第6話 皆でお食事
コッコさんなら熊くらい狩りそうな気もするけど、私には無理だなぁ。
ということはお肉を食べるのはしばらくお預けってことかな。
考えても分からないし、とりあえず作れるものを作ろうっと。
「まずパンを作って、それから野菜スープはできそう。味つけは万能香辛料? なにこれ?」
「料理を作る時はそれを入れないと味がないからね」
そんなものキッチンにあったかなと思いながら棚を開けてみたけど、中は空っぽだ。
「万能調味料も庭になってるんじゃないかな」
「……は?」
「コッコさんに聞いてみるといいよ」
再び庭に出ると、いつのまにか空が茜色に染まっていた。
夢中になって錬金をしているうちに、かなりの時間が過ぎていたらしい。
「コッコさーん。万能調味料の場所はどこー?」
オコジョさんが大声で叫ぶと、どこからともなくコッコさんが羽ばたきして飛んできた。
……ニワトリって、空を飛べるんだっけ?
「コッコ、コッコ」
こっちだ、と言っているらしきコッコさんの後ろに着いて行くと、家の裏手に小さな私の背丈くらいの木があって、そこにひょうたんがなっていた。
「ココッ」
「ひょうたん?」
「うん。もいでごらんよ」
言われるままにひょうたんをもぐと、ガサガサと音がする。中に何か入っているみたいだ。
「中を割ると、万能調味料が入ってるよ」
「この上のとこを切るとそのまま使えるのかも。コルクの栓とか欲しいけどなくても大丈夫かな。とりあえず使ってみよーっと」
他にも目についた野菜を収穫して家に戻る。
そしてそのまま万能調味料と一緒に錬金釜に入れて、混ぜ棒を入れて、ぐ~るぐるぐ~るぐる、混ぜるべし、混ぜるべし!
「ふぅ……。でっきたー!」
火を加えてないけど、なぜか熱々の野菜スープの出来上がり~!
お皿に移して……。
「か~んせ~い♪」
嬉しくて飛び跳ねると、オコジョさんも拍手してくれた。
「オコジョさんの分もコッコさんの分もあるからね~。これをお皿に入れて……」
お玉でスープをすくってお皿に入れる。
三等分すると、錬金釜がピカッと光って綺麗になった。
洗う手間がないから便利だなぁ。
コッコさんの分のスープ皿は床に置いて、っと。
「さあ、召し上がれ~」
そう言うとオコジョさんもコッコさんもふうふう言いながらスープを飲んでいる。
……ニワトリってふうふう言えるんだね。それともコッコさんが特別なのかもしれないけど。
私も食べてみようっと。
万能調味料の味って、どんなのだろう。
スープのお皿からおいしそうな匂いが漂ってきてる。
ふんわり優しい匂いだ。
思わずお腹がグーっと鳴った。
「いっただきまーす」
スプーンですくって口に運ぶと――
「うん。おいし~い」
はあ。なんて優しい味。
ほっこりしちゃうね~。
そういえば籠には粗悪品とか普通とかあったけど、料理にもランクがあるのかな。
「ねえ、オコジョさん。料理にも出来の良しあしがあるの?」
そう聞くと、オコジョさんは口をモグモグさせながら答えてくれた。
「あるよー。このスープは普通だね~」
「極上品になると、何か効果がついたりするの?」
腐らないとかだったら便利だけど。
「運が良いと体力とか魔力の回復効果がついたりするかな」
なるほど~。
じゃあがんばって極上品を作れるようにしなくっちゃね。
「パンもふわふわでおいし~い。麦二本と水だけで作ったとは思えないよね」
もぐもぐしながらパンとスープを食べる。
「お肉は無理としても、せめて牛乳が欲しいなぁ。あと卵。でもコッコさんは雄だから卵は産めないもんね……。残念」
「コッケー」
何を馬鹿な事を言ってるんだというように、コッコさんが三白眼でギロリと睨んできた。
「わわわ。冗談だよ、冗談」
ニワトリなのに、凄い迫力なんですけど!
鳥の先祖って恐竜だっけ。……ちょっと納得。
「ふ~っ。パンとスープだけでもお腹いっぱいになるね~」
「メイ、おいしかったよ。ごちそうさま」
「コケーッ」
窓の外を見るともうすっかり暗くなっている。
「オコジョさんとコッコさんはどこで寝るの?」
「う~ん。ボクはさっきメイが作ったその籠でもいいよ」
「え、これ?」
というか、これは野菜とかを収穫して入れる籠だから、動物はちょっと……。
「オコジョさんさえ良ければ一緒にベッドで寝る?」
日が落ちたら、ちょっと寒くなってきた気がするんだよね。オコジョさんがいれば、もふもふしてて暖かそう。
「いいけど……お布団がないよ?」
「あっ」
そういえばベッドはオコジョさんが出してくれたけど、布団もシーツもないんだった。あと寝巻もない!
「だからさっき、コッコさんがしつこく綿の木のところで鳴いてたんだ……」
夕飯の材料を取りに行った時、コッコさんが立ち止まって動かなかったんだよね。
それで綿をたくさん収穫しておいたんだけど……。
「コッコさん、ありがとー!」
思わずコッコさんに抱きつこうとすると、コッコさんはバタバタと飛んで逃げた。
そしてそのままドアを開けて外に出て行ってしまう。
「……コッコさん、どうやってドアを開けたんだろう」
「うん……」
私とオコジョさんは、一緒に首を傾げてコッコさんが出て行ったドアを見つめた。
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