閑話 昭和から平成、そして双共へ

 流石に此処まで来ると日本帝国の変化に外国が気付き始める。


 アメリカ、ロシア、イギリスは日本に対して外交での圧力を掛けて無償での資源と技術提供を強要。


 だが世界の国々取っては最悪の、日本にとっては最良のタイミングでパドルフ・ケットラー総統率いるドイツ帝国がポーランドに侵攻。


 第二次世界大戦の勃発である。


 アメリカはこれ以降も諜報機関をフル稼働して日本帝国を徹底的に調べ上げた。


 調べれば調べる程、アメリカを上回る技術力と出処不明の豊富な資源、それになにより世界の主流である筈の化石燃料ではない謎のエネルギーを動力とする電化製品や車両・船舶・航空機等の乗り物。


 これらに驚異を感じたアメリカは他国、特に欧州やロシア帝国が介入してこないうちに日本帝国との戦争を決意。


 損害を最小限に留める為に短期決戦で勝利して日本と言う宝を入手、独占するつもりだった。


 まず戦況を有利に進める為、日本に宣戦布告せずに先制攻撃を仕掛ける。

 しかし日本はこれを難なく迎撃、撃破。


 アメリカのこの行動のお蔭でこの世界での日本帝国による真珠湾への先制攻撃は無くなった。

 だが太平洋戦争は避けようがなく。

 結局、日本はアメリカとの戦争に突入した。


 日本帝国と戦争を始めたは良いものの、時間が経つごとに次第に戦況が不利な状況に追い込まれるアメリカ。


 しかも日本を一気に叩き、手中に収める為に行った宣戦布告をせずの先制攻撃は世界中から批判を浴びる羽目に。


 特に欧州はアメリカ同様に日本帝国を調べ上げ、その豊富な資源の入手先と謎エネルギー技術が喉から手が出る程に欲していた。


 だが今は時期が悪い。


 ドイツ帝国の侵攻の対処で余裕がなく、口は出すが手が出せない状態。

 アメリカと日本の間に割って入る余裕は欧州のどの国にも無かった。


 この頃、日本の隣の国、中国・朝鮮では、麻・陳頭マー・チントウが大勢の農民を組織機して起こした内乱で中国政府は日本や世界に目を向ける処では無かった。


 これには日本はとても助かった。


 近代化が遅れに遅れ、練度も低い中国軍と言えど、流石に数で押されたら、負けるとは行かずとも苦労させられただろう。

 余計な損害を受けずに済んだ事も大きい。

 

