第9話 卵を使ってお料理しよう
「コッコさん、この卵はコッコさんの卵なの?」
もしコッコさんが産んだんだとしたら、食べちゃダメだよね。
うっかり食べたらどんな恐ろしいことになるか分からないもんね。
でもコッコさんはそれに答えずに、パタパタと屋根の上に飛んで行ってしまった。そしてそこでひなたぼっこを始める。
「どういう事? コッコさんが産んだ卵じゃないの?」
コッコさんが答えてくれなかったから、オコジョさんに聞いてみる。
するとオコジョさんは鼻をひくひくさせた。
「ボクも知らないけど、コッコさんは屋根の上に行っちゃったから、とりあえずこの卵は食材にしてもいいって事じゃないかな」
「本当に?」
もしそうなら料理のレパートリーが増えるから嬉しいけど、卵を料理しようとして割った瞬間にコッコさんに襲われる可能性はないよね?
「うん。それでこの卵を使って何を作るの?」
オコジョさんの丸い黒目が、期待にキラキラと輝いている。
「バターと牛乳があればオムレツが作れるんだけど……」
オムレツなら錬金じゃなくても普通にフライパンで作れるんだよね。
一時期、おいしいオムレツを作るのに凝ってた時期があるの。
「オムレツ! ボクも食べてみたい!」
「オコジョさんはオムレツを食べた事がないの?」
「うん。だってボクは生まれたばっかりだからね」
そういえば、魔女の手紙から生まれたんだったっけ。
昨日のことなのに、すっかり忘れてた。
「じゃあそのうち作ってあげるね」
「そのうちじゃ嫌だ! 今がいい」
「えー。でも……」
牛乳が手に入ればバターを作れそうだけど、代わりになるようなものって何かあるかなぁ。
「本を見れば作り方が書いてあると思うよ」
「オムレツのページなんてあったかなぁ」
錬金の本には材料と出来上がりのイラストが載っているんだけど、オムライスみたいな黄色い食べ物は載ってなかった気がする。
「最初はなくても、メイが作り方を知ってれば本に記載されるんだよ」
「えっ、そうなの?」
「うん。だからメイの世界だけじゃなくてこの世界の食べ物もたくさん本に載せると、色んな物を錬金で作れるようになるよ!」
「味も再現されるの?」
「もちろんだよ。極上品を作れば、もっとおいしくなるかもね」
うわぁ。もっとおいしくなるんだ……。
だったら、もっとがんばって錬金の腕を上げないと!
「それとね、昨日の万能調味料の木に行ってごらん。そこに牛乳ができてるから」
「……え?」
「バターも牛乳も調味料でしょう? だから使えるようにしておいたよ!」
牛乳は牛さんのお乳です……。とは思ったけど、ここはオコジョさんの勘違いをそのままにしておくべきかな?
だって、牛乳と卵があれば、あとお砂糖もあれば、オムレツだけじゃなくて、パンケーキも食べられるもん!
そのうちちゃんと牛乳が手に入るようになったら懺悔します。
でも今は、牛乳をプリーズ!
「調味料といえば、お砂糖とか塩も欲しいなぁ。万能調味料で大丈夫かもしれないけど、今日はちょっと甘めがいいとか、その日によって味が変えられるよ?」
「その方がおいしい?」
小首をかしげるオコジョさんのつぶらな瞳が眩しい。
「うん。とってもおいしくなる」
……はず。
「だったらそれも採れるようにしておくね!」
「ありがとう、オコジョさん!」
やったー!
これで甘い物も食べ放題だー!
そして昨日の万能調味料の木の元へ行くと――
昨日の十倍くらいの大きなひょうたんがありました。
ひょうたんをもいで振ると、タップンと音がする。
ぎゅ……牛乳さまだああああああ。
きたこれえええぇぇぇぇ!
「オコジョさん、これでおいしいオムレツが作れるよ!」
「わー。楽しみだな~」
「任せて!」
フライパンもあるし、作ってもいいけど……。
レシピがあるなら、錬金釜で作っちゃおうかな。
家の中で錬金の本を見てみると――あったー!
「ふむふむ。卵1と牛乳1カップと万能調味料ね。これを錬金釜に入れると私が作ったのと同じ味になるのかなぁ」
とりあえず試してみようっと。
材料を入れて、かき混ぜ棒で混ぜる。
ぐ~るぐる、ぐ~るぐる。
手ごたえがなくなってかき混ぜ棒から手を離すと、黄色いオムレツが飛び出して、錬金釜の横に置いてあったお皿の上にポンと乗っかる。
「できた~♪」
後はケチャップをかけて……。って、ケチャップがない!
確か庭にトマトがあったはず。
ケチャップのレシピは、えーと、トマト1と水1カップね。
急いで取って来よう。
すぐに庭でトマトをもいでケチャップを作った。
そして出来立てのケチャップをオムレツにかけて。
「でっきあがり~♪」
メイ特製オムレツを、さあ召し上がれ。
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