第21話 ローズティーを召し上がれ♪
「うん? ボクはオコジョさんだよ。それ以外の何者でもない」
「獣人ではないのか?」
「だからオコジョさんだってば」
「……調子が狂うな」
う~ん。ジークさんとオコジョさんの間の、意思の疎通が難しそうだなぁ。
「とりあえずジークさん。うちでお茶を飲んでいきましょうよ」
「あ、ああ」
私とオコジョさんが会話をしながら家へ向かうと、ジークさんたちもキョロキョロしながら後をついてきた。
「それにしてもこの辺りまで人間が来るんだね」
「珍しいの?」
「コッコさんが言うには、今まで人間を見たことはなかったって話だよ」
「そういえば霧が晴れたから来られるようになったって言ってたかも」
「ふうん。どうして霧が晴れたんだろうね」
「さあ。何かあったのかなぁ」
「何だろうね~」
二人で首を傾げながら家のドアを開ける。
家の中は狭いけど、ダイニングテーブル兼、錬金用作業台になっているテーブルは広いから、皆でお茶ができるよね。
椅子も四脚あるから……。
あ。
オコジョさんも入れたら五脚必要じゃない。
う~ん。一脚、錬金で作るかなぁ。
一度オコジョさんに出してもらったから、椅子のレシピが増えてるんだよね。
ちなみに温泉とか台所もレシピには載ってるんだけど、材料が溶岩とかアダマンタイトとか、持ってないのばっかりなんで作れない。
もっとも、どっちも一個あれば十分だから作る必要はないんだけどね。
「ちょっと待っててくださいね」
まずはお湯を沸かして、その間に椅子を作ろうかな。
ケトルにお水を入れてスイッチを入れて。
よし、じゃあ次は椅子だね。
錬金の本を出してページをめくる。
え~っと、木材が二個ね。
私は腕輪から1メートルくらいの長さの木材を二つ取り出した。そしてそれを錬金釜に入れる。
ぐ~るぐる、ぐ~るぐる。
錬金釜に素材を入れてかき混ぜてる時にいつも思うんだけど、錬金釜より明らかに大きい物を混ぜているうちに、どんどん小さくなっていくのが不思議だよね。
中で溶けてるのかなぁ。
まるでチョコレートみたい。
ぐ~るぐる、ぐ~るぐる。
一度
「よ~し。でっきた~♪ かんせ~い」
ポンと飛び出す椅子は、テーブルの横に設置された。
ピイイイイッ。
ちょうどいいタイミングでケトルの笛が鳴った。
メイ特製のローズティーを淹れてあげようっと。
これは錬金で作ったお茶じゃなくて、七色の薔薇の花びらを摘んでそのまま入れたお茶だ。お砂糖を入れなくてもほんのり甘いから気に入っている。
しかも淹れた時にランダムでお茶の色が変わって、味も少し変化するから、毎日飲んでも全く飽きないんだよね。
たまに甘味のないお茶を飲みたくなる時は、天日で乾燥させた花びらでお茶を淹れる。ご飯の時なんかは、乾燥した花びらでローズティーを淹れることが多いかな。
ポットとお揃いのティーカップはちょうど五客ある。
小さな小花が描かれているカップで、カップのフチや持ち手には金が使われ、そこに近いところは紺色で塗られている、とても上品なカップだ。
オコジョさんはお揃いのティーポットと砂糖入れとミルク入れを出してくれたけど、その後しばらくは品物が出せなくなってしまった。
ごめんね、無理させて。
でもどうせならセットで揃えたかったんだもん。
ポットからお茶を注ぐと、綺麗な赤い色のお茶だった。
おお。一番、薔薇の香りが楽しめるお茶だね。
「さあ、どうぞ」
お茶を出すけど、ジークさんたちはなぜか固まったままだ。
どうしたんだろう?
あ、もしかして。
「毒なんか入ってませんよ。ほら」
こういうのって毒見役ってことで、お茶を淹れた人が最初に飲むんだよね。
ごっくん。
今日もおいしい~♪
「どうぞ召し上がれ」
そう言って勧めると、まずジークさんがお茶を口にした。
「……これは茶か!? 今まで色んな国に行ってきたが、これほど香りの良いお茶は、初めて飲むぞ」
「おいしいですか?」
「これは何のお茶なんだ?」
「庭にあった七色の薔薇です」
「あれか!」
そうです。あれです。
「今日は赤い色が出たけど、他の色のお茶になることもあるんですよ」
「七つの色がランダムで出てくるということか?」
「そうです。味もちょっと変わるんですよ。不思議ですよね」
私が説明すると、クラウドさんが匂いをかいだり色を見たりしながら、研究者のようなまなざしになって真剣にお茶を調べていた。
もしかして何か特殊な効能があったりするのかなぁ。
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