第27話 セブンスクローバーでラッキータイム
「時間は今から20分だよ。今まで収穫した物も戻ってるからがんばってね。はい、スタート!」
ちょっと待って。
オコジョさん、説明が全然足りてないってば。
「ラッキータイムって何?」
「さっき、
もーっ。
そういうのがあるなら、先に言ってよー!
っていうことは、一日に収穫できる量が少ない卵も、増えてるってことかな。
それは本当に、ラッキーだ!
やったー!
「籠、籠……。あっ、ジークさんたちも暇なら手伝ってください! 錬金に使えそうな実とか葉っぱを収穫してもらえませんか?」
とまどうジークさんたちに、腕輪から籠を取り出して渡す。
たくさん作っておいて、良かったぁ。
「適当に収穫しても、明日には戻ってるからどんどん採っちゃってくださーい」
「は? いきなり何だよ。何を採れって?」
アレクさんが籠を持ったまま目を白黒させている。
「アレクさんたちが採った分は半分あげるから、がんばってください! ただし、根っこは残しておいてくださいね」
なぜか根っこごと収穫すると、もうそこには生えなくなっちゃうんだよね。
枯れない内に戻せば大丈夫だけど、そのままにしておくと、もうその植物はいらないものだと判断されちゃって、翌日になっても生えてこなくなるんだって。
オコジョさんに教えてもらったからいいけど、知らなかったらヒール草を全滅させちゃってたところだよ。
だってほら、ああいう草って何となく根っこも一緒に取らないとダメなのかなって思うじゃない。
よく考えたら雑草じゃないんだから、根っこは残しておかないとダメだよね。
半分あげます、と言った途端にクラウドさんが走り出したけど、最後までちゃんと聞いたかな。
あ、ジークさんが一緒に行ったから平気かな。
あの方向は……シャングリラの花と七色の薔薇がある方だ。
そういえば、この庭を見て最初にチェックしてたっけ。
こうしちゃいられない。私も採りに行かないと。
まず金の卵は譲れないから、そこからスタートしようっと。
「嬉しい。朝採った卵も復活してる~」
卵を全部収穫して、ついでに金の実ももいでおく。
金の実はコッコさんの主食だけど、一日一個しか食べないから、それ以外は私たちも食べられる。
試しに食べてみたら、桃みたいな味だった。デザート代わりに食べているけど、本当においしくて毎日食べても飽きない。
今度この金の実を使って、タルトを作ってみたいなぁ。
桃の味がするけれど、固さは林檎に近いから、タルトタタンを作っても良さそう。
錬金釜で作ってもいいけど、自分で作ってもいいなぁ。
パンケーキは作れるようになったし、もっと色々なデザートに挑戦して、おいしいケーキをたくさん作りたい。
だってデザートは人を笑顔にするもんね。
おいしいは正義!
他にも色々と収穫しているうちに、あっという間に20分が過ぎた。
「終了~!」
オコジョさんの合図でサービスタイムが終了してしまった。
目の前で4つ咲いていた花が、一瞬で2つに減ってしまっている。
「もう終わり?」
「そうだよ。また来週のお楽しみだね」
「はーい」
またキラキラを見つければサービスタイムが始まるってことだよね。
見つけられるといいなぁ。
収穫した物を家に運んで籠の中身を見せ合う。
おお~。やっぱりクラウドさんが一番収穫してるなぁ。
籠がこんもりしてる。
「いっぱい採ったねぇ。良かったね~」
オコジョさんがヒゲをひくひくさせながら籠を見る。
「でもさ、よく我慢したね。偉い偉い」
「え……?」
オコジョさんはそう言ってクラウドさんの顔を見上げた。
「根っこごと持って行きたかったのを、ちゃんと我慢したね」
「いや、僕は……」
そう言って視線を逸らすクラウドさんに、ジークさんは微笑んだ。
「俺たちは冒険者だからな。この庭にある物がとんでもなく価値のある物ばかりだっていうのは分かる。もし根ごと手に入れて栽培に成功する事ができたら、巨万の富を得られるだろう。だが、クラウドの命を助けてくれた恩人にそのような真似をするのは、ミスリルランクとしては許せない。ただそれだけの事だ」
そっか。
私としては気軽に収穫を頼んじゃったけど、クラウドさんにとっては宝の山を目の前にしてお預けを食ってしまったようなものなんだ……。
「ごめんなさい。配慮が足りなくて」
「いや、これだけの物を半分でも分けてもらえるのなら、それだけでも凄い事だ。ありがとう」
爽やかに笑うジークさんは大人だなぁ。
よーし。ここは思い切って、太っ腹になっちゃおうかな~。
どうせ明日にはまた収穫できるしね。
「よく考えたら、半分に分けるのはめんどくさいから、自分たちで収穫した分は持っていっていいですよ。その代わり、町の中を案内してください!」
町までの案内は頼んだけど、町の中の案内はまだだもんね。
おいしいご飯が食べれる所とか、おいしいものを売ってる所とか、たくさん教えてくださーい!
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