第5話 錬金だー!

 ポーションを全部収納したら、喉がかわいちゃった。

 私は台所でお水を飲もうとして……。


「あっ。錬金用の計量カップしかない」


 錬金釜にセットでついていたカップはあるけど、普通のグラスはない。

 そういえば錬金の本にコップの作り方が載ってたなぁ。

 じゃあ作るまではコップがないってことだよね。


 一応キッチンはあるから水は出るんだけど、調理道具もお皿も何もない。

 ついでに食材もない。


「ご飯はどうするの!?」


 庭に果物と野菜はなってたけど、お肉とかお米とかパンはないよ。

 もしかして、それも錬金で作るの?!


「せーいかーい!」


 オコジョさんがパチパチと手を叩く。


「ええっ。本当に?」

「うんうん。でもその本に書いてあるレシピの材料は、ほとんどこの箱庭の中にあると思うよ」

「この、鉄鉱石とか、ガラス石とかも?」

「……多分?」


 小首をかしげるオコジョさんは、やっぱりちょっとポンコツだ。


「鉄鉱石なんてどうやって採るの?」

「えっとね、このスコップでカーンとやればいいんだよ」


 スコップで鉄鉱石が採れるの……?

 よく分からないけど、とりあえずやってみよう!


「……今から箱庭の探検に行くね」


 それに、何がどこにあるかちゃんと把握してないと、ご飯も食べられないからね。

 私たちはもう一度箱庭へ戻って探索をすることにした。


「えーっと、ここが薬草エリアでこっちがキノコ。それでここが石のエリアで、こっちが野菜とか果物なんだ」


 箱庭は噴水を中心として、左右で用途の違うものが植えられているみたいだった。右側に錬金で使う物。左側に食べ物、という具合だ。


「えーっと、まずは調理道具が欲しいから、鍋とフライパンと包丁を作って……。いや、その前に、収穫した材料を入れる籠が欲しいなぁ」


 大体の素材の場所をチェックしてからまた家に戻る。


「まずは籠を作るのが一番かなぁ。木の枝が三本、ね」


 木の枝がどうやったら籠になるんだろう……。

 とりあえず、作ってみようっと。


 庭で適当に木の枝を折って持ってくる。


「これを錬金釜に入れてかき混ぜるのね」


 よし。やってみよー!


 ぐーるぐる、ぐーるぐる。

 ぐーるぐる、ぐーるぐる。


 カランカランと錬金釜の中の枝が音を立てる。


「こんなので本当に籠になるのかなぁ」

「ちゃんと籠になるよー」


 カランカラン。

 カランッ。


「おっ?」


 大きな音がして、かき混ぜていた棒の手ごたえがなくなった。

 そしてそこから、ボンッっと何かが飛び出してくる。


「いったぁぁぁぁい!」


 籠がちゃんと出来たのかどうか覗きこんでいた私の顔に、思いっきり何かがぶつかる。


「あ、忘れてたけど、錬金して出来た物が大きい時は、釜から飛び出してくるから気をつけてね」

「だから、そういうのは早く言ってよー!」


 もーっ。ポップコーンじゃないんだから。

 落ち着いてから見ると、そこにはちゃんと籠ができていた。


「錬金って凄いなぁ」

「だよねー。メイも早く腕を上げて、立派なアルケミストになるんだよ」


 そう言ったオコジョさんは、パタパタと飛んで、出来上がった籠に触れる。


「普通かな。まずまずだね」

「普通とか普通じゃないのがあるの?」

「失敗作は粗悪品になるね。使っててもすぐに壊れちゃうんだ。普通の出来だとそこそこ使えるかな。極上品だと、稀に違う効果を持つ物があるよ」

「違う効果?」

「うん。籠だと……そうだなぁ。防腐の効果なんかあると嬉しいよね」


 確かにそれは嬉しいかも。


「じゃあ私も腕が上がれば極上品が作れるのかなぁ」

「もちろんだよ~」

「よーし。じゃあどんどん作っていこー!」


 調子に乗った私は、それから色んな物を作っていった。

 包丁にまな板に鍋にフライパン。コップにお皿にスープ皿。フォークにナイフにスプーンにお箸。


 ……まさかお箸のレシピまであるとは思わなかったなぁ。


「疲れた~。そろそろ食事も作ろうかなぁ。料理のレシピは何があるんだろう」


 ビックリすることに、料理も錬金釜で作れるみたいだった。


「へえ。パンは麦を二本と水でできるんだ。野菜スープと……コーンポタージュまである。いいなぁ。コーンポタージュが飲みたいけど、材料に牛乳って書いてある。……牛もいるのかな?」

「さすがに生き物はコッコさんくらいしかいないよ。万が一ローストチキンの材料にしようとしても、逆にこっちが料理されちゃいそうだよね」


 想像しただけで震えるオコジョさんは、コッコさんを怒らせるのが怖いみたいだ。

 もちろん私もコッコさんをから揚げにしようなんて無謀なことは考えません。


「じゃあこの、ハムとかも食べられないってことだよね?」

「そうだねぇ。お肉はお店で買わないとダメかなぁ」

「この近くにお店屋さんってあるの?」

「ここは魔女の森の中だから、近くにお店なんてないんじゃないかな」

「だったらどうやってお肉を買うの?」

「う~ん。森で動物でも狩ればいいんじゃない? ほら、剣なら錬金できるし」

「ええっ。狩りとか無理だよ!」


 原始時代の生活じゃないんだから、そんなの無理だよ!

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