3章 10話 ビデオチャットで今後の相談
真顔で村を潰すとブリッツは言いのけた。
ふざけんじゃないわよ。どれだけの人があそこで暮らしていると思ってんの。
だから、だん、と足を踏み込んで奥歯をギリギリと噛みしめ私は感情を吐き出す。
「関係ない人を巻き込むな!」
「残念ながら関係はある。むしろお前が後付けなんだよ。偶然関わってくれてありがたいぐらいだ」
「は? どういうことよ?」
「あの村は少し前からアジャフに狙われていたんだよ。まだ噂程度の調査前の段階だったがな。おかしいとは思わなかったか? ろくな交易品も無く行商人すら寄り付かないのに街に買い出しに来れるぐらいの金が出回っていることに」
そういうふうな言われ方をすると確かに妙だ。
ライラさん自身も領主への忖度によって行商人が来ないと語っていた。
押し黙る私にブリッツはそのまま勝ち誇るかのごとく続ける。
「あそこの近くにある山からは
そういえばライラさんが言い掛けたところにジロウさんが止めたことがあったっけ。
あれってこれのこと?
「だったらなんだっていうのよ? 別に何も悪いことしてないでしょ」
「してないな。ただそれは当然、莫大な軍資金になる。だから先んじてそこの
ショックだった。あの食堂での団らんはなんだったの? みんなに頼られて信頼されて、あれは全部嘘だったっていうの?
カっとなったまま私はすぐにジロウさんに首を動かしたが彼は動揺が無く微動だにしていなかった。
ずっと無言を貫いてこっちを観察でもするかのように目を離さない。
「じ、ジロウさん。こんなこと言われてるんですよ! ライラさんの村が潰されるって! 言うことはないんですか!?」
「すでに伝えたぞ。儂はお嬢ちゃんに会う前からこいつらの仲間だったと。あの村には世話になったしされもしたがそれだけだ。ここで反旗を翻す理由にはなりはしないな」
「わ、分かった! ひょっとしてすでにその果し合いでジロウさんは言うこと聞くように命令されてるんでしょ!」
「いや違う。儂はブリッツと勝負しておらんよ。これは儂の意志でもある。嬢ちゃん、守りたいものがあるならいい加減腹をくくれ。覚悟を決めろ。人に勝手に期待しおもねるな。これが最後の忠告だ」
真っ直ぐに私の目を捉えてジロウさんは諭すように語りかけてくる。
どうしてこんなことに……。
ブリッツがそこに指を一つ立てて横から入ってくる。
「あぁ注意点が一つある。定員人数は二百対二百だ」
「はぁ!? なにそれ!? 果し合いって五対五のチーム戦が最大人数だったでしょ!? それじゃ五十人でやる大
「合戦か、いい響きだな。今度からそう呼ばせてもらおうか。まぁ俺もなぜかは知らないがそこまで人数制限の限界が広がっていてな一回やってみたかったんだ。あとそっちも二百人まで入れていいが、プレイヤーは葵と景保、お前ら二人だけにしてもらう」
「こっちが圧倒的に不利じゃん」
二百人が千人になろうとレベル百のプレイヤーが一人多いだけですでに差がある。
ハッキリと確かめてはいないけどあっちも全員がレベル百だろう。
たぶん吸血鬼のバータルさんクラスを残り人数で揃えられたらまだ勝機はあるだろうけど、あのレベルの強者をどうやって集めればいいのか。
それにこっちの最大の助っ人である美歌ちゃんの存在も否定された。
そもそも知らない土地で残り二百人弱を人数合わせにしたってどうやって募れと?
