第38話 弟ですか!?
「それにメイには悪意のある攻撃は当たらないって教えたじゃないか」
「そういえばそうだった」
だったら一緒に戦いに行っても足手まといにはならなさそう。
むしろその特性を生かせば、とっても役に立つんじゃないかな。
「トゲトゲーニャの在庫は……うん。これだけあればいいよね。スロウリンも10個はあるから大丈夫そう」
腕輪の中身を確認してると、じーっとこちらを凝視しているうさ耳おじさんに気がつく。
そんなに心配しなくても、ちゃんとお薬は作るから安心してね。
「君たちは何者だ?」
んん?
いきなり何かな。
「メイです」
「オコジョさんだよ~」
そういえばまだ自己紹介してなかったっけ。
すっかり忘れちゃってたよ。
私がお辞儀すると、オコジョさんも真似をして頭を下げていた。
これ絶対、意味が分からずに真似してるだけだな。
「森の中の一軒家に住んでる錬金術師です」
「れんきんじゅつし……?」
「
「ふむ。アルケミストか」
あ。うさ耳がぴょこぴょこ動いた。
耳だけ見ると可愛いなぁ。
その下の顔は……。ちょっといかつい感じの金髪碧眼さんだ。
それなりに整った顔だけど、おじさんなのにうさ耳というギャップで美形として見れない。
「はい。薬とか作ってます」
「それは薬師とは違うのか?」
「薬以外の物も作るから違うと思いますよ」
「ほう。どんな物を作るんだ?」
「パンケーキも作れますよ」
とりあえず一番おすすめの物を伝えてみる。
うさ耳おじさんも、食べたらきっとびっくりするね。石化が治ったら食べさせてあげるね。
そう言ったら、うさ耳おじさんは凄く喜んでくれた。
うんうん。期待してくれて良いよ。
今まで食べたことがないくらいおいしいパンケーキをご馳走してあげるからね。
「じゃあジークさんたち、バジリスク退治に行きましょう!」
24時間以内に治療しなくちゃいけないんだし、とジークさんたちの方に向き直ると、なぜだか皆こめかみに手を当てて下を向いている。
そして今気がついたけど、この部屋にはギルド長のヴィクターさんと補佐のエヴェリンさんもいて、二人とも呆気に取られた顔でこっちを見ていた。
「こんなに気軽にバジリスク討伐に誘われるとは思わなかったよ」
クラウドさんが小さく呟くと、ジークさんがその肩に手を回した。
「しかも他に作れる物がなんでパンケーキなんだ。他にも非常識な代物がたくさんあるだろうが」
「本当だよね。でも急がないといけないのは確かだから、すぐに支度をして行こう」
「そうだな」
クラウドさんと頷きあったジークさんは、何か言いたげなヴィクターさんに「後で説明するから」と言って、うさ耳おじさんにお辞儀した。
「行ってまいります」
「気をつけてな、弟よ」
……ええっ、弟!?
確かに二人とも金髪で青い目だけど、あんまり似てないよ。
っていうか、ジークさんの耳はうさ耳じゃないし。
部屋を出て玄関へ向かうジークさんの耳をじっと見ていると、クラウドさんがこそっと教えてくれた。
「人間と獣人の間にはなかなか子供が生まれないんだけど、生まれた子供は、普通はどちらか一方の特徴しか持たない。ジークは人間の父親似だね。でも稀にヘルベルト様のように、どちらの特徴も持つ人が生まれるんだ」
つまり、ジークさんのお母さんはうさぎさん?
うわぁ。見てみた~い!
やっぱりここは異世界なんだなぁ。
「ジーク様、大丈夫ですか?」
私たちの後を追ってきたヴィクターさんが心配そうに声をかけてくる。
「……時間がない。やるしかないだろう」
「急いで準備させて頂きます」
「ポーションを……」
「もちろん先ほど仕入れさせて頂きましたポーションを提供させて頂きます」
それって私が作ったポーション?
でもそれだったら一緒に討伐しに行くんだからタダでいいよ、タダで。
それより早くバジリスクを見つけて倒さないと。
そう言うと、ジークさんは「すまない」と頭を下げた。
「困った時はお互い様ですよ。それにジークさんたちにはリンツの町まで一緒に来てもらったし、こうして商業ギルドを紹介してもらって推薦人になってもらったんだから、お返しです。それより、バジリスクってすぐに見つかるものなんですか?」
タイムリミットがあるから、探すのに時間がかかると大変だよね。
好物でおびき寄せるとかって手は使えるのかな。
「ねえ、オコジョさん。バジリスクの好きな物って何か知ってる?」
「知ってるよ~。新鮮な心臓を石にして食べるんだ」
「うわぁ。それじゃあ餌にしておびき寄せる作戦は無理じゃない」
しかも新鮮な心臓を用意しなくちゃいけないっていうのがきついよね。
あ、でも薬に必要なのもバジリスクの新鮮な心臓なんだっけ。
……新鮮な心臓かぁ。
あんまり生々しくないといいなぁ。
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