第39話 バトル装備はおまかせで♪
「メイの装備はあるのか?」
「装備……って、普通の服じゃないですよね?」
ジークさんに聞かれて、スカートのすそを少しつまんでみる。
「俺たちの服には防御の付与魔法がついている。メイの服にもついているのか?」
「どうだろう。オコジョさん分かる?」
「それにはついてないよ~」
「……だそうです」
普通のロリータ服だもんね。特別な装備はついてないよ。
あれ、でもちょっと待って。今の言い方って。
「んん? それ、には?」
「うん」
「ってことは、ついてるのもあるの?」
「あるよ~」
「どこに?」
あのタンスの中のゴスロリ服の中に、防御のナントカがついてる服があるのかな。
そしたら一度取りに戻らないとダメなんじゃない?
時間がないから急がないと!
「腕輪を見てごらん。色々入ってると思うよ」
オコジョさんに言われて腕輪の中を……。
って、どんなアイテムか思い浮かべないとダメじゃない。どんな装備があるか分からないのに、無理だよ!
「えー。だったら、おまかせ装備でいいんんじゃないかな」
「おまかせ装備?」
オコジョさんはヒゲをそよがせながら、私の腕輪を指した。
「うん。おまかせで装備したいって言えば大丈夫だよ。……そうだなぁ。戦闘力重視と、防御力重視と、どっちがいい?」
戦闘力と防御力かぁ。
できればどっちも欲しいけど、私に戦う能力はなさそうだから、防御力重視かな。
それだったら攻撃を受けても無事でいられるし。
あ、でも、私は攻撃を受けないんだっけ。
いやいや、万が一ってこともあるし、ここは防御力重視だよね!
「防御力重視で!」
「だったら、防御力重視の装備を出したいって思えば出てくるよ~」
「分かった。じゃあやってみる」
ジークさんたちにはちょっと待っててもらって、私のバトル装備を出しちゃおうっと。
「バトル装備は防御力重視のおまかせで!」
そう言うと、ヒュンッと腕輪から銀色の塊が飛び出した。
ガシャンガシャンガシャン。
音を立てて装備されていくそれは……。
「前が見えなーい!」
なんだかフルフェイスのヘルメットみたいなものを被せられて、全然前が見えない。
そして全身が重くて動けない!
「オコジョさん、どうなってるの~!?」
しかも左手には何か重い物を持ってるし。
もう無理。限界。
左手で持っていた物を落とすと、ガッシャーンと大きな音が響いた。
その音に驚いて飛び上がりそうになったけど、全身が重くてかかとすら持ちあがらない。
「確かに防御力は十分そうだが……動けるのか?」
近くでジークさんの声が聞こえたかと思うと、ヘルメットの目の辺りでガシャンと小さな音がする。
すると目の部分の視界が急に開けて、ジークさんの整った顔がドアップで見えた。
うわぁっ、とのけぞろうとしたら、思いっきり後ろに倒れそうになった。
「危ない!」
ジークさんが抱きとめて……くれたのはいいけど、「うっ」とうめく。
「なんだこの重さは」
ちょっと待って。本当に待って。
これって乙女が憧れる、転びそうになったところをイケメンに抱きとめられるっていう最高のシチュエーションだと思うんだけど、どうしてその重さで顔をしかめられてるのーっ!
っていうか、どんだけ重いのよ、この装備。
ジークさん、私じゃなくて装備が重いんですからね。そこのところは誤解しないでくださいね!
「全身がミスリルの鎧か。ミスリルは他の金属より軽いとはいえ、この重装備ではかなりの重さになるぞ。そして……。なんだあの盾は。鑑定できんぞ」
ジークさんはそう呟きながらペタペタと鎧を触っている。
セクハラだー!
「ジーク。メイは女の子なんだから、そのくらいで……」
遠慮がちにクラウドさんが声をかける。
「ああ、すまない。……しかしこれでは動けないだろう」
ジークさんは私をまっすぐに立たせると、また倒れないように背中を支えてくれていた。
「オコジョさーん。これじゃ動けないよ~」
「だったら攻撃力重視にしておくかい?」
「剣とか弓とか使えないから無理だよ。他にないの?」
「だったら、素早さ重視なんてどうかな」
「もーっ。いつも言ってるけど、そういうのがあるなら、早く言ってよー!」
「ごめんごめん」
視界が狭いから見えないけど、オコジョさんは大して反省してなさそうな気がする。
でもとりあえず装備を変えなくちゃ、これじゃ動けないもん。
「バトル装備は素早さ重視のおまかせで!」
すると、ガシャンガシャンと装備がはずれて違う物が装備された。
恐る恐る下を見ると……。
ん?
エプロン?
黒いスカートは膝上でヒラヒラだ。
頭の上に手を当ててみると、そこにはヘッドレストのようなものが。
もしかしてこれって、メイド服~!?
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