第22話 メイ特製パンケーキも召し上がれ♪
そういえば薔薇の花びらを使って錬金でローズティーを作るレシピもあったから、それで作れば特殊な効果がつくかもしれないね。
今度やってみようっと。
「ジークさんたちは、甘いものって食べますか?」
お茶を飲んで一息つくと、今度はおやつが食べたくなっちゃうよね。
ちょうどパンケーキを作りたいと思ってたから、ジークさんたちにも味見をしてもらっちゃおうかな。
「多少は」
「えっ、なに? お菓子かなにかを食べさせてくれるのか? やったぜ。スゲェ楽しみ」
「僕も大好物です」
なるほど。三人の返事から推測すると、ジークさんはあんまり甘いものは食べなくて、アレクさんとクラウドさんが甘いもの好きなんだね。
よーし。それなら、ジークさんにもおいしいって言われるように、腕をふるっちゃうぞー!
「じゃあ、ちょっと待っててくださいね」
私はオコジョさんに出してもらった冷蔵庫から、水切りをしたヨーグルトを出した。
ヨーグルトはもちろん私の手作り……と、言いたいところだけど、牛乳から作ろうとしたら腐っちゃったんで、錬金で作ったの。
もっと簡単に手作りできるんだと思ってたのにね。残念。
ボウルにこのヨーグルトと牛乳を入れて泡だて器でよく混ぜて、それから次に卵黄を入れて……。
小麦粉と塩ひとつまみを合わせて、粉ふるいで三回ふるったものを、木べらでさっくりと切るように混ぜる。
別のボウルには卵白を角(つの)が建つまで泡立てて。
シャカシャカシャカと泡だて器で混ぜる音が響く。
ジークさんたちは、お菓子ができあがるのが楽しみなのか、視線をはずすことなくじっと私の手元を見ていた。
もちろんオコジョさんとロボも、パンケーキが出来上がるのを目を輝かせながら待っている。
コッコさんは……。部屋から出ていかないっていうことは、同じく楽しみにしているんだろうと思う。
泡立て器が重くなってきたから、一度持ち上げてみる。
すると、泡だて器の先に、角のような形のクリームがついてきた。
うん。いい感じ。
生地に泡立てたクリームを半分入れて混ぜる。その生地を、今度はクリームが入っているボウルの方に入れて、卵白が少し残る程度にさっくり混ぜる。
そしてこれをフライパンに入れて蓋をして焼くと――
「いい匂い」
錬金でパンケーキも作れるんだけど、やっぱりこの作ってる最中の甘い匂いがたまらないよね。
早く食べた~いって気分になっちゃう。
「でっきた~。かんせ~い♪」
これをお皿に入れて、生クリームを添えれば。
「メイ特製パンケーキの出来上がり~♪」
お皿をジークさんたちの前に出して、パンケーキの上に蜂蜜をかける。魔女の庭には蜂がいるから、オコジョさんに通訳してもらって少し分けてもらってるの。
そのうちどこかでメイプルシロップを見つけたいなぁ。
蜂蜜をかけてもおいしいけど、やっぱりパンケーキに一番合うのはメイプルシロップだもんね。
「さあどうぞ、召し上がれ」
ナイフとフォークも添えれば、三人とも綺麗な所作でパンケーキを口にする。
「なんだこの柔らかさは」
ジークさんが一口食べて固まると。
「うっわ。甘い。おいしい」
アレクさんは次から次にと口へ運ぶ。
「最初に入れた白いものは何でしょう? チーズではないですよね……。それに卵を黄色いところと白いところに分けて使うのは初めて見ました。あの泡立てる器具はどうなっているんでしょう。それから――」
そしてクラウドさんは、一口一口を味わうように研究しながら食べていく。
やっぱり薬師っていう職業柄、色々な素材を研究するのが好きなんだろうなぁ。
「やっぱりメイの作るパンケーキはおいしいね」
オコジョさんがいつものように口の周りを蜂蜜だらけにしてにこにこした。テーブルの下にいるロボも似たような状態だけど、なぜかコッコさんだけはどこも汚れていない。
本当に、コッコさんの生態って謎すぎる。
「コケーッ」
パンケーキに満足したのか、コッコさんは一声鳴いて毛づくろいを始めた。
「メイ、おかわり!」
オコジョさんがいつものようにお皿を出すけど、今日はジークさんたちにもご馳走したから、もう生地がないんだよね。
「ごめんね、オコジョさん。今日はもう終わりなの」
ガーン、と効果音がつきそうな表情でオコジョさんが目と口を開けた。
いやほんと、ごめんなさい。
「すまない。我々が急に来たから……」
「いえいえ、気にしないでください。また作ればいいです」
一日に採れる卵の数が限られてるから、どうしても大量には作れないんだよね。
でも、明日の朝のスクランブルエッグを我慢すれば、お昼にまたパンケーキを食べられるし。
「それに、ここに来た初めてのお客さまですもん。精一杯おもてなしをしないと!」
ねっ。オコジョさんもそう思うでしょ?
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