到底受け入れられるものではなく固まってしまった私だが、隣にいる景保さんはゆっくりと口を開いた。
「葵さん受けよう」
「え? こんな条件をですか?」
「唯一のプレイヤーの援軍だってもし参加できたとしても中学一年生だ。三対三でも危うい。合理的に考えるなら脅しに使われているその人質の村人たちを見捨てて逃げて、彼らよりもプレイヤーの人数を集めて数で対抗するしかない。けれどそんな真似したくはないでしょう? それにそれまでに戦争が先に始まってしまったら大勢の人を巻き込んだ泥沼になって取り返しがつかなくなる。今だからこそまだチャンスがあると僕は思うんだ」
今なら火が点く前に事前に消化できる。
もし戦火が広がればどこまで被害が拡大するかは予想もつかないし、そこまでくれば私たちの間でどう決着が着こうとももはや簡単には終われなくなってしまう。
それにただのPVPじゃない。ガチで戦えるかを懸けたプレイヤー同士の抗争だ。
そこにまだ煮え切らない私と、たぶん同じ気持ちの美歌ちゃんを入れたとしても同数では勝ち目が無いことを景保さんはおそらく示唆しているんだろう。
ただこれを受けたとしても勝算が景保さんにあるとも思えない。
「だからって……」
「ほら、僕たちは無理ゲーには一度勝ってるじゃん」
景保さんのその冗談に忘れていた情景が目蓋の裏に思い起こされ心の芯に火が灯る。
そうだった。私たちは一度絶望から這い上がってきたんだった。あの圧倒的な悪意と死の匂いが撒き散らされた戦いを私たちはもがいてもがいて生き抜いたんだ。
あれに比べれば今回のなんてまだマシな方かもしれない。
少しだけ緩んだ頬で宣言してやる。
「分かりました。正直、こんな脅され方をして無理やりやらされるなんて納得はしていません。でもこいつらの鼻っ柱を折ってやるって今決めました。私たちに関わったことを後悔させてやるんだから!」
下ばっかり向いてちゃだめだ。
追い詰められてやばいときこそ上を向くべきなんだ。それがあの絶望的な戦いで私が自分で得た教訓だ。
「よっし決まったな! 開始は二日後とする。どうやらお偉方がご覧になりたいようで悪いが今日明日って訳にはいかないんだが。悪いな」
「別に悪くはないです。というかもうちょっと期日延ばせないですか?」
「そうしてやってもいいが、あんまり長引くとお前らいらないこと考えそうだろ。特に景保、お前は何かやりそうだ」
「期待してもらってるところ申し訳ないけど僕は善良な一般人ですが」
「そういうわざと油断させようとしているやつが一番怖いことを俺は知っている。羊の皮を被ったなんとやらってな」
ブリッツの評価は正しい。
景保さんは土蜘蛛姫戦で自分の命を顧みず青龍にHPもSPも瀕死になるまで注ぎ込んだ人だ。
私もキレたがこの人もかなりキレッキレだった。
温厚そうな優男の中に熱い激情が入っていることを私は知っている。
「それでどこでやるの? ルールは?」
「四百人規模となると俺も初めてだし殲滅戦は逃げられたり隠れられると時間が掛かって厄介だ。せっかくだ、フラッグ戦といこうじゃないか。それならそっちにも勝ち目がまだあるだろ?」
「まぁ……ね」
「スタートの場所は専用フィールドはさすがに使えなくなってるが代わりに設定をするようになっている。こっちはこのシャンカラ。そっちは獣人の村のある森でいいだろ。あとアイテムは禁止の設定にする。無駄に長引くだけだしここで消耗したくはない」
「だから村を巻き込むなって言ってんの!」
「スタート地点ってだけだ。嫌なら動けばいい。せいぜい二日で良い拠点を探すんだな」
大和伝のフラッグ戦はやや特殊だ。
通常のフラッグ戦はマップの最奥同士に置かれている旗なりオブジェクトなりを奪取すれば勝ちとなる。
けれど大和伝の場合はフラッグ――この場合は『巻物』の争奪戦になるんだけど相手のそれを十秒持つと勝利判定となるし、自分の初期陣地内なら持ち運びしてもいい。
つまり向こうはシャンカラ、こっちは森を好きに持ち運びして逃げてもいいことになる。
ただし二十分ごとにマップに現在どこにあるかが分かるようになっていて、どんどんとその間隔も狭まっていく。
なので逃げ続けることは難しいし、そんなことをしていれば味方が不利になるだけ。だから内容や構成にもよるがたいていは全員で行動して最もプレイヤースキルが高い人が持ち運ぶのがセオリーだ。
