第24話 おいしいポーションの作り方

 でも、これがこの世界でのポーションの味なんだとしたら、私が作るポーションってバカ売れしちゃうんじゃない!?


「材料が違うのか、作り方が違うのか……。どっちなんだろう」

「材料は、ヒール草と水です」

「それは同じですね。でもなぜ苦みが消えるんだろう」


 私は腕輪からヒール草を取り出すと、クラウドさんに見せた。


「この庭で育ててるヒール草です」


 毎朝元の状態に戻ってるから、厳密には育てているって言うのとは違う気もするけど。


「ちょっと見せていただけますか?」

「どうぞ。差し上げます」


 ヒール草を手に取ったクラウドさんは、じっと見つめた。それから少しちぎって口に含む。

 あ……。眉間にくっきりと皺が寄った。


 きっと凄く苦かったんだね。

 私はそっとお水を渡した。


 クラウドさんは一気飲みした後も、口をモゴモゴさせている。

 ……口の中がまだ苦いんだろうなぁ。


「確かに品質は良さそうですが、普通のヒール草ですね。では作り方が違うんだろうか」


 作り方かぁ。

 私は錬金釜に入れてぐるぐるするだけだけど、普通は違うのかな。


「クラウドさんはどうやってポーションを作ってるんですか?」

「ヒール草を細かく切って煮ています。それを濾した物をさらに煮立てるのですが……。どうやらあなたの作り方は、それとは違うのですね?」


 作るのがめんどくさそうだと思ったのが分かったのか、クラウドさんに指摘された。


「そりゃあ、メイは薬師じゃなくて錬金術師だからね」


 オコジョさんが腕を組んで頷く。

 そういえば、錬金術の能力を持つ人が他にいないから、私をここに呼んだって最初に説明されたっけ。


 ってことは、錬金術を使えるのって、この世界では私だけ?


「どうやったら錬金術師になれるんですか?」

「才能がないと無理だよ~」

「僕にもなれるでしょうか?」


 クラウドさんに聞かれたオコジョさんは、首を傾げた。


「どうかなぁ。う~ん。多分、三百年くらい修業すれば、なんとかなるかも?」

「……三百年……。エルフでもなければ無理だ」


 おおっ。

 今の発言からすると、エルフもいるんだ。


 獣人、エルフとくれば、あとはドワーフだよね。

 いるのかなぁ、ドワーフ。


「ってことは、俺たちは苦いポーションしか飲めないってことだよな」


 残念そうなアレクさんに、クラウドさんは「すみません」と謝った。


「あっ、いや。クラウドがいつもポーションを作ってくれるから、俺たちは凄く助かってるんだぜ? それに店で売ってるのより、全然苦くないからな」


 慌ててフォローするアレクさんに、クラウドさんは「分かってますよ」と微笑んだ。


 なんていうか、クラウドさんって、いかにも回復役ですっていう感じの、物腰の穏やかな人なんだなぁ。

 アレクさんより年上っぽい。ジークさんと同い年くらいなのかな。


「ポーションの苦みを取るならさ、作り方を変えてみれば?」

「作り方を?」

「メイのポーションと同じ物は無理だろうけど、多少は苦みが抑えられると思うよ」


 おお~!

 さすが『導き手』のオコジョさん。

 異次元ポケットから物を出すだけじゃなくて、知識も持ってるんだね。


「どうすればいいんですか」

「まずはね、ヒール草を一晩水につけた後に取り出すんだ。それからその水をグラグラ煮立てないようにして煮て、ヒール草と同じくらいの色になれば完成だよ。ヒール草はね、高温だとえぐみが出ちゃうんだ」

「そうだったんですか。教えてくださってありがとうございます」

「お礼なんていいよ~」


 そう言うオコジョさんのひげが、そよそよと動いている。

 最近分かったんだけど、これってオコジョさんがご機嫌な印だ。


「そうだ。少しうちのヒール草を持って帰ります?」

「いや、それは悪いですよ」


 クラウドさんは遠慮するけど、でもヒール草を全部採ったとしても、明日にはまた復活するから全然問題ないんだよね。


「その代わり、ここから町へはどうやって行くのかとか、あと私の作ったポーションがいくらくらいで売れるのかを教えて欲しいんです」


 冒険者っていうくらいだから、仕事として依頼すれば、色々と教えてもらえるだろうしね。

 ポーションを売って、お肉を買うぞー!


「ここから町へは……。そうですね、半日歩けば着くと思います。でも道中で強い魔物が出るので……」


 言いよどんだクラウドさんは、ちらりとジークさんを見た。そしてジークさんが頷いたのを見て続ける。


「その……もし良ければ、なんだけど、僕たちと一緒に町へ行きませんか?」

「一緒に?」


 道案内してくれるってことかな?

 それならそれで助かるけども。


「ポーションを売るのであれば、冒険者ギルドか商業ギルドに所属していないといけません。君のポーションを高値で売るならば、商業ギルドに所属する方がいいでしょう。でも商業ギルドに入るには推薦人が二人必要です」

「つまり、その推薦人になってくれるってことですか?」

「ええ。あのポーションを継続して買えるのであれば、喜んで保証人になりますよ」


 クラウドさんの横で、ジークさんとアレクさんも頷いている。

 え、じゃあ、ポーションを売ってお肉を買えるようになるのかな?


 やったー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る