錬金の本をチェックしてみよーっと。
着席すると、前菜から順番にお皿が運ばれてくる。
ふむふむ。テーブルマナーはあんまり変わらないのね。
外側からナイフとフォークを持って、まずは前菜をぱくっ。
「……味がない……」
葉っぱにオリーブオイルをかけて、そのまんま食べてるみたい。
うわーん。ドレッシングが欲しいよ~。
うちの庭で採れる野菜はそのままでも凄くおいしいから必要なかったけど、普通の野菜を食べるならドレッシングが必須なんじゃないかな。
ドレッシングって、油とレモンとお酢だっけ。
それに卵黄を加えたら、マヨネーズだってできるはず。
その二つが作れたら、かなり食生活が良くなるんじゃないかな。
ううう。今すぐ錬金の本を読みたい。そこにドレッシングとマヨネーズの作り方が載っていたら、速攻で作りたい。
でもさすがにこんなに人がいっぱいの所で本を開くのはダメだよね。
だけど、せっかくだから野菜をもっとおいしく食べたい。
フレンチ・サウザン・和風ドレッシング。それに、それに……。
他にも色々作りた~い!
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