「ついでにハンデだ。こっち側の巻物は俺が持つ。これは事前に教えておいてやる」
余裕綽々という感じでブリッツが告げてくる。
そうして前代未聞の『合戦』の鐘が鳴り響いた。
□ ■ □
「あら葵さん、戻られたんですね。お探しの方は……見つかったようで良かったですね! あれ? でも先生がいないみたいですけど」
「見つかったのは見つかったんだけど……」
空元気は出してみたものの肩を落としながら獣人の村に帰るとライラさんが出迎えてくれた。
さすがにジロウさんが裏切ったとまでは予想が付かないらしい。
察せられたらエスパーだけどさ。
しかしこの笑顔を見ていると答えづらい。
目を泳がせ返答に窮していると、
「いきなりで申し訳ないですが村の主だった人たちを集めてもらえませんか? 緊急の要件があって伝えにきました」
「え、あ、はい。分かりました」
景保さんが私の代わりにしゃべってくれ、ライラさんが目を白黒させ疑問に思いつつも駆け出してくれる。
私たちがこうして開放されたのはもちろん担保が用意されてあるからだ。
機能が拡張された『果し合い』は予約もできるみたいで私たちはそこにすでに登録をさせられていた。
そのおかげで参加する人の名前がリストで見れるのだが、時間になると仮に決めた合戦フィールド外にいた場合、強制的に転移させられるらしい。
これで私たちが逃げるという手も封じられた。
それから二十分ほどして村の食堂に村長を含む手が空いている人たち十人ぐらいに集まってもらえた。
ほとんど面識が無いのにこうして信用して来てもらえているというのは嬉しいことだ。
「……俄には信じれませんな。あぁいやお嬢さんたちを疑ってるわけじゃないんですが」
獣耳の初老手前ぐらいの村長さんは私たちの話を静かに聞き入ったあとに、眉間の皺を深くしてそうもらした。
私たちが異世界から来たということまでもうかなりぶっちゃけた。VRゲームとかそういったことはややこしいので省いたものの、隠し事をしていては伝わらないと思ったからだ。
それは景保さんとここに来る途中に話し合って決めた。
「もちろんこんなこと言われてすぐに信じろというのが無理があると思います。でも本当に彼らは二日後には攻めてくるんです。もちろん僕たちはここを出て違う場所を見つけますが、ここにやって来る可能性は否定できませんのでお伝えだけしようと思いました」
「いや待って下さい。あなた方が砂金のことまでご存知だというのはかなり信憑性がある。あれのことを外の人間で知っているのは数が限られているはずです。それにジロウと故郷が同じだと言う。ならば無下に頭から否定するわけにはいきますまい」
「でもそのジロウさんは裏切って――いや元からあっちの仲間でしたが」
景保さんの空気を読まない率直な言葉に村長さんは下を向いて考え込む。
おためごかしに誤魔化してもしょうがないというのが彼の考えだろう。
「信じられるような信じられないような、半信半疑といったところですな。あの子は色々と良くしてくれましたが、どこかいつ自分がいなくなってもいいようにしていたような節がありました。それは旅人だからだとばかり思っていましたがこういう事情があるのであれば返ってすっきりはします」
語る村長さんの横にいるライラさんも獣耳を伏せて俯いたままだった。
あれだけ親しげだった彼女は何を思うのだろうか。
ふいに彼女は顔を上げる。
「実は、
「え?」
「もし自分が急に消えたりすることがあれば、逃げるか戦うか選べって。先生、小さい子特有の怖い夢でも見ておかしくなったと思ってたんですが……」
「たいがい失礼ですね……」
悲しんでるのかなんなのかライラさんの後半の台詞で分からなくなってしまった。
「でも私は今でも、先生が元から潜入目的で村にやって来たなんて信じられません! 家族を人質にでも取られてるんじゃないですか?」
「いやぁ……今は天涯孤独のはずですし、それに私と景保さんの三人が集まった時点で戦力的に上なんで裏切る必要性が無いはずです」
「そう……ですか……」
こっちでは家族はいないはずだし、天涯孤独というのも間違ってはいないはずだ。
まだ納得いかないようでライラさんは伏し目がちに俯き何かを悩んでいるようだった。
