第7話 少年、ファーストキスを奪われる
「このまま枯らすの勿体無いし、折角だからこの世界樹を利用しましょうか.。 あっ! それとあれも……」
セレネディアはブツブツ何かを言いながら手を掲げる。
すると大地に横たわる世界樹の頂上がある方向から何かが飛んで来る。
それは世界樹に生える最も生命力に溢れる貴重な枝の塊と――
「コケーーーーーーッ!!!!」
巨大な
体長3m、全長は尻尾も合わせると10m位になるだろうか。
生えた光り輝く体に尻からは長く立派な尾羽根が生えた異常な大きさの雄鶏に度肝を抜かれる伊織。
「なっ、何ですか、その鶏!?」
「あれは世界樹の天辺に生息するヴィゾープニルよ! お肉がとっても美味しいの!」
よっぽど美味しいのだろう。
とても嬉しそうな笑顔を見せるセレネディア。
彼女は身動きを封じたその雄鶏と世界樹の枝の塊を自分の収納空間に放り込む。
「お次はこれね」
今度は世界樹に近付き、その幹に両手を当てる。
手を当てた部分から淡い緑色の光が発生し、その光に導かれてるように世界樹の生命力が集まって来る。
生命力が抜けた世界樹の枝はみるみるうちに細くなり、枝葉は枯れ落ちていく。
伊織はその光景を見ながらふと疑問に思った事をセレネディアに尋ねてみた。
「あのー、この木に神の力を吸われたんなら、この木からも回収出来るんじゃないですか?」
「世界樹は神力を吸収した端から自分の生命力に変換してしまうからそれが出来ないのよ」
伊織の質問に残念そうに答えるセレネディア。
立派で雄々しかった世界樹は今や見る影もない。
生命力を全て吸い出された世界樹は完全に枯木と化した。
早晩、土に帰るだろう。
「この世界樹が我の神力を吸い続けて貯めた生命力を素に【ユニークスキルの種】を創ったわ。 コレをイオリの中に入れれば、お前の願いと望みに反応してスキルが芽吹き生まれるわ」
そう言ってセレネディアは手の平に集めた緑色の光を放つ世界樹の生命力を集めて創った【ユニークスキルの種】を見せる。
「じゃあ、これを入れるわね」
創った【ユニークスキルの種】を伊織の体の中に入れようとして――ふと何かを思い立ち、その結晶を口に含むセレネディア。
「まさか……っ!?」
伊織はセレネディアのその行動から彼女が何をしようとしているのかを察し、逃げだした。
「申し訳ありません」
「そんなっ!?」
しかし悲しいかな。
シャーランに羽交い絞めにされ、逃亡を阻止されてしまう。
ジタバタと暴れて抵抗するがビクトもしない。
「ナイスよ、シャーラン!」
そして再びあの濃厚な口付けを味わう羽目となった。
「ぷは~っ! これで良し、っと!」
「ううっ……オイラ、もうお婿に行けない……」
「我が責任とって婿に貰うから気にしなくていいわよ。 さて、この世界樹の古木の枝と残りの結晶でお前の為に武器でも作りましょうか」
「嫌ですよ! ――って、え? 武器なんていりませんよ。 直ぐ家に帰してくれるんでしょ?」
国内の治安がしっかりしている日本帝国に帰れば武器など必要ない。
暗にそう指摘する伊織だが。
「我がお前を通じて異世界に通じる門を構築したから神々に気付かれる心配が無かったの。 でもこちらで異世界に通じる門を構築する強い力を使えば流石にペルセリオンに気付かれるわ。 そうなったらイオリの存在も知られてペルセリオンに命を狙われるわよ? それでも良いの?」
「無しの方向で」
「素直でよろしい! ――で、暫くこの世界に居るんだから護身用の武器は必要よ。 でも、此処じゃ何だから、我の秘密工房に移動するわね。 あそこは我とシャーランしか知らないし、入れないから今も在る筈よ」
「何処に在るんですか?」
「此処からなら東の方向に約50kmって所かしら?」
指さして伊織に場所を示すセレネディア。
「そうですね。 確かにそれ位かと」
彼女達が指さす方向を見る伊織。
其処は何もない空間――
「……どうやって、移動するんです?」
聞きたくないけど、聞かなければいけない。
とても嫌な予感がするけど。
「勿論、空を飛んでよ!」
「やっぱり聞かなきゃ良かった~~~~~~っ!!!!」
彼女の神の能力で浮かばされ、どんどん地面が遠のいていく。
そして荷物を吊り下げて運ぶクレーンの様にセレネディアに運ばれて上空を移動させられていく伊織だった。
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