第18話どこかの会話と決意
「賛否両論は議論の常だ。反対なき意見に革命の足音はないし、賛成なき意見はそもそも取り合ってすらくれない。だから僕は、声を大にして言おう。君の人選は、間違いなく正しくて、今回のやり方も、それに準じたものであったと。彼らは、僕らとは違う景色を、僕らの知らない色を認識して観察することが出来ているのだろう。彼らの付け加えてくれる色は、きっと僕らの世界を素敵なものにさせてくれるに違いない。ふっ、筆遣いは少し荒いようだが」
「いいんですかぁ? それは単なる結果論ですよねぇ。過程を見れば、危険な場面なんて片手じゃ足りない程あるでしょう。命すら危ぶまれる鉄火場に、一般人を放り投げる精神はどうかと思いますけどねぇ。しかも、あんたは武器の一つも抜かなかったんでしょう? ただの職務怠慢としか思えませんがねぇ」
「人は自身に危険が訪れて初めて、その本質が光を放つんだ。真価を試されたその時、本人も初めて手にしている力の自覚をする。振り回すか、それとも研鑽に努め他人のために使うかどうか。選択肢は過去の重みだけ存在する。彼らは別に力の発現をしたわけではないが、しかし、その彼らの在り方がこうして理解できた。それだけの価値が今回にはあったと思う。そして何より、彼らはあんな場所では死ななかっただろう。彼らの中には、あの子がいる」
「結局あいつはどうするんだ? 何かしらアイツを生かしておく価値がねぇなら、俺に寄越せよ。こん前はどっかの野郎に獲物横取りされちまったしなぁ」
「獲物を前にうじうじと逡巡しているから悪いのだ。まぁ、獲物にすぐ噛みつかないような醜態を晒す貴様を見るのは酷く愉快だったがな」
「てめぇがフライングしたからだろうが。おかげで消化不良でいけねぇ」
「はいはーい、馬鹿二人は今回の件に関しては出番はないよぉ。君たちはここで私たちと成り行きを見守るだけの御留守番ー。今回は新人に任せてあげるって話だったでしょー」
「けっ、つまらねぇ」
「こいつと同列に扱ってくれるな」
「ということでいいですよね? 会長?」
「あぁ、構わないよ。みんなで今回の行く末の成功を祈ろう。見習いちゃんも、頑張ってね。バックアップはもちろんするし、何か困ったことがあったらいつでも頼るといい。この人たちは、とっても助けになるから」
「ありがとうございます。臓物飛び散って仏さまに手ぇ合わせるイベントがないように気を付けますんで、安心してくださいよ」
「そうかな。じゃあ、そうすることにするよ。心配ってのは感染して広がっていってしまうからね。気を付けるよ」
「みなさんは、ハーブティーでも嗜みながらクラシックでも聴いててくださいよ。あたしもさっさと終わらせてクーラーで凍えそうな中、アイスでもかじって夏を満喫してぇんですよ。当たり前に、誰かの血反吐を見たいわけじゃあねぇ、さっさと化け物潰してやる」
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