それを待たずに景保さんは疑問を投げかける。
「僕らがジロウさんを捕らえて虚偽の報告をしている可能性もありますが、それは考えられないんですか?」
「村人総出で逃げろとかならまだしも、警戒しろなんてそんな嘘、意味がありません。ただそうですね、その合戦ですか? できるならそれを私たちでして証明してもらえれば納得します」
「分かりました。では――」
村長さんの提案、景保さんと私で果し合いをメニューから行いここにいる主だったメンバーをシステムに引き入れ、少ししてから解除した。
ちなみに現在、私たちはブリッツと果し合いの予約中という形になっているが、まだ始まってもいないおかげからか問題なくやれた。
「本当にプレイヤー以外でも入れるんだねこれ……」
検証してみた結果、果し合い中であれば村人のみなさんにも私たちみたいなHPバーが出現することが判明した。
ただ私たちから彼らへの一方通行で、向こうから私たちには見えないそうだ。
メニューも開くことはできないので、概ねゲスト参戦のようなものと捉えていいかもしれない。
「ど、どうやらこれは本当のことのようだな……。村の人間を招集するぞ! 畑仕事や狩りに出掛けている者も全員だ、みんな急げ!」
「は、はい」
村長さんが泡を食ったかのように他の村人たちに指示を出す。
彼らも今自分たちが体験したことにまだ放心状態で慌てて駈けて行った。
「信じてくれたのは嬉しいんですけど、ここを戦場にするつもりはありませんよ」
「いや確かに村の中は困りますが、森をお使い下さい。あそこでなら身を隠しやすいですし、何より私たちも戦います」
「それは危険です!」
「こんな魔術、見たことも聞いたこともない。あなた方のような方が現れたのもこの閉塞した世界が動く前触れなのではないかと思うのです。それに話の通りなら次に狙われるのはこの村。今までは歯牙にも掛けられなかったから見逃されていましたが、金が採れることが知られるとなると奴隷として強制労働に駆り出される可能性が高い。その時に後悔などしたくはないですからな。死なないのであれば問題ないでしょう。もちろん希望者のみとなりますが」
随分とアグレッシブな村長さんだ。
獣人は若干好戦的と聞くがひょっとしてそれも関係あったりする?
だけどこっちの戦力はほぼ私と景保さんだけだと思っていたから増えるのは嬉しいことだった。
ちなみにお供は果し合いの中には参加できない。これは前からだし今回もそうだった。
そういえばもう丸一日、豆太郎と会ってないんだわ。これが終わったら癒やされないと。
「私も戦います!」
一早く参戦を表明したのはライラさんだった。
その顔は真剣でいつものほわほわとした彼女とは違う雰囲気を漂わせていた。
「女性は止めておいたほうがいいです。たぶんあっちは残り人数を兵士で固めてきますし」
「女性で言うならアオイさんもそうじゃないですか。大丈夫です。私もこの村を、みんなを守りたいんです。ここでアジャフの野望を食い止められるのなら私もお手伝いしたいです!」
机の上に乗り出し前のめりに私にアピールしてくるライラさん。
そうかこの人、猪突猛進の気があったんだ。
「すみませんがライラは一度言い出したら聞かない。後方支援でもいいですから参加させてやってくれませんか?」
村長さんにまでそう後押しされちゃ断りきれなかった。
「わ、分かりました」
「やったー! じゃあ準備してきますね!」
「でも絶対前に出ないように――」
彼女は体全体で喜びを表現し、そのまま私の言葉が届く前に食堂を一人で退室していってしまった。
人の話聞く気ねぇ……。
「あぁ、すみません……。もう昔からああで。街に住んでいたとき近所だったんでライラは子供の頃から知っていますが父親もほとほと手を焼いていたんですよ。でも弟想いの良い子ではあるんです。許してやってください」
代わりに村長さんに謝られた。
「お父さん行方不明なんでしたっけ?」
「ええ強い男でした。しかしライラたちを逃がす際に憲兵に見つかり自分は囮になったようで今も消息は不明です。母親も何年も前に亡くしていて、病気の弟もいるおかげであぁして余計に明るく気丈に振る舞っているようですが内心ではかなり心配しているでしょうな」
あれってわざとなの? 素じゃないの?
