第12話 子犬の名前
金の実を食べた子犬は少し元気になったのか、しっぽをフリフリさせている。
かわい~い。
「もう一個食べる?」
思わずそう聞くと、「キュン!」と元気な声が返ってきた。
良かった……。さっきよりも少し元気になったみたい。
「おいで」
両手を差し伸べると、子犬はしっぽを振ったまま近づいてきた。
ぎゅっと抱き上げてほおずりしようとして……一瞬ためらう。
いや、だって……。
最初に雑巾と間違えたくらいだから、なんていうか……うん。
「その子をお風呂に入れてくる? 先にポーションを飲ませたほうがいいと思うけど」
「うん。……いいの?」
「メイはその子を助けたいんでしょ? だからいいよ。ここはメイの箱庭だもん」
「ありがとう、オコジョさん、コッコさん」
私は二匹にお礼を言って、子犬を抱えてお風呂に走る。
先にポーションを飲ませると、少しこぼしながらも全部飲み切った。
ほっ。これで安心だね。
次はこの子を洗わないと……。
私はほかほかと湯気を出している湯船を見て、このまま入れちゃダメだよね、と思う。
「石鹸を作っておいて良かった」
うんうんと頷くと、腕まくりして子犬を洗う。
普通、犬とか猫は体を洗うのを嫌がるけど、この子は大人しく洗われていた。
何度も石鹸で洗って汚れを落とすと――
「わあ。綺麗な色!」
あの汚れていた姿からは想像がつかないけど、洗ってみると子犬は艶ピカな銀色で、もふもふとしていた。
体の小ささの割に手足が大きくてちょっとアンバランスだけど、そこがまた可愛い。
「ねえ。このままうちの子になっちゃう?」
子犬を持ち上げて聞いてみる。
すると子犬は「キュン」と鳴いた。
えーと、これは「イエス」ってことかな。
うん。そうだよね!
「じゃあ名前が必要だよね。セバスチャン……は、執事だからダメだよね。有名な犬の名前だと、ポチとかパトラッシュとかヨーゼフとかだけど、イマイチしっくりこないなぁ」
他にいい名前がないかなぁ。
う~ん。
あ、そうだ。
「狼王ロボから取って、ロボはどうかな」
厳密にはウルフドッグで狼じゃないんだけど。
でもウルフっていうくらいだから、きっと狼の親戚みたいな犬なんだと思う。
ロボっていうのは、確か動物記に出てくる狼の名前だったかな。お話の内容は忘れちゃったけど、その名前にちなんで強くて賢い子に育って欲しい。
そう思って名前をつけたんだけど……。
「あ、そうだ。メイ。名前をつけるなら気をつけてね。その名前によってその子の資質が変わっちゃうから」
お風呂から上がってホカホカになった私は、オコジョさんに言われた言葉にびっくりする。
もーっ。
だから、そういう大事なことは、早く言ってよー!
「もう名前つけちゃったよ!?」
「うん? ……あぁ、本当だねぇ。へえ、狼王ロボってつけたんだ。カッコイイ名前だね。育ったら狼たちの王様になるね」
オコジョさん、どうしてこの子の名前を知ってるの? まだ名前を教えてないよね。
「なんで名前が分かるの?」
「そりゃあね~。ボクは導き手だからね~」
得意そうなオコジョさんに、そうなのかと納得する。
あれ、でも待って。
狼たちの王様って何それ!
「ちょ、ちょっと待って。この子、ウルフドッグで狼じゃないよ?」
しかもこんなに小さくてもふもふだ。
……あ、もふもふは名前には関係ないけど。
「でももうメイがその名前をつけちゃったし。この世界では、名前が本質を表すからね~」
「そうなの?」
「そうそう。だからボクには『導き手』として、この世界の
なるほど。
分かったような、分からないような……。
とにかく、オコジョさんは私の為に便利な魔法を使ってくれる素敵なもふもふって事だけ分かってればいいかな。うん。
「オコジョさん、お願いがあるの」
「なんだ~い?」
「この子をここで飼わせてもらっていい?」
そう聞くと、オコジョさんは丸い目をさらに丸くし首を傾げた。
「ここはメイの箱庭なんだから、ボクの了承を得る必要はないんだよ」
「じゃあ、飼ってもいいってこと?」
「うん。箱庭に悪さをするやつなら、コッコさんが
えええっ。
そっちのが心配だよー!
ロボは粛清しちゃダメー!
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