第25話 コッコさんの子分登場
「ねえ、オコジョさん。私も町へ行っていい?」
「メイが行きたいならいいよ」
行く気満々で聞いてみると、あっさりOKが取れた。
そういえばオコジョさんはいつも、私がしたいならいいよ、って言ってくれる。
なんていうか、優しく見守ってもらってるみたいで嬉しいな。
「でも、行きはジークさんたちと一緒に行けばいいけど、帰りはどうしよう」
そう。問題は帰りなんだよね。
またジークさんたちに送ってきてもらうっていうのも変だし。
「ロボがもう少し大きくなれば護衛になるんだけどね。まだ小さいからなぁ」
「わんっ」
ロボがオコジョさんに抗議するように吠える。
でも、オコジョさんは「ダメダメ」と首を振った。
「ロボじゃ森の中を三歩歩いただけでやられちゃうよ。できればコッコさんが一緒に来てくれればいいけど……」
オコジョさんに指名されたコッコさんは「コケー」と気のない返事をした。
う~ん。これは無理そう。
「えー。じゃあさ、コッコさんの子分を貸してくれない?」
子分?
コッコさん、そんなのがいるの?
確かに子分がいてもおかしくない貫禄だけど。
やっぱりニワトリなのかな。それとも……。
「コッケー」
一声鳴いたコッコさんは、玄関から外へ出ると、そこで大きく鳴いた。
「コーケコッコー!」
今まで聞いた事のない大音量だ。
鼓膜がビリビリするよ~。
私だけじゃなくて、ジークさんたちも耳を抑えている。
ロボは……、あ、腰抜かしちゃってる。
しばらくすると、どこからか、バサッバサッと羽ばたきする音が聞こえてきた。
やっぱり空飛ぶニワトリかなぁと思いながら空を見ると――
「ええっ、ペガサス!?」
青い空を背景に羽を広げて飛んでくるのは、真っ白な羽を持つ馬――ペガサスだった。
「ペガサスだと!?」
ジークさんたちも空を見上げてびっくりしている。
という事は、この世界でもペガサスは珍しいって事だよね。
ヒヒーンと鳴きながら下りてきたペガサスは、コッコさんの前まで来ると頭を下げた。
うわぁ。本当にコッコさんの子分なんだ。
「コケッコッコッコッコ」
尊大な態度で説明しているらしきコッコさんに、ペガサスは頭を下げたままでいた。
このペガサスがコッコさんの子分で、私に協力してくれるってこと?
あ、そうか。空を飛べば、森の中を歩かなくていいから安全ってことなのかな。
確かにそれなら帰りも安心だけど、でも、ペガサスの背中には全員乗れないと思うんだけど、そこはどうするんだろう。
と、思っていると、コッコさんが羽繕いを始めた。
すると、何本か羽が落ちた。
おお。コッコさんの抜け落ちた羽って、初めて見た。
「メイ、その羽を拾って」
「え。うん」
羽を拾うとオコジョさんが「じゃあ錬金をしようか」と言った。
錬金?
何を作るの?
「えーっと、他には黄金とアダマンタイトかぁ。じゃあそれはボクが出そう」
ポンと出されて、ジークさんたちの目が丸くなる。
……これは、言われなくても凄い素材だって私にも分かるよ。
オコジョさん、こんなに凄い素材を出しちゃって、大丈夫なの?
あわあわしていると、オコジョさんはにこっと笑った。
「ボクはメイの役に立つ物しか出せないから、大丈夫。それに人間にはボクを捕まえられないしね」
コッコさんの戦闘能力は折り紙つきだけど、もしかしてオコジョさんも同じくらい強いのかな。だったら安心だけど……。
「さあ、メイ。コッコさんの羽と黄金とアダマンタイトと、それからヒール草を入れて」
「うん、分かった」
「それをかき混ぜてごらん」
「うん」
ぐーるぐるぐ~るぐる。
カランカランと錬金釜の中に入れた黄金とアダマンタイトが音を立てる。
カランカラン。
カララン。
カラン。
コン。
かき混ぜ棒から手ごたえがなくなった。そろそろかなぁ。
「あっ。でっきた~。かんせ~い♪」
「よーし、じゃあ皆、扉から離れてー!」
オコジョさんの声で入り口の近くに立っていたジークさんたちが、一斉に扉から離れる。
「せーっの!」
オコジョさんに掛け声とともに、錬金釜から銀色の光が飛び出す。
それは一見、普通の銀の玉に見えた。
でも地面に落ちた途端、瞬く間に姿を変える。
丸いフォルムはそのままに大きくなり、真ん中に窓ができた。そして四つの車輪が現れる。前と後ろにある席は、御者席だろうか。
「馬車……?」
いきなり現れた馬車に、ジークさんたちは口を開けてポカンとしている。
うんうん。その気持ち、分かります。
馬車用ハーネスでペガサスと馬車が繋がる。
そこには、まるでシンデレラに出てくるような、銀色の美しい馬車が現れていた。
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