 朝鮮は……問題にあげなくて良いだろう。


 処がある日。


 アメリカ太平洋艦隊の対処を行う為、日本帝国連合艦隊の約半数が出撃した数日後。

 突如として艦隊との連絡が途絶えた。


 『何があったっ!?』


 日本海軍の主力を担う艦隊の消失。

 しかも艦船には追尾型噴進砲や空母には噴式戦闘機――ホーミングミサイルやジェット戦闘機など、世界で初めて実戦投入された最新鋭の兵器もあった。


 此処で司令部は重大なミスを犯す。


 作戦遂行を優先する余り、碌な調査も艦隊の捜索も一切せずに代わりの艦隊を差し向けた。


 そして、その艦隊も消失してしまった……。


 直ぐに作戦は中止され、行方不明の艦隊の捜索及び調査が行われた。


 消失した海域の付近を捜索した結果、近くの無人島の陸地から解けたガラスや高濃度の放射線が検出された。


 そう……追い詰められたアメリカは原子核爆弾を完成させて、それを高高度から海上を航行中の艦隊の近くに落として炸裂させたのだ。


 艦船のレーダーや艦載機の性能は日本の方が上で近づく事も出来ない。

 だが、原爆のような戦術核兵器ならば近づかなくても近くで炸裂させれば十分効果は見込める。

 そう判断したアメリカ軍司令部は作戦を立案・実行し、その思惑は見事的中。

 日本帝国の連合艦隊の大部分を一気に殲滅せしめるという予想以上の大きな戦果を得た。


 日本帝国は連合艦隊を二度に渡る原爆投下で喪失。


 新造艦の竣工は早いものでも一ヶ月は掛かる。

 それ以上に艦の数が圧倒的に足りない。


 その間、アメリカが指を加えて見ているなんてありえない。

 防衛の盾を失った日本本土に必ず攻撃に来るだろう。


 ドイツ帝国は日本の連合艦隊壊滅の報を知るとこれを好機と捉え、日本帝国に同盟を持ち掛ける。

 日本帝国の高い技術力と豊富な資源を当てにしての同盟であったが、四面楚歌の日本はこれを受け入れるとパドルフ・ケットラーは読んでいた。


 ――が、それを日本はあっさり拒否。


 地政学的に遠い上に場合によってはドイツ帝国を助ける為に欧州まで危険を犯して軍を派遣しなければいけなくなる。


 ドイツが日本の足を引っ張る可能性も大いにあった。


 それに日本は盾を失ったがまだ矛が残っていた。


 三度目の原爆が日本帝国本土に迫る頃、高性能爆弾を搭載した二機の衛生の打ち上げに成功。

それを大統領府ホワイトハウスと原爆の研究・生産を行っていたロスアラモス研究所に落下させて爆破。


 更に日本本土に近づく前に発見された原爆を搭載した爆撃機は墳式局地戦闘機【震電】の後継機で高高度の音速飛行を可能とした可変翼戦闘機【二式震電】で撃墜され、日本本土における原爆投下は遂に実施される事はなかった。


 宇宙からの爆撃に日本帝国の技術力の高さをまざまざと見せつけられたアメリカは敗北を認めざるをおえず、日本側に休戦を打診。


 こうして日本は辛うじて勝利を収め、戦争は終結した。








 世界の他の国々のその後。


 ドイツ帝国はアメリカの支援を受けた欧州の国々の反抗に遭い撤退。


 ドイツの同盟国であったイタリアは早々に欧州連合に降伏。


 そのドイツが次に標的にしたのは石油資源が豊富なロシア帝国。


 不可侵条約を一方的に破り、ロシア帝国に侵攻したドイツだったが、厳しい冬の寒さと豪雪に阻まれて結局は撤退。


 ドイツ帝国とロシア帝国の冷戦の時代が始まった。


 中国では社会共産党を結成し主席となった麻・陳頭が書記長に就任した。


 余談であるが終戦後、日本帝国はドイツとその同盟国であるイタリア以外、世界中の全ての国々が漁夫の利を得んと日本に宣戦布告していた事実を知って驚愕した。


 とは言っても、宣戦布告は日本帝国に直接伝えられておらず、自分達が勝手に宣言していただけだったのだが……







 終戦後、時代は流れて昭和から平成に。

 

 第二次世界大戦以降も紛争の火種は世界各地のいたる所に点在していた。


 経済格差による貧困、資源の独占、兵器開発競争、宗教同士の争い、人種差別等々。


 そのんな中、日本も例外なく紛争に巻き込まれる。


 とうとう中国が日本の技術力と資源を狙って戦線布告したのだ。


 中国との戦争は約三年と六ヶ月に渡り続いた。

 広大な領土と十億を超える人工を抱える中国との戦争は、海洋国家である島国・日本にとってかなり苦労させれたが、この戦争にも何とか勝利を収める事が出来た。


 戦後、中国は莫大な賠償費用を日本側に支払う羽目に陥り経済が破綻。

 アメリカ以上の多民族国家だった中国はその後、幾つもの国に分裂していった。


 中国との戦争の後、暫くして平成の世が終わり双共へと元号の変更がなされた。


 双共とは日本帝国とワルプルギスがお互い協力して発展していくと言う意味が込められている。


 しかし、世界情勢が不安定なのは未だ変わらず。


 日本帝国はこの後、予測不能の事態が待ち受ける激動の時代へと突入して行くのだった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る