閑話 明治、大正、昭和 ~歴史の分岐点~

 江戸から明治へ時代が移ると明治政府は江戸幕府が大国との開国の折に諸外国に無理矢理締結させられた不平等条約を南下政策により領土を拡大し続けるロシア帝国の影響で漸く改正に成功。


 更に朝鮮を日本のように近代化して国交を結び、ロシア帝国に対抗し備えようとしたが、昔から日本を小国として下に見ていた朝鮮がこれを拒否。

 失敗に終わる。


 政府内では征韓論――武力による開国を迫ろうとしたが、これに外務省から待ったが掛かる。


 異世界ワルプルギスとの国交を樹立した外務省の影響は大きく、政府内でも無視できるものではなかったのだ。


 外務省が朝鮮、清国の文化や民俗学を研究してきた研究者の話をもとに分析・検討してきた結果、『あ、これ無理だわ』と言う結論に達した。


 外務省が問題としたのは武力を使用して開国に成功した後だ。


 清国が『おい、日本! お前ら何勝手にウチの領土に手ぇ出しとんじゃあ!』と言って必ず出張って来るのは目に見えている。


 それ以前に朝鮮の文化や民族には大きな問題を内包していた。


 世界には数多くの国が存在し、其処に住む人々が織りなす文化や習慣もまた様々だ。

 だが、その中にあって朝鮮の文化・習慣は他の国々以上に異色だった。


 江戸幕府が鎖国政策を取ってきた影響で外交経験が乏しい日本では彼等と付き合うのはかなり難しいと判断せざるを得ない。


 その為、明治政府は方針を転換。


 ロシア帝国の動きに注視しながらも朝鮮からは手を引き、異世界ワルプルギスにある国々との交流を強化していく事に決定。


 それ以降、明治政府内での軍部の影響力は徐々に低下していくが、その代り軍部は世界に目を向け、情報収集や兵器等の技術開発に注力し邁進していった。

 

 これにより日本にとって大きな転換点となる日清戦争・日露戦争・日中戦争は回避され、大国からの注目を集める事も無く、ロシアとの戦争で必要となる膨大な戦費をアメリカのユダヤ資本から調達する必要が無くなり借金をせずに済んだ。


 それについてはロシア帝国も同じで、日本との戦争に煩わされる事が無かったニコライ二世は国内の安定化に尽力してそれに成功。


 これにより血の日曜日事件やロシア帝国崩壊に繋がるロシア革命もまた起こる事は無く、その結果ロシア帝国は二十一世紀の現在も存続している。


 欧州の不況と植民地政策で起こった第一次世界大戦後、アメリカ合衆国は欧州での復興特需と国内の自動車普及で産業が活気付き、都市間の往来が盛んに。


 それにより各地で都市開発の流れが生まれ、住宅の建設や都市間を繋ぐ為の鉄道や道路網の整備、それらに付随した株と土地の売買でバブルが発生、一時は好景気に湧いた。


 しかしやがて欧州が徐々に復興に向かうと、物を生産しても売れなくなり経済は落ち込んでいく。

 そして突然の株価暴落。

 アメリカは関税を引き上げ、輸入する国々はその報復措置として関税を引き上げ合う事態に。

 それがブロック政策やファシズムを生み、世界恐慌を起こした。


 その頃、日本帝国は他国にバレぬよう慎重かつ秘密裏に異世界ワルプルギスの国交を結んだ国々と人材交流を始め、互いの世界を往来するようになっていた。


 その間、日本に訪れる外国人の目に触れぬよう、彼等が立ち寄る事の無い辺境の地に限定して移民を受け入れ、その数を増やしていく。


 異世界人とは文化や習慣の違いから多少のすれ違いや諍いもあったが、日本人の大らかな気質と独特の宗教文化から概ね好意的に日本社会に受け入れられて行く。

 

 やがて日本政府は異世界人が持つスキルを学び獲得する為に移民政策と婚姻政策を実施。

 混血化が進んで行き、スキルの獲得にも成功。

 スキルを所持する日本人が増えていった。


 特に有用だったスキルは魔術と法術。


 魔術や法術は地球世界では童話や昔話等に出て来る不思議な力。


 魔術は多種多様で破壊行為や実を守る為だけでなく、モノ作りにも活用可能で技術開発や生産活動に適した術もあった。


 法術に至っては、体の欠損部位の再生や癌等の不治の病も根治してみせた。


 これらスキルによりもたらされた恩恵は各分野で様々な技術革新を引き起こした。


 特に大きいのがエネルギー分野。


 万物の根源たる力――マナ。


 魔術や法術の原動力にもなっているマナと呼ばれる未知のエネルギーが従来の化石燃料――石炭や石油と置き換わった。


 基本的にマナはそこら中に存在する。

 誰からも購入する必要はない。

 無料タダなのだ。


 これにより日本帝国は石油資源のある国からの輸入に頼らなくて済むし、購入の度に莫大な支出を強いられないで済む。


 石油の呪縛から開放された日本帝国は今まで石油購入に当てていた費用を国内のインフラ事業、人材育成、技術開発等に全力注入。


 世界の国々も知らないうちにいつの間にか世界で一番生活環境が整った技術大国にのし上がっていた。

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