まぁもしアジャフをぎゃふんと懲らしめることができれば父親捜しの一助になるかもしれない。
ひょっとしたら彼女はそれも狙ってるのかもね。
とりあえず今は他の村の人たちが戻るまで小休止となり、ジロウさんが借りていたという来客用の空き家を宿として間借りすることになった。
街の宿屋だとあいつらとの距離が物理的に近過ぎて安心して眠れやしないし。
『えーーー!! すごいことなってるんやん! なんでうちを呼んでくれんかったん!』
「いやいや景保さんやばいからシャンカラに行くって報告はしたじゃん! そしたら前より怪我人や病人が殺到するようになっちゃって来れないって言ったのは美歌ちゃんよ」
この合間にカッシーラにいる美歌ちゃんに連絡を取って現状を説明したら、開口一番がこの元気の良い台詞だった。
彼女に対する住民の厳かな聖女のイメージが近所にいる女の子に差し替わって親近感が出てきたらしく、あれ以来、人気がうなぎ上りでもう人がさらに殺到しまくってるんだとか。
でも何でもかんでも治しちゃうと、薬を作っている人や治癒術士の人の仕事を失くしちゃうことになるし恨みも買うから、重病人や緊急を要する人だけしか看ないのは相変わらずそのままだそうだ。
そういうところは男爵さんがきちんと手綱を締めている。
まぁ彼女がいてもこの状況はあんまり変わらなかったんじゃないかとは思う。
結局、非情になれない負い目がある私たちがどうしたって不利なんだよね。
『それはそれ、これはこれやって。でももうそんな呑気なこと言ってられんやんな。すぐ行くで!』
「うん、ありがとう来てくれるのは嬉しいわ。でも今来たら捕まっちゃう可能性があるからできればこのまま逃げた方がいいかも。カッシーラにいることは私のせいでバレちゃったし」
正直、それについては申し訳無さでいっぱいだった。
私の不用意な発言で彼女を危険に晒してしまっている。
『言うても人質を取ってくるんやったら私も一緒やで。どこ行ってもレオンとかの命を盾にされたら従うしかあらへん。ほんまえぐいことしよるよなぁそいつら。ただ景保さんの言う通り今が逆に一番のチャンスやと私も思うわ』
外から見てもやっぱりそういう意見になっちゃうか。
「なら来てもらえる? 合戦には参加できないから近くの村か荒れ地で待機してもらうことになると思うけど」
『それは仕方ないやろうな。こんな一大事にカッシーラでのんびり温泉に浸かってる場合じゃないし、参加できんでも何かあるかもしれんから馬足さん(
あんなに人見知りで、私に冷徹な性格だと勘違いされそうになったりしたこの子がこんなに積極的に関わるようになるなんて、お姉さん感激だわ。
この世界に来て人と触れ合って、一番成長しているのは美歌ちゃんかもしれない。
今度は景保さんが質問する。
現在は三人でのビデオチャット中だ。
カッシーラの事件が終わった後に一度だけ挨拶として同じように三人で会話したことがあったので二人は面識がある。
まさか二度目がこんなことになるなんて思いもしなかったけど。
『ちなみに聞きたいんだけど、美歌さんは他にプレイヤーの知り合いとかっていないんだよね?』
『ごめんなさい。そういうのはいないです』
『そっか、いや確認だから謝らなくて大丈夫だよ。もしいたら全員で殴り込みに行けるかなって思っただけだから』
『殴り込みって葵姉ちゃんみたいなこと言いますやん』
『
『あぁ~これは伝染してますね~』
『ちょっとあんたたち、冗談飛ばすぐらいの余裕あるじゃん!』
私をネタにしてくれるなんてぷんぷんだっての。
『ははは、ごめんごめん。後ろ向きに考え込んでいても仕方ないからね。気持ちぐらいは前向きにいこう』
『せやで。それにゴーレムだって無理やと思ったのに倒したんは葵姉ちゃんや。今度も何とかしてくれるんちゃうかと期待はあるで』
年下からの信頼が重いわ。
今度はあれより厳しい戦いが予想されるってのに。
『作戦を練ったりしないと。まずは仕様が変わった果たし合いについて何ができてどういう仕様なのかを確かめるところから入ろう。その後はどうすれば勝てるかの相談だ。罠を作るのもありだよね』
『あ! せやそれで思い出した!』
急に美歌ちゃんが大きな声を上げ、手を叩いた。
『一個、裏技っていうか小ネタがあるわ。これだけで戦力差が埋まるとは思えんけど、ちょっとした強化になると思うで』
『え、そんなのあるの? 聞いてないわよ?』
『いやごめんすっかり言うの忘れてたわ。っていうかこれに縋るほどやばいことになるなんて思ってなかったから』
『もったいぶらずに教えてよ』
『うん、それはな――』
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